2025年問題は心臓・循環器疾患にも影響を与える。あなたが備えるべき健康リスクと今からできる対策について
2025年問題というキーワードを聞いたことがありますか?
2025年には団塊の世代と呼ばれる戦後のベビーブームに産まれた方々が、後期高齢者に到達し、日本は超高齢化社会が加速します。
そんな2025年には心臓や循環器疾患にもさまざまな影響が起こることが予想されるため、今から健康年齢を若く保つために対策を施す必要があります。
目次
2025年には後期高齢者が約5人に1人に。予想される心臓・循環器疾患の増加は?
2025年に起こると考えられている超高齢化社会の問題と、心臓・循環器疾患は2025年問題により、どう増加すると予想されるのかについてお話しします。
●2025年には65歳以上の高齢者は約3,500万人に。2025年の人口予測とは
世界各国で高齢化社会が進んでいるといわれていますが、とりわけ日本では諸外国と比較しても急速に高齢者人口が増しています。
高齢者は65〜74歳の前期高齢者、75歳以上の後期高齢者と年齢により区分されて呼ばれており、2018年には65歳以上の高齢者の人口は3,519万人となりました。
同じく2018年の日本の総人口は1億2,659万人であり、約27.8%が高齢者という計算になります。
2025年には戦後のベビーブームに産まれた団塊の世代と呼ばれる方々が後期高齢者となり、3,657万人(人口の約30%)が65歳以上、2,179万人(人口の約18%)が75歳以上になることが予想されます。
このように国民の30%が高齢者となる2025年を節目と考え、2025年問題といわれています。
●心臓・循環器疾患は死因の第2位、介護が必要となる原因の第1位、医療費も最も高額
循環器疾患は、高血圧が原因のもの、心臓自体の疾患(心筋梗塞や狭心症、弁膜症など)、脳血管疾患(脳卒中)などをまとめて表現されます。
これらの循環器疾患はがんの次に死亡原因として多く占められています。
また、介護が必要となった方々の約21%は循環器疾患で最も高い割合を占めており、次に認知症となっています。
2017年に使われた医療費の約20%は心臓・循環器疾患が占めており、そのほかの診療科とくらべて第1位となっています。
2025年には心臓・循環器疾患のなかで心筋梗塞よりも心不全の占める率が増える
超高齢化社会には、問題となりうる疾患の種類も異なり、心臓・循環器疾患のなかでも異なる病気が問題となります。
●2025年には心筋梗塞より心不全の割合が増える。心不全の問題点とは
心不全とはさまざまな心臓疾患の終末期であり、高齢に伴う臓器の機能低下により引き起こされる病態です。
加齢による心臓の弁の硬化や、動脈硬化による狭心症などが心不全の原因となります。
また、年を取ると運動量の減少や不規則な食習慣などが引き起こす、サルコペニアやフレイルと呼ばれる筋力の低下により、心臓に過度の負担がかかり心不全を引き起こすこともあります。
医療の進歩により心筋梗塞などの救命率が上がり、その後心不全が引き起こされる例もあります。
このように、心筋梗塞よりも年を取ることで引き起こされる心不全の割合が増えています。
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●2030年には2020年と比較して心不全患者は約10万人増加の見込み
心不全と診断され治療を受ける患者さんは、2020年では約120万人を超えており、次の10年でも増加の一途をたどり、10万人の増加が予測されています。
高齢者の心不全は完治困難であるため、治療薬の処方、心不全の悪化により繰り返す入退院で医療費は増加します。
医療経済の逼迫は高齢者の増加と同様に大きな問題であり、今後の心不全患者さんの増加に対し、さまざまな対策が必要となります。
2025年問題に備えて、健康寿命を長く保ちましょう。その方法についてもご紹介
2025年問題に備えるために考えておかなくてはならないのが、健康寿命をいかに長く保つかということです。
●健康寿命を長く保つためには、リハビリなど長期的な運動習慣の獲得が大切
先にもお話ししたように、高齢に伴いさまざまな臓器に支障が出る可能性があります。
しかし高齢であっても日常生活を自ら行い、健康を保って生活することが今後は大切となり、健康寿命の延長は今後の高齢化社会の課題といえるでしょう。
そのために重要なことは運動習慣を保ち筋力を維持、食生活の是正により生活習慣病を防ぐことが大切です。
運動は生活習慣病である肥満の是正、体重減少による高血圧の是正や脂質異常症、糖尿病の是正を行うことができる良薬です。
このような複合的なリハビリテーションを長期的に行っていくことが重要となります。
●精神的な健康を保つことも健康寿命の延長には大切
先にもお話ししましたが介護が必要となる原因の循環器疾患の次に多いものは、認知症です。
運動には脳の動きにも良い影響を与え、認知症の防止にも役立ちます。
身体的な健康とともに精神的な健康も保つことが健康寿命を長く保つために重要な要素の一つです。
2025年に向けて少しずつ生活の中に運動を取り入れ、規則正しい生活、食生活を送り、健康寿命を長く保ちましょう。
2025年問題に向けて、循環器疾患の予防のために運動習慣や規則正しい生活を
2025年まであと4年ですが、以前から問題として挙げられていた2025年問題の循環器疾患に絞って解説しました。
まずは運動習慣や規則正しい生活を主軸として、2025年問題に立ち向かっていく必要があります。
健康寿命を延ばすため、リスクを回避するために循環器疾患を予防し、今できることから少しずつ取り組むようにしましょう。
参考:
厚生労働省 今後の高齢者人口の見通しについて(2021年3月20日引用)
厚生労働省 循環器病対策の現状等について(2021年3月20日引用)
木原康樹: 超高齢社会における循環器診療. 日本内科学会雑誌107巻9号, 2018.(2021年3月20日引用)
公益財団法人 日本心臓財団 高齢者の心不全(2021年3月20日引用)
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執筆者
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1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。
保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士