人工知能を活用した新型コロナ対策。あなたも気軽に不明な点を確認し、不安を解消できる
新型コロナウイルスに関する問い合わせ窓口は、混雑している場合や時間の制約があることが難点です。
これに対応するため人工知能を活用し、利用者が自ら不明な点を確認できるツールが提供されています。
本記事ではこのツールについて解説します。
目次
新型コロナの不安を解消するには、不明な点を自ら確認できるツールが便利
2020年4月以降、市民が自ら新型コロナウイルスに関する情報を得られるツールが自治体などから提供されています。
このツールは住民それぞれの事情にあわせて使えること、最新かつ確実な情報を入手できることにより、新型コロナウイルスの不安解消に役立てることができます。
このツールが求められる理由を、4つに分けて解説します。
●新型コロナウイルスに関する情報は、日々更新されている
新型コロナウイルスに関する情報は日々更新されているため、変化を注視する必要があります。
2020年1月から5月に限っても、以下の新しい情報がありました。
日にち | できごと |
---|---|
1月16日 | 国内最初の感染者が発生 |
2月 | さまざまな施設で集団感染が発生し始める |
2月27日 | 首相が全国の小学校・中学校・高等学校に対し、一斉休校を要請する |
3月6日 | PCR検査が保険適用される |
3月13日 | 新型コロナウイルス感染症に関する特別措置法の改正案が成立 |
3月25日 | 東京都内の感染者数が急増傾向に転じる(4月中旬がピーク) |
4月7日 | 7都府県に緊急事態宣言を発出(4月16日~5月14日まで全国に拡大) |
4月20日 | 1人当たり10万円を支給する「特別定額給付金」が閣議決定される |
5月7日 | 抗ウイルス薬「レムデシビル」を治療薬として承認 |
5月18日 | 厚生労働省が新型コロナウイルス診療の手引を改訂。血栓に対する治療の必要性を記載 |
5月25日 | 全国で緊急事態宣言が解除。各種施設における制限の緩和について、指針が示される |
上記の通り感染の広がりだけでなく、国や自治体の政策も日々変化し、医療も進歩しています。
このため最新の情報を入手することが、適切な判断を行う上でも重要です。
●生活スタイルは人それぞれ。セルフで問い合わせできるツールなら、24時間対応可能
生活スタイルの多様化に伴い、新型コロナウイルスに関する疑問や悩みも人それぞれとなっています。
一方でこれらの疑問や悩みは、公開されている情報だけでは解決できなかったり、わかりにくかったりするケースも少なくありません。
この点、24時間いつでも問い合わせできるツールがあれば、あなただけの疑問や悩みに答えることが可能です。
もちろん、忙しくて日中は公的機関に問い合わせできない方にとっても、ありがたい方法といえるでしょう。
このような方でも人工知能を使い自動で応答する「チャットボット」を使うことで、いつでも情報を得られます。
●利用者がセルフで解決できるツールは、行政でもサービスを提供している
上記のような「利用者自身がセルフで質問し、疑問や悩みへの答えを自動で得られるツール」は、行政でもサービスを提供しています。
たとえばObotAIのAIチャットボット「COVID-19 Q&A」は千葉県などの自治体をはじめ、官公庁や病院などにも提供されています。
また神奈川県はLINEのAIチャットボット「LINE BRAIN CHATBOT」を活用し、神奈川県のLINE公式アカウントで新型コロナウイルスに対する質問に対応しています。
●誰にも知られずに相談できる点も大きなメリット
新型コロナウイルスに限らず、病気に関する問い合わせは個人的な事情やプライバシーに関わる内容を多く含んでいます。
このため、できれば誰にも知られずに相談したい方もいることでしょう。
人工知能を活用した自動応答ツールは、誰にも会わず、質問内容を聞かれずに相談できることが大きなメリットです。
特に個人情報を提供せずに質問できるツールを使えば、誰にも知られずに相談できることは見逃せません。
あなたも使える人工知能を活用したツールをご紹介
人工知能を活用したツールは、いくつかあります。
ここでは主な3つのツールを取り上げ、それぞれの特徴を解説します。
●症状に応じた対処方法と受診先を案内するAI受診相談「ユビー」
AI受診相談「ユビー」はUbie株式会社が開発した、患者向け事前問診サービスです。
これをもとに開発した「AI受診相談ユビー新型コロナウイルス版」の緊急無償提供が、2020年4月28日から開始されています。
「AI受診相談ユビー新型コロナウイルス版」は、以下の特徴を持つサービスです。
- 〇自宅のパソコンやスマートフォンで使用できる
- 〇24時間いつでも利用可能
- 〇質問数は20問前後。ただしほとんどが選択式の質問であるため、操作が簡単
- 〇回答後、緊急度や適切な受診先、新型コロナウイルスの可能性があるかどうかを表示
一方で適切な回答を得るには、ポイントがあります。
「気になる症状を記入する」欄は数少ない記述式の項目ですが、ここでは「息苦しい」などのように、症状を1つだけ簡潔に記すことが重要です。
たとえば「3日前くらいからせきや39度の熱が出て、今日になって息苦しくなってきて」などと入力すると、あなたの症状に合う選択肢が出てきません。
気になる症状は3回まで設定できますから、シンプルな入力を心がけましょう。
●AIチャットボット「COVID-19 Q&A」
「COVID-19 Q&A」は株式会社 ObotAI が提供するAIチャットボットです。
新型コロナウイルスに関する質問に対して、厚生労働省などが提供する情報に基づき自動で回答するツールです。
「特別定額給付金」など、新型コロナウイルスに関する政策についても回答が得られることが特徴です。
「COVID-19 Q&A」も、シンプルな質問で回答が得られることが特徴です。
たとえば「高齢者」と「高齢者が注意すべきことはありますか」の質問は、両方とも同じ回答が得られます。
ObotAIは直接運営する専用サイトのほか、千葉県など公的機関でも活用されています。
また日本語のほか、英語・中国語・韓国語・タイ語に対応し、画面上部のボタンで切り替えられます。
●神奈川県の「新型コロナ対策パーソナルサポート」
神奈川県は、新型コロナウイルスに対する最新の情報などを県民自身で確認できる「新型コロナ対策パーソナルサポート」を提供しています。
このサービスは、ソーシャルデータバンクおよびLINE、学校法人慶應義塾と連携して提供されています。
情報提供のほか、必要に応じて医師への相談ができることも特徴です。
また神奈川県民以外でも利用できます。
利用する前には体調に関する質問など、あなた自身に関するいくつかの質問に回答する必要があります。
質問に答えると、その時点で新型コロナウイルスに発症している可能性があるか表示されます。
その後も、定期的に症状をたずねるフォローアップのメッセージが送られます。
利用を開始すると以下に挙げる5種類のボタンが現れますので、状況の変化や知りたい内容に応じて情報を得られます。
- 〇症状が現れた方(発熱された方)
- 〇症状が現れた方(強いだるさ・息苦しさの症状が現れた方)
- 〇よくあるご質問(新型コロナ全般、神奈川県民向け、事業者向け)
- 〇最新情報
- 〇スマホでお医者さん相談(LINEヘルスケア提供)
質問の多くは、表示された選択肢を選ぶだけでよいところもメリットに挙げられます。
新型コロナに関する疑問を上手に解決するコツ
ここまで解説した通り、市民は新型コロナウイルスに関する最新かつ正しい情報を、必要なタイミングで入手できます。
一方で質問相手は人工知能ですから、有効な回答を引き出すにはコツがあります。
質問する際にはどのような点に配慮すべきか、3つのポイントに分けて解説します。
●「どこへ相談するべきか」を知る目的で使うと最適
本記事で紹介した自動応答ツールは、それだけで疑問が解決できないケースもあります。
特に症状については医師が実際に診察していないこともあり、「あなたの病名はこれ」などといった診断は受けられません。
しかし疑問を解決できなくても、適切な相談先を提示してもらうことは可能な場合が多いです。
このため「何か不安なことがあるが、どうしたらいいかわからない」といった方に適したツールです。
自動応答ツールは24時間いつでも、ほかの方に知られることなく活用できます。
もし場違いの質問をしても、恥ずかしく思う心配はいりません。
このため事態が深刻になる前に早めに活用し、適切な相談先を見つけるようにしましょう。
●質問は要件だけを伝え、なるべく短くする
皆さまのなかには、以下のような質問をする方もいるかもしれません。
- 〇はじめから時系列できちんと説明する
- 〇質問したい背景も含めて説明する
しかし自動応答ツールでは、このような質問をするとかえって適切な回答が得られない恐れもあります。
そのため「高齢者が注意すべきことはありますか?」など、シンプルな質問がベストです。
「お世話になっております」や「初めまして」などといった挨拶も不要ですから、要件だけを伝えるようにすると、目的の回答を得やすくなります。
●人工知能は万能ではない
人工知能は、あなたがこれまで生きてきた環境や学んできたことなどを、あなたと同じように学んでいるとは限りません。
このため人工知能を活用した自動応答ツールは、時にあなたが意図しない回答を送ってしまう場合があります。
また人間と同じように質問に答えられない場合もありますから、人工知能は万能とはいえません。
もし意図しない回答を受け取った場合は、似たような言葉で質問するなど工夫してみましょう。
不安や疑問を感じたら、問い合わせツールを活用しよう
人工知能を用いた問い合わせツールの活用により、新型コロナウイルスの不安な点を自分自身で調べ、適切な対応方法や相談先を見つけることが可能です。
このため「どうしよう、どうしよう」などといたずらに不安をかきたてる必要は、もうありません。
問い合わせツールには選択式など手軽に質問できる体制が整っていますから、不安や疑問があればまずは使ってみることをおすすめします。
参考:
薬事日報【厚労省】新型肺炎、国内初の感染者‐30代男性からウイルス検出.(2020年5月18日引用)
日本経済新聞 済生会有田病院が外来再開 安全宣言も、和歌山.(2020年5月18日引用)
東京新聞 新型コロナ 濃厚接触者600人に通知 スポーツクラブ 感染者利用 県市川保健所.(2020年5月18日引用)
高槻市 【新型コロナウイルス感染症】ライブ参加者への検査受診呼びかけの終了について.(2020年5月18日引用)
ニッポン放送 安倍総理が「一斉休校」を要請した本当の理由.(2020年5月18日引用)
埼玉県医師会 新型コロナウイルス拡散検出(PCR検査)の保険適用に係る通知等について.(2020年5月18日引用)
首相官邸 令和2年3月14日 新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見.(2020年5月18日引用)
東京都 小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和2年3月25日).(2020年5月18日引用)
東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト.(2020年5月18日引用)
首相官邸 令和2年4月7日 新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見.(2020年5月18日引用)
首相官邸 令和2年4月17日 新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見.(2020年5月18日引用)
首相官邸 令和2年5月14日 新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見.(2020年5月18日引用)
津市 新型コロナウイルス感染症に係る「特別定額給付金」について.(2020年5月18日引用)
総務省 特別定額給付金(新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関連).(2020年5月18日引用)
総務省 特別定額給付金 よくある質問.(2020年5月24日引用)
日本経済新聞 レムデシビルを承認 国内初の新型コロナ治療薬.(2020年5月18日引用)
NHK 新型コロナ 診療の手引き改訂 血栓対応や治療薬など 厚労省.(2020年5月19日引用)
佐賀新聞 <新型コロナ>血栓のリスクに要注意 症状、診療ポイントを分類.(2020年5月24日引用)
首相官邸 令和2年5月25日 新型コロナウイルス感染症対策本部(第36回).(2020年5月25日引用)
大塚商会 チャットボット.(2020年5月24日引用)
Ubie 病気と対処法を調べるAI受診相談ユビー.(2020年5月18日引用)
Ledge 自宅からスマホやPCで新型コロナウイルスの問診、院内感染防止へ.(2020年5月18日引用)
PR TIMES 自宅で事前問診可能な「AI受診相談ユビー新型コロナウイルス版」を無償提供開始.(2020年5月18日引用)
日経BP あの“AI問診”のUbie、2つの新サービスでコロナに挑む.(2020年5月18日引用)
千葉県 新型コロナウイルスに対応した多言語AIチャットボットを活用した情報提供を開始します.(2020年5月19日引用)
千葉県 新型コロナウイルス感染症対策サイト.(2020年5月19日引用)
ObotAI「新型コロナウイルス感染症に対応したAIチャットボット「COVID-19 Q&A」を、日本語・英語・中国語(簡体、繁体)・韓国語・タイ語の6言語で、官公庁、自治体、病院などの医療機関および企業に無償提供」.(2020年5月24日引用)
ObotAI「COVID-19 Q&A」.(2020年5月24日引用)
LINEのAIチャットボット「LINE BRAIN CHATBOT」とマーケティングツール「Liny」が連携!スムーズに新型コロナウイルスに対する支援が受けられる神奈川県のLINE公式アカウントが誕生.(2020年5月19日引用)
神奈川県 神奈川県LINE公式アカウント「新型コロナ対策パーソナルサポート(行政)」個人情報保護方針(個人情報の取扱).(2020年5月24日引用)
朝日新聞社 新型コロナ対策で重要性増すパーソナルサポートと「隠れクラスター」発見.(2020年5月24日引用)
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執筆者
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千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。
保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ