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アレルギー

本当に怖いアナフィラキシーショック。大人になってからも突然起きる食物アレルギーには要注意!

食物アレルギーは、子どもだけが発症すると思っていませんか?
大人になっても突然発症することがあるため、食物アレルギーは非常に怖いものです。
特に、アナフィラキシーもしくはアナフィラキシーショックという状況になった場合は病院に速やかに受診して、治療を受けないといけません。
小児における食物アレルギーは経口免疫療法という治療法が近年確立されています。
しかし、成人におけるアレルギーは経路がさまざまであり、アレルギーの既往がある方が誤食だけで起きるわけではなく、突然発症することもある恐ろしいものです。
その中でも多いエビやカニなどの甲殻類アレルギー、小麦アレルギー(小麦依存性運動誘発アナフィラキシーや特定成分を含むせっけんなどで起きる即時型アレルギー)、魚によるアレルギー(アニサキスアレルギーやヒスタミン中毒も含む)について紹介します。

食あたりと思っているその症状、もしかして…? 大人も発症する食物アレルギー

アナフィラキシーとアナフィラキシーショックとは

吐き気・嘔吐 下痢・腹痛 呼吸困難・喘鳴

アナフィラキシーは「アレルゲンなどの侵入により全身性にアレルギー症状を惹起させ、生命の危機を与えうる過敏反応」と定義されています。
さらに、血圧低下や意識障害を伴う特に命に危険がある症状をアナフィラキシーショックといいます。
下記の症状のうち、1つでも症状があるとアナフィラキシーを疑います。

  1. ①皮膚症状
    全身のじんましん、掻痒(そうよう)感、紅潮、口腔内の粘膜の腫脹
  2. ②呼吸器症状
    呼吸困難、喘鳴(ぜいめい)、低酸素
  3. ③循環器症状
    血圧低下、失神、意識消失、失禁など
  4. ④消化器症状
    下痢、嘔吐、腹痛など

小児のアレルギーと大人のアレルギーの共通点と違い

即時型食物アレルギー全国モニタリング調査結果によると、年齢が低ければ低いほど食物アレルギーによるアナフィラキシーの発症頻度は高いですが、約5%は18歳以上の成人です。
全年齢で見ると、鶏卵(34.7%)、牛乳(22%)、小麦(10.6%)が食物アレルギーの3大原因ですが、成人の食物アレルギーの3大原因は甲殻類(17.1%)、小麦(16.2%)、魚類(14.5%)です。
発症の原因としては間違えて食べてしまったという誤食が原因であることは約50%ですが、残り半分の50%は突然発症するためにアレルギーの既往がない方でも要注意です。

エビ・カニなどが原因になる甲殻類アレルギー

旅行先のおいしいものをたらふく食べただけなのに 甲殻類アレルギー

甲殻類アレルギーはエビやカニなどの甲殻類がアレルゲンとなるアレルギーです。
成人におけるアレルギーの原因として第1位です。
甲殻類アレルギーの原因物質はトロポミオシンという筋肉の線維のタンパク質であり、エビとカニでは90%以上のアミノ酸配列が同一であるといわれています。
そのためエビアレルギーの人がカニを食べるとアレルギーを発症しやすくなります。
また、エビアレルギーの約20%の人がイカやタコなどの軟体類を食べるとアレルギーを発症することがあります。
このトロポミオシンは熱に強く、加熱や加工をしてもアレルギーを発症しにくくなることはありません。
甲殻類アレルギーの約50%は加熱したエビやカニを食したことで発症しています。
また、残りの約20%の甲殻類アレルギーは加工食品で起きます。
加工食品などでよくあるのはおやつで食べるエビせんべいです。
カニアレルギーも起きやすいためカニせんべいやカニエキスでも同様の甲殻類アレルギーが起きます。
症状としては10分以内に起きることが非常に多く、じんましんなどの皮膚症状(約75%)が最も多く、口腔粘膜症状(約50%)、呼吸器症状(約20%)と続きます。
このようにアナフィラキシーを起こしやすいため、エビやカニアレルギーの人は食品に入っていないかしっかりチェックすることが大事です。

いつものパンを食べただけなのに…小麦アレルギー

洗顔したあとの気になる違和感 小麦アレルギー

いままで小麦アレルギーがなかった方が突然、アナフィラキシーを発症することがあります。
成人発症の小麦アレルギーの代表例は小麦依存性運動誘発アナフィラキシーと即時型小麦アレルギーに分かれます。
それぞれについて説明します。

●小麦依存性運動誘発アナフィラキシー

小麦を含む食物を摂取した後に運動負荷がかかることで、全身性のじんましんや呼吸困難などの症状が出現します。
普段ただ小麦を食べるだけでは起きないのですが、運動をその直後に行うことでアナフィラキシーが起きます。
発症時の運動はランニングや球技などの激しい運動時に多いですが、散歩などの運動負荷が軽い例でも認められます。
運動をする以外にも、ロキソニンなどの鎮痛剤の使用時や、体調不良時や月経時などにも小麦を摂取すると発症しやすいといわれています。
運動時や鎮痛剤を内服した際は腸管の透過性が亢進し、このアレルギーの原因物質であるグルテンもしくはω-グリアジンの血中濃度が上昇します。
小児に限らず18歳以上の方や高齢者でも年齢に限らず突然発症することがあります。
予防として、

  1. ①原因食品を摂取してから4時間以内の運動は控えること
  2. ②非運動時でも発症する場合は小麦の摂取を控えること
  3. ③アルコールや鎮痛剤と小麦を同時に摂取することは控えること
  4. ④原因食品を摂取する前に抗ヒスタミン薬を内服すること

などを推奨しています。

●即時型小麦アレルギー

2004年から2011年にかけて加水分解小麦を使ったせっけん(旧・茶のしずく石鹸)を使用したことで小麦アレルギーを発症したというニュースがあったのを覚えている方もいるのではないでしょうか。
※2010年12月に製品改良が行われており、現在は成分が変更されています。

せっけんに含まれていた加水分解小麦の中のグルパール19Sという物質が洗顔したときに皮膚を刺激し、顔にかゆみやじんましんが生じます。
その後小麦を摂取することで、まぶたの腫脹や臓器にアナフィラキシー様の重篤なアレルギー症状を来します。
治療としてはせっけんの使用中止および小麦摂取の中止ですが、その後小麦摂取を再開するとアナフィラキシーが発生することがあるために医師の専門的判断が必要となり、要注意です。

食中毒?いいえ、魚アレルギーです

アニサキス?食あたり?実はアレルギーかも

魚を消費することが多い日本に多いアレルギーとして特徴的で、成人では魚を食べた後にアレルギー症状を認めることが多いです。
魚の摂取後にアレルギー症状を来した場合、魚アレルギー、アニサキスアレルギー、ヒスタミン中毒の3つの可能性があります。
魚アレルギーの原因は魚に含まれるタンパク質に対するアレルギーです。
魚アレルギーのほかに、寄生虫によって起きるアニサキスアレルギーや古い魚を食べることによって起きるヒスタミン中毒があります。
ヒスタミン中毒は、IgEを介した免疫反応で起きるわけではないために正確にはアレルギーではありませんが症状は似ています。
成人発症ではアニサキスアレルギーやヒスタミン中毒が多い傾向にあります。

●魚アレルギー

魚類に起きる主要なアレルギーのほとんどは、パルブアルブミンという魚の身に含まれるタンパク質もしくは魚のコラーゲンによるものです。
魚アレルギーは、寿司や刺身などの魚を生食することによって起きやすいといわれています。
かなり長時間かつ高温で加熱しないとパルブアルブミンの性質が変わらないといわれており、生食でなかったとしても要注意です。
魚に含まれるパルブアルブミンやコラーゲンはすべての魚類で共通しているため、いったん魚アレルギーを発症するとすべての魚を食べられなくなる可能性があります。
また、水にさらすと、このパルブアルブミンは溶けてしまうため、水にさらした後加工するかまぼこなどの練り物は食べられる人もいます。
コラーゲンは加熱や加圧により形態が変わるため、ツナ缶は食べられる、魚の種類によって変わるなど人によって違いがあるために、どの種類の魚を食べられるかや加工や加熱などの形態を含めて、アレルギーの精査をしっかりする必要があります。
成人になって起きる魚アレルギーは小児発症の魚アレルギーが成人になって持ち越したものと、新たに魚アレルギーを発症したものの両方あります。
新たに魚アレルギーを発症する例としては、魚を扱う調理師が職業として皮膚や気道から感作を受けた後もしくは、化粧品に含まれる魚のコラーゲンに皮膚や粘膜から感作された後が多く、その後魚を食べた際に魚アレルギーを発症することが多いようです。

●アニサキスアレルギー

アニサキスアレルギーはイカ、サバなどに多く存在する回虫という寄生虫です。
寄生虫が人間の腸管に入ることで感作が生じ、アレルギー反応が起きます。
加熱や加工をすると比較的起きにくいといわれています。
また、年齢が上がるにつれ、魚を生食する機会が多くなり、アニサキスの抗体の保有率が上がるために起きにくくなるといわれています。
海産魚介類を生食してから10分から数時間以内にアナフィラキシー症状を発症します。
胃痛や嘔吐、嘔気などの消化器症状が一番多く、じんましんなどのほかの症状が出ることもあります。

●ヒスタミン中毒

正確にはアレルギーとしての免疫反応を介したわけではありませんが、症状はアレルギーに似ています。
イワシ、サンマ、サバ、マグロなどの赤身の多い魚には必須アミノ酸であるヒスチジンが含まれています。
しかし、鮮度が落ちることにより、魚に寄生している細菌がヒスチジンをヒスタミンに変性させます。
ヒスタミンは経口摂取した後消化酵素により分解されるのですが、大量に摂取すると代謝できなくなり消化管内にヒスタミンが吸収されます。
このようにヒスタミンが体内に大量に蓄積することで、ヒスタミン中毒を引き起こしアナフィラキシーの症状が出ます。
ヒスチジンを多く含むカジキマグロなどのマグロ、ブリ、サバなどの魚に多いといわれています。
また、加熱をしてもヒスタミンは分解しにくいため、要注意です。

子どもだけではなく、大人になっても突然食物アレルギーを発症する

食物アレルギーは子どもにのみ発症するわけではなく、大人になってからもある日突然発症することがあります。
特に、甲殻類アレルギーや小麦アレルギーや魚アレルギーは大人になってから発症することが多いため、注意が必要です。
万が一アレルギーを突然発症してしまった場合は、アナフィラキシーショックに至ることもあり、その際は命の危険があります。
速やかに病院や診療所を救急受診できるように、最寄りの医療機関をしっかり把握しましょう。

参考:
消費者庁 平成30年度 食物アレルギーに関連する食物表示に関する調査研究事業報告書(2021年4月22日引用)
公益社団法人日本フードスペシャリスト協会 講演Ⅱ 食物アレルギーの原因食品として問題になっている甲殻類原材料を検出するキットの開発(2021年4月22日引用)
独立行政法人環境再生保全機構 ぜん息予防のためのよくわかる食物アレルギー対応ガイドブック2014(2021年4月22日引用)
独立行政法人国民生活センター 小麦加水分解物を含有する「旧茶のしずく石鹸」(2010年12月7日以前の販売分)による危害状況について-アナフィラキシーを発症したケースも-(2021年4月22日引用)

  • 執筆者

    佐々木

  • 大学卒業後9年目医師です。 外科系医師として勤務し、手術の傍ら、医療系のライターの仕事をしています。救急の分野を得意とし、医学的根拠に基づいた記事を提供していきたいと思っております。

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