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捻挫 骨折

松葉杖の正しい使い⽅は?整形外科の理学療法⼠が⽚⾜の場合や階段での使⽤⽅法も伝授します

骨折やひどい捻挫などで突然松葉杖を使わないといけなくなったらどうしますか?
「人が使うのを見ていたら簡単そうだけど・・・」
と思うかもしれませんが、いざ使ってみると、うまく使えずに困るという場合も少なくありません。
そこで、けがの状況や段差などの環境に合わせた松葉杖の正しい使い方を解説します。

意外と知らない松葉杖の正しい使い方

体重を脇で支えてはダメ!松葉杖の正しい高さや持ち方を紹介

体重を脇で支えてはダメ!松葉杖の正しい高さや持ち方を紹介

松葉杖を使うためには、正しい持ち方をする必要があります。
また、誤った持ち方をすると、体に悪影響を及ぼす危険性もあります。
そこで、まず松葉杖の正しい高さや持ち方を解説します。

●松葉杖は全体の高さだけでなく握る部分の高さも体に合わせる

松葉杖は脇で挟む部分を「脇当て」、手で握る部分を「グリップ」といいます。
高さを合わせる場合は、脇当ての高さだけでなく、グリップの高さも調整する必要があります。
高さは杖の先を「足の小指から15cm外側」で「つま先から15cm前」に置いて調整します。
以下に高さの目安を紹介します。

高さの目安
脇当て 脇から指2〜3本(2 〜3横指)隙間を空けた高さに合わせる
グリップ 握ったときに肘が軽く曲がる(約30°)高さに合わせる

脇当てを「脇に当たる高さ」、グリップを「肘がしっかり伸びる高さ」と間違えて合わせようとされることがありますが、正しい高さに合わせるのは意味があります。
とりわけ、脇当ての部分に隙間を空けるのは、注意しなければならない点なので次の項目で解説します。

●握る部分でしっかり体重を支える

松葉杖は脇当てとグリップの両方で体を支えることができるため、骨折で足が地面につけないなどしっかり体重を支える必要がある場合に活用できます。
しかし、体重を支えるといっても、あくまでメインになるのはグリップの部分です。
初めて松葉杖を使う方は、脇に体重をかけて体を支えようとしますが、これは良くない方法です。
脇の奥には腕などを動かす神経(腋窩神経:えきかしんけい)が通っており、脇当てに体重をかけると神経を圧迫してしまい、腕が上がりにくくなったり、手が痺れたりといった症状が出る危険性があります。
そのため、脇に体重をかけるのではなく、脇で杖を挟み、グリップに体重をかけることが重要です。
前述のように肘を少し曲げる程度でグリップを握ることで、腕の力が入りやすくなり、体重を支えやすくなります。

●片方に持つ場合は痛めた足と反対側の手に持つ

片方に持つ場合は痛めた足と反対側の手に持つ

状態によっては杖を1本だけ使用する場合があります。
その場合、杖を「痛めた足と反対側の手」に持つようにしましょう。
「痛い側に持ったほうが体重を支えやすいのでは?」
と思われる方が意外と多いですがそれは違います。
悪いほうの足に体重がかかった場合に、体の重さを足と反対側に逃がすために、足と反対側に杖を持ち体重をかける必要があります。

松葉杖の基本的な使い方を状態別に解説

松葉杖はけがをしたほうの足を全くつけない場合や部分的についてもいい場合など状態によって使い方が異なります。
そこで、状態に合わせた基本的な使い方を解説します。

●けがをしたほうの足を部分的につける場合の使い方

けがをしたほうの足にある程度体重をかけられる場合は、両方の手に杖を持つケースと片方にだけ杖を持つケースに分けられます。
それぞれ、正しい杖のつき方を説明します。

○両手に松葉杖を持つケース

足にかかる体重をできるだけ少なくしたかったり、安定して杖をつきたい場合は、けがしたほうを地面につけられる場合でも、両手で松葉杖を使用します。
杖や足をつく手順としては、「2点歩行」と「3点歩行」、「交互歩行」があります。
一般的には3点歩行を実施することが多いですが、それぞれ特徴があり、状況によって使い分けます。
具体的な手順を以下に示します。

手順 特徴
2点歩行 右側の杖と左側の足を同時に出す→左側の杖と右側の足を同時に出す(繰り返す) 通常の歩く手足の運びと同じなためスピードは出るが不安定
3点歩行 両方の杖を同時に出す→悪いほうの足を出す→良いほうの足を出す(繰り返す) 悪いほうの足の体重をしっかり支えることができる。
交互歩行 右側の杖を出す→左側の足を出す→左側の杖を出す→右側の足を出す(繰り返す) 安定感はあるが杖と足を別々に出すため時間がかかる

○片手に松葉杖を持つケース

片手に松葉杖を持つケースでは2点歩行と同じようなパターンで杖と足を出します。
杖は悪いほうの足と反対側に持ち、杖を出すと同時に悪いほうの足を出して、杖で体重を支えながら足をつくようにします。

●けがをしたほうの足が全くつけられない場合の使い方

けがをしたほうの足が全くつけず片足で歩く場合、けがをしたほうの足を浮かせて歩く必要があるため、両手に松葉杖を持って歩かなければいけません。
手順は先に両方の松葉杖を体の前についた後、松葉杖に揃う位置まで良いほうの足を出します。
松葉杖をあまり前に置きすぎると、大きく足を出す必要があり不安定になり、腕も疲れます。
また、振り出す足を松葉杖から大きく前についてしまうと、杖だけ後ろに残ってしまい、後ろに倒れる恐れがあるため注意が必要です。

階段や坂道での松葉杖の使い方を紹介!無理しないことも重要

階段や坂道での松葉杖の使い方を紹介!無理しないことも重要

松葉杖の使用で困ることの1つが階段の上り下りです。
そこで、段差や坂道での松葉杖の使い方や注意点について解説します。

●階段では上り下りともに「杖は足より下」を意識

階段での使用は通常より転倒の危険性が高いため、正しい順序で杖を使う必要があります。
以下に上り下りそれぞれの場合の手順を解説します。

手順
階段の上り 良いほうの足を上げる→両方の杖と悪いほうの足を上げる(繰り返す)
階段の下り 両方の杖と悪いほうの足を下ろす→良いほうの足を下ろす(繰り返す)

階段の上りでは先に杖を上げてしまうと、杖で支えるときに突っ張ってしまい、転ぶ危険性があります。
また、下りるときに足から下ろしてしまうと、体が先に階段の下に投げ出される形になり、転げ落ちる危険性があるため注意が必要です。
覚えにくい場合は、上りでは足が先、下りでは杖が先になるため、良いほうの足より一段低い位置に松葉杖がくるようにすると覚えるようにしましょう。

●急な階段は転倒のリスクが高いため無理に使用しないことも大切

正しい使い方をしたとしても、急な階段は転倒の危険性が高くなります。
そのため、できるだけ人に支えてもらうようにすることも大切です。
どうしても、一人で上り下りしなければならないときは、しゃがんでお尻をつけた状態でゆっくり上り下りする方法もあります。
どちらにせよ、一時的に2階などに上がらないようにするなどの工夫ができればするようにしましょう。

●坂道では急がず慎重に

坂道の下り坂では、平地とくらべてスピードが出やすいため、松葉杖をつく位置をいつもより手前に意識して、慎重に進むようにしましょう。
また、上り坂では重心が後ろに行きやすいため、足を松葉杖より大きく振り出すと後ろに転倒する危険性があるため注意しましょう。

松葉杖を正しく使ってけがでも活動的な生活を送ろう

松葉杖は正しい使い方をすれば、けがをしていても移動をすることができます。
けがだからといって寝てばかりいるのではなく、松葉杖を使って活動的な生活を送ることで、体力の低下を防ぐことはもちろん、ストレスの解消にもつながります。
ただし、誤って使ったり、無理に使ったりすれば新しいけがや転倒の危険性があります。

自分がけがをしたときはもちろん、周りにけがをして松葉杖を使わなければいけなくなった方がいる場合に助言できるように、今回ご紹介した内容をぜひ覚えておいていただければと思います。

※必ずお使いの製品の添付文書および取扱説明書をご確認の上、ご使用いただきますようお願い致します。
  • 執筆者

    蔵重雄基

  • 整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
    現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
    医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。

    保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級

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