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見えにくい、視野が狭いロービジョンの患者さん、日常生活に困らないようにするための日常生活動作訓練とは

事故や病気などで視力低下や視野狭窄が起き、ロービジョンになると、いままでできていた「日常的な身の回りのこと」ができなくなってしまいます。
整理整頓を行いルールを決めて守ること、拡大したりコントラストをつけたりして見やすくすること、音声に頼ることなどがポイントです。
日常生活の不便さを軽減する道具や補助具を使用したり、見やすくなるような工夫を入れたりして、歩行などに関しては日常生活動作訓練を行ってみるのはいかがでしょうか。

ロービジョンの患者さんの日常生活動作訓練

日常生活に不便にならないようにする3つのポイント

部屋を片付けて定位置にものを置くようにする

失明とは、矯正視力(眼鏡などで補正した視力)が0.05未満から光を感じれないもの、もしくは、視野が中心10°以下になってしまったものをいいます。
WHOでは視力が0.05以上から0.3未満の状態を「ロービジョン」と定義しています。
成長や発達あるいは日常生活や社会生活に支障を来すようなロービジョンの方は超高齢社会の昨今、加齢に伴う病気やけがなどにより増加傾向にあります。
そんな中、見にくくなってしまうことで、今までなにげなくできていた日常生活のことができなくなってしまいます。
行動の安全を高め、決まりをつくってそれを守り、訓練を行う日常生活動作訓練は非常に重要です。

  1. ①整理整頓、決まりをつくる
  2. ②拡大する、コントラストをしっかりつけるなどの見やすくなる工夫をする、明るさを調整する
  3. ③音声に頼る

日常生活動作訓練の3つのポイントについて説明をしましょう。

1.整理整頓、決まりをつくる

いったん物を見失ってしまうと探すことが通常より困難になってしまいますので、散らからないように工夫をしましょう。
ルールを決めて使ったら必ず元に戻すこと、同じ種類のものを集めてしっかり整理整頓しましょう。
家族と共有するときはルールを守ってもらい、決められた場所によく使う物を置くことが大事です。
探すことが難しくなってしまうことで時間や労力が割かれることのほかに、物を探しているうちに身体をぶつけたりして、けがをしたり転倒する可能性が高くなります。
物を奥から入れて手前から取るなど、安全を考えて決められたところに物を置くことは必要不可欠です。

2.拡大する、コントラストをしっかりつけるなどの見やすくなる工夫をする、明るさを調整する

白黒のコントラストがつくようにシールなど印をつけることは非常に大事です。
よく触るところ(水道の蛇口、手すり、ドアノブ、電気のスイッチなど)にもしっかり印をつけましょう。
トイレのドアに目立つような印をつけておくことはよくされている工夫です。
また、パソコンなどの特定のキーにコントラストのつくシールを貼って、打ちやすくすることも良い方法です。
どれくらいの照明がご本人にとってまぶしいのか、逆に暗くなってしまうのか、その人に合わせた明るさを調整しましょう。
拡大鏡やスマホなどにより必要な場所を拡大して見やすくする工夫も行うと、見たい場所が見やすくなるでしょう。

3.音声に頼る

最近では音声を利用した時計や体重計、体温計などもあります。
視覚だけではなく、音声を頼りにすることで情報を得ることができます。
携帯電話などのマップ機能も音声でガイドできるため、道に迷うこともなくなるでしょう。また、本当に見えにくくなると家のどこにいるかもわからなくなってしまうこともあります。
時計やラジオなどを家の特定の場所に置くことで、自分が家の中のどこにいるのかの目印となります。

整容面について

整容とは歯磨きをする、顔を洗う、ひげをそる、爪を切る、服を着るなどの「見た目を整えること」です。
その中でまず困難なことは歯を磨くことです。
歯を磨く際、歯ブラシを取って、歯磨き粉をつけ、歯を磨き、口をゆすぐという一連の動作がありますが、一番難しいことは歯磨き粉をつけることです。
歯ブラシに歯磨き粉がしっかりついているかの確認は難しいことが多く、その際の工夫の1つとして手に歯磨き粉をつける、口の中に直接歯磨き粉を入れるなどの方法があります。
最近では黒い歯ブラシもありますのでそういったものを使用し、歯磨き粉とコントラストをつけるのも良い方法です。
お化粧をする、ひげをそるなどに関しては最近はさまざまな拡大鏡が販売されており、見たい顔の部分も拡大することができ、しやすくなるでしょう。
ひげをそること以外に爪を切るといったことも非常に細かい動作となりますので、刃の部分をなるべく使わず、やすりの部分で削るなどの工夫も良いでしょう。
糖尿病の既往がある方などは、爪から感染するリスクもありますので、爪切りも含めて刃物を使うことはほかの人にお願いしてもよいかもしれません。
また、左右違う靴下を履いてしまわないように、洗濯の際に同じ靴下を輪ゴムでまとめる、ペアとしてネットに入れる、もしくは全く同じ靴下だけをそろえるなどの工夫も良いでしょう。

移動や歩行について

段差・手すりの端などの日常にひそむリスクに注意

●家の中の移動

視力障害や視野障害が進むと、家の外だけでなく、家の中のどこにいるかわからないなどといったことに困ることもあります。
たとえばよく使用するトイレのドアノブなどに目立つシールを貼っておくことはお勧めです。
また、音声に頼る方法としては、時計やラジオなどを特定の場所に置いておくことで、その場所が目印になり迷わなくてすむでしょう。

●家の外の移動

視覚がうまく働かなくなると、周囲の環境を把握しにくくなり外出に困難を来すこともあります。
特に、「移動における安全」と「目的地への移動」が目標で、買い物や通勤、通学など、疾患や個人のニーズに合わせて訓練を行うことが大事です。
最近では道に迷わなくてもすむようにマップのアプリによる音声ガイドがあります。
もし、網膜色素変性の患者さんで夜道が苦手というのであれば、夜にどうやって歩行をするかなどをしっかり訓練すると良いでしょう。

●白杖や手引き歩行(ガイドヘルプ)について

視野障害が進むと、前方と足元を同時に見て移動することがかなり困難になる場合があり、そういった場合白杖を使用することは非常に有効です。
しかし、白杖を使うことは全盲の人というイメージが強く、ご家族や、ご本人もなかなか白杖を使うことを受け入れるのが難しい場合もあります。
全盲でなかったとしても白杖を使うことは可能です。
白杖のメリットは前方の階段や足元の障害物などをよけること、周りの人に注目し、注意を促すことができます。
そうすることでけがや事故を防ぐことができます。
使い方は、進行方向の2歩ほど前方で肩幅程度の振り幅に白杖を振って歩きます。
最近では白杖に折り畳み式やT字型や伸縮式などのいろいろなものがあります。
地方自治体によって装具の給付基準が違うので、身体障害者手帳を取得し、確認をしましょう。
また、ご家族の方などが半歩前を歩き、患者さんがその肘を持って歩く手引き歩行(ガイドヘルプ)もよく用いられます。
ご本人の主体性を持ってお手伝いすることで、手引き歩行を行い、歩きながらコミュニケーションを取ることで外出を楽しむことができます。

食事や料理について

●料理

包丁を使用する際は、包丁を安全な奥側に置き、刃は奥へ向けましょう。
また食材を切るときにまな板と食材のコントラストをしっかりつけることで見やすくなります。
最近は便利な家電調理機がたくさんあるのでそういったものを利用するか、電子レンジを利用するのもお勧めです。
味付けに関しては一定の量が出る調味料入れなどが売っています。
100円均一などでも取り扱われています。
そういった道具を使用することで、量がわからなくて困るといったこともなさそうです。

●食事

食事をする際に食材が見にくくて困るため、コントラストをしっかりつけて配膳しましょう(白い食材には黒や濃い色の皿を使用するなど)。
見やすく、こぼしにくくするために深めの皿に入れるようにしましょう。
外食をしたときは小鉢をわかりやすく見やすいところに円形に並べてもらい、順番を説明してもらいましょう。
特に、どの位置に料理が配置しているかを説明してもらうときは、たとえば、時計の位置をなぞらえて説明してもらうなど工夫をしてもらいましょう(クロックポジション)。

日常生活に工夫を取り入れて生活しやすいような環境をつくりましょう

白杖=全く見えないとは限りません ロービジョンの方が危険を避けるために使用することも

病気で見にくくなってしまったことで、いままでなにげなくできていたことができなくなってしまい日常生活に困ってしまうことがあります。
整理整頓をしっかり行うことで物を探す手間が省けます。
そして、明るさを調整したり、コントラストをしっかりつけたりすることや拡大することで見やすくなります。
音声を取り入れることも良いでしょう。
視力が良くても視野が狭い場合、足元が見にくくなってしまうために歩行の際には困難を生じるため、そういった場合は白杖が有効です。
日常生活動作訓練を行い、生活に少し工夫を取り入れれば見やすくなり生活しやすくなるのではないでしょうか。

  • 執筆者

    佐々木

  • 大学卒業後9年目医師です。 外科系医師として勤務し、手術の傍ら、医療系のライターの仕事をしています。救急の分野を得意とし、医学的根拠に基づいた記事を提供していきたいと思っております。

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