くも膜下出血の症状は激しい頭痛。知っておきたい3つの発症時の症状と予後について解説します
突然の頭痛などの症状を伴うくも膜下出血は、時にはその人の命まで奪う脳卒中の一つです。
そんなくも膜下出血は、初期症状の重症度により、病気の予後もある程度判定が可能といわれています。
今回はくも膜下出血の初期症状と、この病気の予後についてお話ししていくことにしましょう。
目次
くも膜下出血は突然起こる脳内の出血。原因に多いのは動脈瘤の破裂
くも膜下出血の発症時の症状は頭痛・吐き気・意識障害の主に3つ
くも膜下出血には主症状が3つあり、片麻痺や失語のような兆候はないことが多いです。
●知っておきたい初期症状。くも膜下出血の発症時の症状は激しい頭痛など
くも膜下出血の発症時の症状として知られているのが、今までに経験したことのない激しい頭痛です。
ほかにも、吐き気や嘔吐を伴い、頭痛は数日にわたり持続する場合も多く、意識障害も伴うことがあります。
発症時の意識障害との関係性から、
- 1)頭痛に伴い意識を失う
- 2)激しい頭痛のみ、意識障害はなし
- 3)突然の意識消失
のいずれかの症状が現れます。
意識障害はたいていの場合、数分から1時間程度で回復しますが、意識がぼんやりとしている状態が数日続くこともあります。
また人によっては、けいれんを起こす場合もあります。
今までに感じたことのない激しい頭痛が突然起こった場合、それが一晩寝ても治らない場合などは、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の予兆である可能性があります。
そのような場合には安静にし、医師に相談するようにしましょう。
●その他の症状はさまざま。動脈瘤が原因の場合の兆候を解説
発症時の初期症状に続いて、くも膜下出血では項部硬直と呼ばれる、うなじ部分の筋肉が緊張してうつむくことができない状態になります。
くも膜下出血の発症直後には、片麻痺と呼ばれるどちらか一方の手足が麻痺したり、失語症が起こることはまれです。
しかし、出血が脳の中にまで及んだり、血液が脳を圧迫したり、脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)と呼ばれる出血部分の血管が収縮するといったことで起こり得ます。
ほかにも動脈瘤の破裂する部分により、
- 1)物が二重に見える、まぶたが開けられない
- 2)無言、無動(動作が緩慢になり動けなくなること)
- 3)片眼の失明もしくは視力障害
などが起こることがあります。
気になる予後について。くも膜下出血の予後は重症度によって大きく異なる
くも膜下出血の予後はその重症度により異なります。
再出血などの経過についても注意点を踏まえて解説します。
●くも膜下出血は24時間内の再出血が最も多く、4日以降2週間以内は脳梗塞発作も多くなる
くも膜下出血は脳動脈瘤の破裂により起こることが多いため、破裂した動脈瘤からの再出血、すなわち再発が起こることが特徴です。
動脈瘤の手術をしなかった場合には24時間以内に再発することが多く、適切に手術をしなかった場合には再発により7〜8割が死に至るといわれています。
先ほど解説した脳動脈瘤の破裂後に起こる血管の攣縮により、4~14日以内に脳梗塞を起こす可能性が高いため、発症後にも注意が必要です。
●くも膜下出血は発症時の意識状態が良好なほど、死亡率が低い
くも膜下出血の発症後(手術前)、意識がもうろうとした状態が重症であればあるほど、その予後は良くないといわれています。
発症時に昏睡状態に陥った場合は、1カ月以内に死亡するケースが多くその割合は3割~5割といわれています。
治療後元気に退院をされる方は全体の3~4割程度、4割以下は障害が残るといわれます。
以下のように発症後の状態により、手術の適応もしくはそのリスク、死亡率なども変わってきます。
そのため最近では脳ドッグなどで、脳のMRI画像を撮影することにより、事前にくも膜下出血の原因となりうる脳動脈瘤を見つけ、手術がすすめられています。
グレードⅠ | ・意識ははっきりしている、症状はなく、軽度の頭痛もしくは項部硬直 ・意識ははっきりしている、頭痛・吐き気などは消失 |
手術のリスクが低い 早期の手術を検討 社会復帰率高く、死亡率低い |
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グレードⅡ | 意識ははっきりしている、中等度以上の頭痛もしくは項部硬直があるが、神経徴候(麻痺や意識障害)がないもの | |
グレードⅢ | 意識はうとうとしていて、もうろう状態、軽度の麻痺や脳神経の麻痺、失語などもある場合がある | 早期の手術もしくは2〜3週間後に手術を検討 死亡率高い |
グレードⅣ | 意識は刺激により反応がある程度、中等度以上の片麻痺や除脳硬直と呼ばれる全身の筋肉の硬直を示すことがある | |
グレードⅤ | 意識は昏睡状態(刺激を与えても反応が無い)、瀕死の状態のもの | 手術適応外 |
くも膜下出血の症状、予後についてよく知り、冷静な対応を
くも膜下出血は、多くの方の命を脅かす重篤な病気で、発症前の徴候に気づくまたは発症後の適確な治療が重要です。
発症時の初期症状についてよく知り、事前徴候に注意し、疑わしい場合には医師に相談をしましょう。
また予後をよく知ることで、ご家族に起こった場合にも冷静に対応できるのではないでしょうか。
参考:
田崎義昭、斎藤佳雄:ベッドサイドの神経の診かた 改訂18版.南山堂,東京,2016,pp.356-359.
東京大学脳神経外科 脳動脈瘤、くも膜下出血(2020年6月17日引用)
秋田県立循環器・脳脊髄センター くも膜下出血(破裂脳動脈瘤)(2020年6月17日引用)
亀田メディカルセンター くも膜下出血の予後(2020年6月17日引用)
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執筆者
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1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。
保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士