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模擬患者が参加する実習の進め方と、学生へのフィードバックについて解説します

模擬患者に興味を持った方が気になる点の1つに、医療面接の実習の進め方があげられます。
また模擬患者自身は学生にアドバイスできるか、どう反映されるかも気になる点です。
ここでは上記について解説し、実習に参加する模擬患者の疑問にこたえます。

模擬患者自身は学生にアドバイスできるか、どう反映されるかも気になる点

あらかじめ用意されたシナリオに沿って、会話が進められる

あらかじめ用意されたシナリオに沿って、会話が進められる

模擬患者が医療面接の実習に参加する場合、その目的は以下の通り、教育的な効果をあげることにあります。

  • 学生のコミュニケーション能力を向上させる
  • OSCE試験(客観的臨床能力試験)への対策、及び臨床実習への準備(医学部、薬学部、歯学部の場合)

従って大学や専門学校が決めたシナリオに従い、医療面接の実習が進められることとなります。

●シナリオはあらかじめ用意される

医療面接の実習ではあらかじめ複数のシナリオが用意されており、どのシナリオで進めるかは教員の指示により決まります。
シナリオには、以下の2種類があります。

  • ○学生用(医療者用)のシナリオ
  • ○模擬患者用のシナリオ

学生用のシナリオでは、以下の内容が記載されています。

  • ○設定される場面
  • ○患者さんの氏名、年齢、性別
  • ○症状
  • ○バイタルサイン(血圧、体温など)

あわせて患者にどうコミュニケーションを取るべきか、どのような点に注意するべきかも書かれています。

これに対して模擬患者用のシナリオでは、以下のような内容が記載されています。

  • ○想定される場面や場所
  • ○年代や性別、性格
  • ○症状
  • ○病歴
  • ○知りたいことや確認したいこと

それぞれのシナリオで書かれていることは、実習の場で扱われる会話のテーマや場面です。
そのため、話すべき内容が一字一句書かれているわけではありません。
従ってどのように話すかについては、シナリオに書かれている内容をもとに自分自身で考える必要があります。
これはあなた自身の社会経験を生かせる場でもあり、どれだけ本物の患者になりきれるかどうかが腕の見せどころともなります。

●事前にトレーニングを行う大学も多い

多くの大学では模擬患者として実習に関わる前に、講習会を複数回開催するなど、トレーニングの場を設けています。
なかには模擬患者としてのコミュニケーション能力を上げる目的で、事前に練習を行う大学もあります。

皆さまのなかには、いきなり本番の場で模擬患者の役割を担い、学生と対面することに不安を感じる方もいると思います。
そのような方でも、練習を複数回行うことで場の雰囲気に慣れ、本番での緊張を和らげることができます。
「模擬患者をやってみたいけれど、自分にはできるかどうか不安」という方は、トレーニングが充実している大学を選ぶとよいでしょう。

一方でこのようなトレーニングは、本番を迎えるまでに複数回行われます。
そのため、事前にスケジュールを確認した上で申し込むことをおすすめします。

模擬患者が関わる実習では、どのような会話が交わされる?

模擬患者が関わる実習で交わされる会話について知っておくと、不安が和らぎます。
ここではどのような会話が交わされるか、一例を取り上げながら説明します。

●会話の内容は大きく分けて3種類

模擬患者が関わる場面で交わされる会話の内容は、職種により異なります。
しかし大きく分けると、以下の3種類にまとめることができます。

  • あいさつや患者さんへの声掛け
  • 患者さんからの聞き取り
  • 患者さんに対する説明

もちろん、患者さんに対してどの内容をどこまで説明するかは、職種により異なります。
たとえば診断に関わる内容については医師または歯科医師しか話せませんから、医学部や歯学部における実習の場面のみ会話が行われます。
また薬に関する説明は、薬学部の実習で行われます。

●模擬患者が関わる会話の例

模擬患者が関わる会話の例

模擬患者と医療者との会話は、どのように行われるのでしょうか。
ここでは例として、熱だけが出るという症状が発生したため、かかりつけの診療所で医師の診察を受けるケースを考えてみます。

医師役:こんにちは。今日はどうなさいましたか?
模擬患者:1週間くらい前から、38度くらいの熱があるのです。薬を飲むと熱が下がるのですが、薬が切れるとまた熱が上がってきてしまうのです。熱がずっと続くので、気になってこちらに来ました。
医師役:ありがとうございます。熱が一番気になることなのですね。
模擬患者:そうですね。どうしてずっと熱が上がったままなのかが気になります。
医師役:それでは、いくつか質問をさせて頂きます。まず熱以外に気になることはありますか?たとえば鼻水や鼻がつまるとか、のどが痛いとか。
模擬患者:それはありません。熱だけが出ています。それだけが気になるのです。
医師役:どこか痛いとか、体がだるいとかもありませんか?
模擬患者:それもありません。
医師役:最近なにか変わったことをされましたか?
模擬患者:はい。3週間前に歯を抜きまして、その傷が治った後に熱が出始めました。
医師役:歯を抜いた後に熱が出始めたのですね。さきほど「薬を飲むと熱が下がる」というお話でしたが、何を飲んでいましたか?
模擬患者:以前先生から出して頂いた抗生物質を飲んでいました。飲むと熱が下がりますが、薬が切れるとまた熱が上がります。
医師役:ありがとうございます。それでは、身体を拝見いたします。

この後、本来は聴診器などで体に触れた診察が行われます。
しかし4年次に行われる共用試験に合格する前の学生は、診療行為が行えません。
そのため「トレーナー」と呼ばれる、人体の一部を模したシミュレーターを代わりに用いるケースもあります。
一般の方は救急救命講習で使われる人形や、マネキンを想像するとわかりやすいでしょう。

診察が終わった後、医師役からの説明があります。
説明は、以下のなかから必要な情報が選ばれます。

  • ○診断がついた場合は、病名
  • ○今後の見通し
  • ○生活上の注意
  • ○学校や会社に行ってよいか
  • ○次回受診のタイミング
  • ○ほかの医療機関に紹介する場合は、その旨と紹介先

フィードバックは主に2つの視点から行われる

医療面接の実習におけるフィードバックは、模擬患者側、教員側それぞれの視点について行われます。
実習によっては、学生からのフィードバックが加わる場合もあります。
これらのフィードバックは、目的や着目しているポイントが異なりますから、いずれも重要です。

●教員からのフィードバック

教員からのフィードバックは、主に知識や取るべき行動といった観点からの指摘となります。
場合によっては、実務的な視点からのアドバイスを行う場合もあるでしょう。

これに対して、コミュニケーションがきちんと取られていたかという観点でのアドバイスは、十分に行えない可能性があります。
それは教員自身が医療の専門家であるため、医療の知識が豊富とはいえない模擬患者の立場になりきることが難しいという事情によるものです。
従ってコミュニケーションに関するフィードバックは、模擬患者の協力を得ることになります。

●模擬患者からのフィードバック

模擬患者が学生にフィードバックする主な内容は、患者の立場としてどう感じたかということになります。
たとえば、以下のフィードバックがあげられます。

  • ○説明がわかりやすかった(あるいは、難しかった)
  • ○優しい声掛けで安心できた
  • ○声が小さくて、聞き取りにくかった
  • ○説明を聞いて、不安な気持ちが和らいだ

模擬患者からのフィードバックを得ることにより、学生は患者がどう考えているかということに気づき、より患者に寄り添った応対につなげることができます。

もっとも模擬患者に限らず、フィードバックの内容は学生の成長に資するものでなければなりません。
そのため会話の全体を通して、良いところと改善してほしいところを両方伝えると、学生のスキルアップにつながります。

また模擬患者によるフィードバックにおいて、医療に関する専門的なコメントは必要ありません。
この点については、教員が適切に指導します。

●学生からのフィードバック

実習によっては、同席している学生からのフィードバックが得られる場合もあります。
同じ実習を受けている立場として、良いところや気になった点が指摘されます。
学生どうしはお互いに高め合う関係にあるともいえますから、学生からのフィードバックはよい刺激につながる可能性もあります。

一般の方でも会話を通して、医療を目指す学生の成長を促せる

一般の方でも会話を通して、医療を目指す学生の成長を促せる

医療を学ぶ学生には知識や技能に加えて、さまざまな患者の気持ちを理解することが求められます。
模擬患者はシナリオに基づき自ら考え、患者の立場で会話することにより、学生の気づきを促せます。
この点で模擬患者は、一般の方が会話を通じて医療を目指す学生の成長に貢献できる、重要な役割といえます。
会話もフィードバックも難しい用語は不要ですから、ふだん診察を受けて感じたことを、実習の場で学生の教育に生かせます。

参考:
鈴木富雄,阿部恵子「他」:よくわかる医療面接と模擬患者. 名古屋大学出版会,名古屋,2011,pp.4-10,26-33,48-59,68-69,165-169.
中田亜希子, 岡田弥生, 他: 東邦大学模擬患者研究会(医学部)における模擬患者養成の取り組み. 東邦医学会雑誌 2017年3月, 38-43, 2015.
山本直美, 久米弥寿子, 他: 模擬患者(Simulated Patient:SP)に求められる資質―訓練されたSPの語り―. 千里金蘭大学紀要 12: 72-75, 2015.
渡邉由加利, 工藤京子, 他: OSCEにおける模擬患者への支援と模擬患者によるフィードバック. 看護展望 2011年5月号, 30-31, 2011.
山脇正永: スチューデント・ドクターの導入. 日本内科学会雑誌 104巻12号.pp.2517-2522(2019年7月23日引用)
飯田医師会 診察室での心得.(2019年7月19日引用)
鈴木優子 PRESIDENT 最初の診察のとき、まずは何をすべきか -担当医を本気にさせる話し方、付き合い方.(2019年7月19日引用)
高橋優三 模擬診察(トレーナーでシミュレーション)のシナリオ集.(2019年7月19日引用)
日本スリービー・サイエンティフィック 気管切開トレーナー,肺バッグ付.(2019年7月20日引用)
島根大学医学部附属病院クリニカルスキルアップセンター 気道管理トレーナー(成人).(2019年7月20日引用)
ジャパンサービス AED+心肺蘇生トレーニング機材のレンタル料金等について.(2019年7月20日引用)

  • 執筆者

    稗田 恵一

  • 千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
    現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。
    保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ

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