アメリカでの医療費はなぜ高いの?医療費の自己負担はこうすれば節約できる
アメリカで突然の病気やけがで病院の救急治療室にかかったら、莫大な治療費が請求されたなんていう話を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
保険の仕組みが日本とは異なるのは知っているけれど、なぜ高いのか、またどのようにしたら安くなるのか、と疑問に感じていませんか?
今回は、アメリカ在住の筆者がそんなアメリカの医療事情について解説します。
目次
アメリカの医療費の自己負担は加入している保険によって異なる
アメリカの医療はなぜ高額なのかというのは以前、こちらの記事でお話ししましたが、今回、自己負担はなぜ高いのかということに的を絞って解説します。
●アメリカの医療費自己負担は加入している保険によって異なる。プラン外ならすべて自費
アメリカの医療費は、たとえると自動車保険のようなもので、加入している保険の限度額やプランによって異なります。
その医療保険の内容も去年と今年で異なったり、医療機関によっても異なり、医療の内容に対して何%医療保険会社が負担するのかも異なります。
最近では1年で最初にかかった500ドル(日本円で約5万150円)分は自己負担で、それ以上の医療費がかかっていないとカバーされないという保険も増えてきており、診療費は一度の検査で最低でも1000ドル(日本円で約10万3000 円)以上かかります。
上記の金額だけでも医療費が大変高額なことがわかります。
●加入している医療保険会社と診療する医師が提携していなければ、治療費は高額
アメリカの医療保険はさまざまな会社がサービスを提供しており、病院や医療グループ、クリニックなどはそれらの医療保険会社と提携を結ぶ形をとっています。
たとえば、医療保険を提供しているA社とB社があったとして、あなたのかかりたいX病院(仮名)はA社とは提携しているが、B社とは提携していないとします。
あなたがA社の医療保険に加入していると、加入するプランに合う自己負担額を支払うことで診療を受けることができます。
これを、In-Network(インネットワーク)の病院での診療と呼んでいます。
もしあなたがB社の医療保険に加入している場合、X病院で診察を受ける場合には、B社の医療保険のサービス対象外のため、あなたにかかった医療費が全額請求されるため高額となります。
軽い風邪やけがなどの場合にはアージェントケアや市販薬を利用する
アメリカではかかりつけ医に初めに受診するタイプの医療保険が安価であり、好まれていますが、かかりつけ医の診療時間外に体調を崩した場合はどのような方法が最も節約できるのでしょうか。
●市販薬が販売されていないか調べてみる
けがの場合を除いて、風邪や体調不良には薬局などで市販薬が無いか調べてみましょう。
たとえばアレルギーに対する抗ヒスタミン薬、皮膚炎に対する塗り薬、歯の痛み止めや一時的な歯の詰め物、咳止めなども薬局で売られています。
またアメリカではスーパーマーケットに薬局が併設されていることも多いため、薬局が見つからなければスーパーマーケットに立ち寄ってみるといいでしょう。
処方薬も取り扱うスーパーマーケット内の薬売り場や薬局には薬剤師さんも常駐していることが多いため、わからなければ聞いてみるのもいいでしょう。
●Urgent Care(アージェントケア)と呼ばれる救急診療所で短期間分の薬の処方を受けられる
医師の処方薬が必要なときは、病院の救急治療室(ER)に行くよりもUrgent Careと呼ばれる救急診療のクリニックを利用するのも自己負担が少なくて済みます。
ただし夜間などは閉まっているので、近くのUrgent Careが受け付けしている時間を確認しましょう。
もし医療保険があるのなら、提携しているUrgent Careを調べてから行くことをお勧めします。
Urgent Careは薬局やスーパーマーケット内にある薬売り場に併設されていたり、病院が経営していたりする場合もあり、レントゲン撮影の可能なUrgent Careもあります。
短期間の処方薬であれば処方してもらうことも可能です。
アメリカで救急医療を受けたいなら医療保険や旅行保険に加入しよう
アメリカに無保険で生活するのはギャンブルのようなもの、短期間の旅行であっても、それ相応の医療保険加入や旅行保険を申し込んでおきましょう。
●アメリカの医療保険は掛け金も高いが、保険がないと支払えないほどの高額請求が来ることも
先ほどからお話ししているようにアメリカの医療費は高額であり、医療保険に加入していても条件によって、保険会社のサービスが受けられず、自己負担分が高額となる場合があります。
長期に滞在する際には、毎月の掛け金が高額であっても医療保険に加入することをお勧めします。
また学生の場合には大学生協などで扱っている学生用の医療保険もあり、比較的安価で加入することができます。
旅行の場合は後に請求する形となりますが、旅行者用の保険が空港や出発直前にオンラインなどで加入することも可能です。
けがや滞在先での医療費を負担してくれるものを選んで、忘れず加入するようにしましょう。
●診察を受ける医師は、まず加入する医療保険会社に確認もしくはインターネット検索
アメリカと日本では診療を受ける医師の選び方が大きく異なるため、この章で紹介します。
まずはかかりつけ医や診療を受けたい医師(専門科受診はかかりつけ医の紹介状が必要)、Urgent Careを選ぶ際には自分が加入している保険会社に電話で連絡する、もしくはインターネットのホームページにアクセスします。
電話の場合、オペレーターに契約者番号を伝え、受診したい診療科、探している病院やクリニックの場所などを伝えます。
オペレーターにIn-Networkのクリニックや病院を教えてもらう、もしくは自分でネット検索を行い加入する保険会社のホームページにアクセスし、契約者番号を入力すると、提携する医師の名前を検索することが可能です。
管轄区内の政府機関のホームページや書籍を閲覧したり、人づてに日本語が話せる医師の情報を聞いたりすることで知識を得る機会があるでしょう。
もしそのような医師にかかりたい場合には、あらかじめオフィスに連絡し、加入している保険に対応しているか聞くといいでしょう。
アメリカでの医療費を抑えるために必要な正しい情報を得よう
アメリカで医療費は高額だといわれる理由は、医療機関が提携しているかどうかによること、加入している保険のプランによるということが関わっています。
自分の加入する保険についてよく知ることで、自己負担額が高額な際には保険会社や医療機関に説明を求めたり、減額を交渉したりすることも可能です。
また医療に対する自己負担額を軽減するには、日本のように病院に直接かかるのではなく、Urgent Careのようなほかの医療機関や市販薬などを利用し、安易に病院のERに駆け込まないことも念頭に置いて行動するようにしましょう。
参考:
あめいろぐ: アメリカでお医者さんにかかるときの本. 保健同人社, 東京, 2014, pp.48-59.
-
執筆者
-
1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。
保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士