発達性読み書き障害(ディスレクシア)は学習障害の一つ。苦手を知ることから始めよう
発達性読み書き障害という障害の名前を耳にしたことがあるでしょうか。
学習障害の中に位置付けられるもので、文章を読むことまた字を書くことに困難を生じる障害です。
どのようなものなのか、またそのケアや学習方法についてもお話ししましょう。
目次
ディスレクシア(発達性読み書き障害)の原因は脳の発達障害
読み書きが障害されるディスレクシアは知能の低下は認められず、原因は脳の一部の発達障害によって起こります。
日本においても5~8%の人にみられるといわれていますが、広く知られていないために見過ごされがちです。
●耳は聞こえ、読解できるが読み書きができない
ディスレクシアの特徴は、文字を読むことに時間がかかる、もしくは困難であり、またよく読み間違えるというものです。
文字とその読み方を脳の中で結びつける機能の発達が人より未熟であるために、読書が苦手であり間違いが多くなる、また文字を読むのに時間がかかり疲れてしまいます。
聴覚・知能には障害はなく、会話を理解することは十分に可能です。
話すことは普通にできて、話の内容も理解できますが、文章を読んだり文字を書いたりすることは不得意という特徴があります。
文字の認識、音の組み合わせ、文字を組み合わせて単語を作り文章とするといった具合に、読む・書くという作業にはさまざまな行程がありますが、ディスレクシアはそのいずれかが障害されます。
●文字を書く問題、漢字の習得も難しい
ディスレクシアの場合、文字と音のつながりが困難であるために、耳で聞いた音を文字という記号で書く作業は難しくなります。
特に日本語の場合には学童期の学年が上がるにつれて、漢字の必要習得数、画数などが増え、書字の難易度が上がります。
文字という記号の形や組み合わせを認識できないために、文字を書き写すという作業にも困難が生じます。
●小学校高学年より、問題が表面化
視覚認識が異なるため、本人は文字が踊っている、かすんでいるといった表現をします。
ひらがなカタカナよりも漢字の習得が難しく、英語はさらに困難な言語であるといわれています。
そのため、文章が長く漢字も難しくなる小学校高学年以降に問題が表面化することが多いといわれています。
具体的には、段落を間違えたり飛ばしたりする、文節で区切れずうまく読むことができないなどの問題が表面化し、英語の授業が組み込まれる中学生になると困難さはさらに浮き彫りとなります。
うちの子、もしかして?ディスレクシアの初期兆候
学童期になると、本を読んだり書いたりすることが増えます。
そこで問題が生じるディスレクシアは学校生活に困難を伴います。
もしかして?と思い当たる節があれば、どのように判断すればいいのでしょうか。
●ディスレクシアの初期にみられる兆候
読み書きの障害であるディスレクシアは幼少期には気づきにくく、対応が遅れがちになってしまうことがあります。
初期にみられる兆候を注意深く観察し知っておくことで、早期に発見でき対応することができます。
1)読み
- ○幼少期に文字に興味を持たず覚えない
- ○一つ一つ文字を読む
- ○文節の途中で区切って読む
- ○指で押さえながら読む
- ○文末などを自分で変えて読む
- ○本を読むと疲れる
- ○音読が苦手である(幼少期には黙読が苦手)
2)書き
- ○小さな“っ”や母音が二重になる部分、“こうして“など伸ばす”う“の部分の間違いが多い
- ○“わ”と“は”など聞くと同じ発音などを間違える
- ○ひらがなやカタカナの習得に時間がかかる
- ○漢字の画数が多くなると間違いが多くなる
全く読めない・書けないということではなく、間違いが多くその傾向に一定の決まりがあります。
ほかにも読み書きに時間がかかる、何度やってもうまくいかない、集中できないなど初期の兆候ではディスレクシアではなくほかの原因を疑われてしまいがちです。
障害について知り、本人も家族もディスレクシアの正しいケア方法を学ぶ
では、ディスレクシアの症状が認められた場合、どのようにケアすればいいのでしょうか。
●得意・不得意を知ることから
読み書きに問題を生じるディスレクシアの中には、料理や音楽、美術、スポーツなどほかにもたくさんの才能を持っている人が多くいます。
いろいろなことにチャレンジをして、得意な分野を知ることは非常に大切なことです。
自分の個性を伸ばすことにより、人に認められたり褒められ、自信を高めることもできます。
読み書き障害の程度や問題はさまざまで、学習方法の得手不得手も個人により異なりますので、いろいろなことを試して自分に合ったものを見つけるようにしましょう。
●音声による学習などさまざまな方法を取り入れる
- 1)本を読む際には文節に斜線を入れておく
- 2)読み聞かせなど音声による読書、読解
- 3)音声入力ソフトを利用したPCやタブレットでの文章やテキストの作成
- 4)読み仮名をふる
このように少し方法を変えるとストレスなく行えるため、音声を用いた教育システムの導入など社会や学校、周囲の認知と受け入れが今後の重要な課題です。
日本ではあまり知られていないディスレクシアですが、諸外国では認知度は高くさまざまな取り組みもされています。
たとえばアメリカの公立図書館にはオーディオブックと呼ばれる音声で読める本があり、書籍と同時期に発売され誰でも借りることができます。
オーディオブック自体もオンラインで購入ができ、アプリなどでの読書や学習、テストの受験なども可能です。
ディスレクシアをよく知り、うまく付き合う工夫が大切
障害の確率からみてもディスレクシアは身近にも存在しますが、周囲の人の認識がないと教育の機会を逃してしまいます。
また早期にこの問題に気づくことにより、学習方法などを工夫することもできるため、早期の“気づき“は重要です。
本人、ご家族だけでなく周囲の人や社会全体がこのディスレクシアについてよく知り、うまく付き合うこと、また協力することが重要です。
参考:
国立成育医療研究センター ディスレクシア.(2019年4月23日引用)
認定NPO法人EDGE ディスレクシアって?.(2019年4月23日引用)
障害保健福祉研究情報システム ディスレクシア・ツールキット.(2019年4月23日引用)
一般社団法人日本ディスレクシア協会 ディスレクシアとは.(2019年4月23日引用)
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執筆者
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1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。
保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士