デスクワーク症候群で増えている肩こりの原因は○○だった。日常生活でできる予防は?
2020年の新型コロナウイルス感染症の流行以降、肩こりの症状で整形外科を受診する方が増えています。
テレワークの時間が増えたことを原因として挙げている方も多く、皆さん慢性的な肩の不快に悩んでいるようです。
この肩こりの原因は何か、自宅でできる予防法についてお伝えします。
肩こりの正式な傷病名と原因を知っていますか?
一般的に肩こりといわれる傷病名は、医学的には頚肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)といいます。
首の付け根から首筋にかけての筋、肩や背中の筋が張ったり痛んだりします。
症状が強い方は頭痛や吐き気を伴う場合もあります。
人の頭は5㎏ほどあり、ボーリングボールと同じくらいです。
この頭を細い首で支えているのです。
首筋をまっすぐに正しい姿勢で頭を支えている分には問題はありませんが、頭を前方に出す不良姿勢をとってしまうと、頭を支えている僧帽筋・頭半棘筋(とうはんきょくきん)などの首筋や肩の筋肉群に大きな負荷がかかります。
負荷がかかった筋肉群はその組織を硬くすることで、コルセットのような状態をつくり、組織を守ろうとします。
結果として血流が不良となり、血流が悪くなった組織が炎症を起こして痛みが発生します。
つまり肩こりの原因は、不良姿勢や、長時間同じ姿勢であること、運動不足による血流不良なのです。
なお、頚椎椎間板ヘルニア・頚椎症性頚髄症・胸郭出口症候群などレントゲン上で所見がある方も、症状として肩こりを起こすことが多くあります。
肩こりの予防になるデスク周りの環境とは
長時間のテレワークが原因で肩こりになったのなら、その時間を減らせばよいのでは?とも考えますが、仕事をしないわけにもいかず、難しいのが現状でしょう。
肩こりを予防するには正しい姿勢を保持することが必要です。
ここでは正しい姿勢について具体的にご紹介します。
1.パソコンと目の高さ
パソコン画面を見るときの目線が、10度ほど下を見るくらいの高さに合わせ、背筋をしっかり伸ばします。
人の脊椎には生理的湾曲というものがあり、7個ある頸椎は1個目から7個目へ向かってゆるやかに後方へカーブしているのです。
このカーブを不自然に前屈・後屈させないような姿勢を保つことが必要です。
ノートパソコンなどを使っていて高さ調整が難しい場合は、パソコンスタンドを購入して高さを調節しましょう。
下に空き箱や本などを敷いてもよいでしょう。
天板が昇降できるデスクなどもおすすめです。
2.肘の角度
手を机の上に置いたときに肘の角度が90度になる位置にキーボードを置き、肩が丸くならないようにします。
両肩が胸より前に出てしまう巻き肩になると、頭の位置が前に出すぎてしまい、首筋に負荷がかかるのです。
ノートパソコンを使用している方は別売のキーボードを用意するのも一案です。
3.お腹の位置
椅子には背もたれを利用して骨盤を立てて座ります。
骨盤を立てて座ると背筋が伸びやすく、背中や首筋への負担が減ります。
椅子は背もたれと座面の角度が90度に近いもので、座面はある程度硬さがあるものが理想的です。
座面が柔らかいと骨盤が立たず、臀部が沈み、背中が曲がる姿勢になってしまいます。
座ったときに太ももに対してお尻側が高くなるようなクッションを利用すると、骨盤を立てやすいでしょう。
4.足の位置
椅子に座ったときに足裏全体が床に着く高さに調整しましょう。
足裏が届かない状態は座ったときに骨盤が不安定に動きがちです。
さらに、なるべく膝や足首を90度にして座れるようにしましょう。
椅子が高い場合は、足下に空き箱や本を置くことで膝の高さを調整できます。
5.スタンディングデスクを使う
立った姿勢で使用する、「立ち机」を使うことも肩こり予防に効果的です。
胸を張って立った状態で机に向かうことで、脊椎の生理的湾曲を妨げず、首に負荷がかかりにくい姿勢を保つことが可能です。
実際に立ち机にしてから、肩こりが楽になったという方もいますが、立つことに慣れていない方や膝や股関節に疾患がある方は、医師に相談してからスタンディングデスクを使うようにしましょう。
自分でできる肩こり予防法
●ストレッチ
長時間同じ姿勢でいると、肩こりのリスクが高まります。
肩こりを予防するために、デスクワークを続けたら30分に一度は立ち上がって肩を大きく回す運動をしましょう。
肘を曲げ、肩を前に5回、後ろに5回まわします。
また、両手を伸ばして頭の上で組み、体を左右交互に倒すのもよいでしょう。
頭部を前や後ろに回す運動は首筋が伸び、その筋肉の緊張を緩めます。
しかし、頸椎に疾患のある方が首を回す運動をすると、症状が悪化する場合があります。
頸椎に不安がある方は医師に相談してから行ってください。
●自分の姿勢をチェック
正しい姿勢ができているか、セルフチェックをしてみましょう。
まず、壁に背中をつけてまっすぐ立ちます。
①頭と②お尻、③かかとの3点を壁に付けてまっすぐ立ったとき、壁と腰の間に手のひら約1枚分の空間ができていたら良い姿勢といえます。
もし腰が壁についてしまい隙間が見つけられないという人は「猫背」、逆にこぶし一つ入るくらい十分な空間ができている人は「反り腰」になっているといえます。
●肩こりの改善に必要なのは、筋力強化と血流改善
肩こりで辛い…と悩んでいる方は、自宅で湿布を貼ったり整体などに行ってマッサージを受けたりして対処している方が多いでしょう。
しかし、これらはあくまで一時的なケアであるため、数時間から数日で元の「肩こり」になった状態に戻ってしまう方が多いのです。
これは、湿布やマッサージでは根本的な原因、つまり不良姿勢は十分に改善できていないからです。
『スリーウエルネス』では、利用者様一人ひとりの姿勢や凝り具合など、体を正確に評価した上でケアを行います。
不良姿勢によって硬直した筋肉を「緩める」ことで凝りや痛みを取り除きます。
さらに凝り固まった筋肉を「鍛える」ことで、肩こりの原因も改善していきます。
次回はそのプログラムで行う施術の一部をご紹介しますので、そちらもぜひチェックしてみてください。
参考:
日本整形外科学会 肩こり(2021年4月27日引用)
真興交易 医書出版部 慢性疼痛治療ガイドライン(2021年4月27日引用)
長寿科学振興財団 健康長寿ネット 肩こりに効く体操とは(2021年4月27日引用)
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執筆者
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岡山の北長瀬駅から徒歩約3分の立地にある、ホテルとトレーニング&ケアの複合施設『スリーウェルネス』に所属している柔道整復師の大塚です。
https://3wellness.jp/
免許取得後、スポーツ系の接骨院などで4年間経験を積んでいます。
多くのスポーツ選手や痛みで悩む患者様の治療とトレーニング指導を行っていました。
現在はその経験を活かして、ケアとトレーニング指導を担当しています。
保有資格:柔道整復師、キッズコーディネーショントレーナー、Fast認定クリニシャン