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目の病気

残存する視機能を生かすために 視機能を失う患者さんの気持ちに寄り添うには

高齢化に伴い、緑内障や糖尿病網膜症など、視力および視野欠損をきたす患者さんが増えています。
視機能を失うことは非常にショックなことですが、残存した視機能を最大限生かして、QOLを上げていくことが必要です。
現在している活動をよりできる活動にするために一つひとつ目標をつくってできるようにしていくこと、前向きな気持ちになっていくには、患者さんの視力を失ったことによる喪失感を理解することが重要です。
ショックのあまり前向きになれないことは自然なことですので、どのような気持ちになっているかを理解してもらえればと思います。

通い慣れたいつもの道を 違う視界で歩き出す

失明とは?失明とロービジョンの定義の解説

失明とは?失明とロービジョンの定義の解説

失明とは、矯正視力(眼鏡などで補正した視力)が0.05未満から光を感じれないもの、もしくは、視野が中心10°以下になってしまったものをいいます。
WHOでは視力が0.05以上から0.3未満の状態を「ロービジョン」と定義しています。
成長や発達あるいは日常生活や社会生活に支障をきたすようなロービジョンの方は超高齢社会の昨今、加齢に伴う病気やけがなどにより増加傾向にあります。
以前見えていたものが見えなくなってしまった、視野が狭くなったなどの視機能に障害が出た患者さんは、ショックでなかなか立ち直ることができません。
視力や視野を失うことで、行動範囲が狭まって以前できていたことができなくなってしまいます。
また、以前の生活になかなか戻れないことを受け入れることができません。
そうした患者さんに前向きになってもらうためには、

  1. ①できなくなったことをできるようになることで自信をつける
  2. ②現在何ができるかではなく、これから何がしたいかを一緒に探す
  3. ③したいことをできるようにするために、どのように支援するかを考える

工夫したら、働ける、学校に行けるといった生活ができることを理解してもらうこと、それにより、リハビリを始めようという気持ちになってもらうことがまず必要です。
そして、ひとつずつ、できないことをできるようになってもらうことが大事です。
そういった前向きな気持ちになってはじめて、さまざまな道具をうまく活用して、ロービジョンケアができるようになりますので、本人が前向きな気持ちになるまで待ちましょう。

患者さんが視力を失うことによるショック、喪失感について

患者さんが視力を失うことによるショック、喪失感について

視力が落ちるということは、ただ見えないだけではなく、大事なものを失う精神的な「喪失感」を伴うことになります。
トーマス・J・キャロルは著書、「失明」の中から失明による喪失を6つの群と20の項目に分けました。
視力の喪失というのは、ただ見えなくなること以外に下記のような大事なものを失うことが起きるのです。

一群;心理的な安定に対する基本的な喪失

  1. ①身体的完全さの喪失
  2. ②残存感覚に対する自信の喪失
  3. ③環境の現実的な接触能力の喪失
  4. ④視覚的背景の喪失
  5. ⑤光のもたらす喪失

二群;基本的スキルにおける喪失

  1. ⑥移動能力の喪失
  2. ⑦日常生活技術の喪失

三群;コミュニケーションにおける喪失

  1. ⑧文章、文字などのコミュニケーションの喪失
  2. ⑨会話におけるコミュニケーションの喪失
  3. ⑩情報獲得の喪失

四群;鑑賞の喪失

  1. ⑪面白さ、楽しみを感じる力の喪失
  2. ⑫美しさを感じる力の喪失

五群;職業経済基盤の喪失

  1. ⑬レクリエーションの喪失
  2. ⑭就職の機会、職業の経験の喪失
  3. ⑮経済的安定の喪失

六群;人格全体としてかかわる喪失

  1. ⑯自立性の喪失
  2. ⑰人並みの社会的存在であることの喪失
  3. ⑱目立たない存在であることの喪失
  4. ⑲自己評価の喪失
  5. ⑳全人格構造の喪失

そのほかには決定的能力の喪失、正しい睡眠の喪失、身体の調子の喪失などがあります。
以前見えていたものが見えない、徐々に視力が落ちていく「視力の喪失」には、移動や食事などの日常生活が送れない、何か美しいものを見てもそれを感じられない、文字が読みにくくなり、本や新聞が読めない、それによりコミュニケーションができないといったことがあります。
それに伴い、勉強できない、就職できない、結婚できないといった問題が起きます。
その結果、精神的にも問題をきたし、人に頼ろうとしてしまい自立心がなくなったり、自己評価が著しく低くなり自信が持てず自尊心が保てなくなったりします。
見えないことにより、精神的に不安定で抑うつ状態となり、不眠による体調不良をきたすといったことが起きます。

視力低下がショックで受け入れることができない患者さんを受容する

視力低下がショックで受け入れることができない患者さんを受容する

視力を失い、何もやる気が起きない、寝込んだまま、どう励ましてもうまくいかない、リハビリや日常生活にはやく慣れてほしいのに……。
そうやきもきしているご家族や、医療従事者はいませんでしょうか?
人の行動や意思は強制すれば一時的に変わることもあるかもしれませんが、本人が必要を理解し、本人の家族や大事な人がその行動に納得し、これならできると納得しない限り、本人は行動はしてくれないものです。
強制をしてもなかなかうまくはいかないものですので、そういう時期だと思って気長に待ちましょう。
納得してもらって、自己決定できるように、趣味や仕事などのやりがいがあることを一緒に探し、気長な気持ちで待つことが一番大事です。

参考:
日本歩行訓練士会 ロービジョンとは(2021年1月13日引用)
トーマス・J・キャロル:失明,1977.
(項目確認用参照:https://oshika.u-shizuoka-ken.ac.jp/media/watasino7.pdf )

  • 執筆者

    佐々木

  • 大学卒業後9年目医師です。 外科系医師として勤務し、手術の傍ら、医療系のライターの仕事をしています。救急の分野を得意とし、医学的根拠に基づいた記事を提供していきたいと思っております。

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