EAT-10って何?自宅で家族が嚥下評価のセルフチェックをすることも可能な10の質問とは?
高齢化社会の現代の日本で、高齢者の栄養管理やさまざまな疾患で起こる食べ物や水分の飲み込み能力の変化については目に見えないため、判断を行うことは大変困難です。
では自宅で食べ物や水分の飲み込み機能である嚥下機能の低下があるのかどうか判断するには、一体どうしたらいいのでしょうか。
今回は自宅でも簡単にセルフチェックが行えるEAT-10(Eat Assessment Tool)という嚥下機能をはかることができるものをご紹介しましょう。
目次
嚥下機能をはかるEAT-10はどのようなものか?
通常、嚥下機能の評価は、目に見えない喉の奥で起こるものであるため、むせや喉のゴロツキといった症状などを観察して判断します。
EAT-10はどのようにその評価を行うのでしょうか。
●嚥下機能は栄養状態や誤嚥性肺炎と大きな関係がある
高齢になると身体の機能が衰え、また脳卒中やその他の疾患により身体だけでなく、食べ物を飲み込む機能も衰えます。
嚥下機能は水分や食物の飲み込み機能であると先述しましたが、嚥下機能が衰えると十分な栄養や水分を摂取できなくなり、脱水症や栄養失調といった状態に陥ります。
また嚥下がうまくいかないと、むせや誤嚥の原因となり誤嚥性肺炎の原因となります。
関連記事:
高齢者に多い誤嚥性肺炎、発症の原因は加齢?分かりやすく解説します
肺炎にはリハビリが必要なの?高齢者がかかりやすい肺炎、急性期や回復期のリハビリの重要性
●家族と本人への質問に答えるだけで行える嚥下評価のスケール
EAT-10は質問紙票と呼ばれるタイプの評価スケールで、本人に聞き取り調査を行い記入します。
認知症などにより意思疎通が困難な場合や失語症などの場合には行えないこともあります。
ちなみにこのEAT-10は世界24カ国語に翻訳されており、嚥下評価の評価スケールとして役立っています。
EAT-10は10個の質問に答えるだけで飲み込み機能を評価できるセルフチェック表
ではここで、自宅でも簡単に行えるEAT−10と呼ばれる質問票についてご紹介しましょう。
家族が疑問に思ったときに、自宅でも行うことができるのが特徴です。
●EAT−10の内容はシンプルな10個の質問に5段階で回答
EAT-10は10個の質問で構成されており、その質問は以下の通りです。
- 1)飲み込みの問題が原因となり、体重が減少した
- 2)飲み込みの原因が外食に行くための障害となっている
- 3)液体を飲み込む際、余分な努力が必要である
- 4)固形物を飲み込む際、余分な努力が必要である
- 5)錠剤を飲み込む際、余分な努力が必要である
- 6)飲み込むことが苦痛
- 7)食べる楽しみが飲み込みの問題により影響がある
- 8)飲み込むときに食べ物が喉に引っかかる
- 9)食べるときに咳が出る
- 10)飲み込むことにストレスが大きい
そして質問に対する回答は(0:問題なし、1、2、3、4:ひどく問題)の中から一つを選択する形式となっています。
●各質問の合計点で3点以上は医師への相談が推奨される
各質問の回答はそれぞれ、0点、1点、2点、3点、4点と計算され、10個の質問の合計を算出します。(最大40点)
合計点が3点以上であれば嚥下障害が疑われ、医師へ相談することが勧められています。
EAT−10を介護者や家庭でどのように活用すればいい?
ではここで、実際にご家庭でEAT-10をどのように活用するといいのかご紹介しましょう。
●EAT−10が2点以下の場合には引き続き観察が必要
合計点が3点以上であると専門家の診断を仰ぐ必要があるといわれるEAT-10ですが、その点数に満たなくても注意が必要です。
3点より低い場合でも引き続き食事場面の観察やそのほかの嚥下機能の検査が必要となることもあるからです。
高齢者の嚥下状態は認知症の進行やそのほかの疾患など、そのときの状況に大きく左右さるため、注意深く見ることが重要です。
●定期的なチェックで変化に気づき、誤嚥性肺炎の予防もできる
家族や介護者が嚥下機能の障害を疑う際には、中枢神経疾患や変性疾患などの原疾患を持っておられる方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
変性疾患の場合にはその進行度合い、中枢神経疾患の場合でもその時々の体調などにより、嚥下が十分に行えなくなってくることもあります。
日々の生活の中で食事の様子を観察したり、またこのEAT-10を利用し定期的に評価することにより、誤嚥性肺炎を防いだり誤嚥によるトラブルを防ぐことが可能となります。
EAT−10で嚥下機能低下を発見し、必要であれば医師に相談を
今回は嚥下機能を簡単に自宅でも判断できる、EAT-10についてご紹介しました。
嚥下機能の低下は栄養状態だけではなく、誤嚥性の肺炎の原因ともなるため、注意深く観察し医師の診断が必要であるかどうか判断する必要があります。
EAT-10を利用してセルフチェックを行い、嚥下機能の低下を早期発見、健康維持に役立てましょう。
参考:
Nestle Nutrition Institute EAT-10嚥下スクリーニングツール.(2020年1月16日引用)
ネスレヘルスサイエンス 簡易嚥下(えんげ)チェックツール「EAT-10(イートテン)」とは?.(2020年1月16日引用)
若林秀隆、栢下淳:摂食嚥下障害スクリーニング質問紙票EAT-10の日本語版作成と信頼性・妥当性の検証.静脈経腸栄養Vol29 No3,2014.(2020年1月16日引用)
-
執筆者
-
1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。
保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士
福島 晧 さん
2020年6月29日 1:22 PM
先月、呼吸困難で在宅医療の医師の診察を受けたら、血中酸素濃度が88%で即入院六日間で退院したが、翌日、酸素関係の業者が設置に来て毎日一リッターの使用の伝言と外出用のボンベ置いて帰ったまま、医師から何の連絡もない状態です。状態を自前で測定器を購入し96%以上確認しているが、チョッとつけ外れは80%台になる。