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常に飲み物が置いてあるのはなぜ?~高齢者に水分摂取が欠かせない理由~

入居者さんの目のまえに、いつも飲み物が置いてあるのは「ちょこちょこ飲み」を進めるためです。
水分補給が大切なのは、なにも高齢者に限ったことではありませんが、これには老化によっておこる体の変化が大きく関係しているのです。
今回は、高齢者の水分摂取の重要性について解説します。

ちょこちょこ飲み

「ちょこちょこ飲み」の目的は?こまめな水分摂取が欠かせない理由4つ

ご高齢の方の水分摂取には「ちょこちょこ飲み」が重要なポイントなのですが、その理由として、老化によって起こる体の変化が関係しています。
その変化には、以下の4つがあげられます。

●脳機能の低下

脳の機能が低下し、のどが渇いたと感じる口渇中枢の反応が鈍くなります。
このため、体に水分が足りなくても、のどが渇きにくくなります。
のどが渇いたと感じるころには、重度の脱水症状を起こしていることも少なくありません。

●嚥下機能の低下

物を飲み込むときは、舌やのどの動きが重要になります。
体のほかの部位と同様に、飲み込みに関わる部位の機能も老化しますので、若い人のようにごくごくと飲むことは難しくなります。

●筋肉量の低下

体の水分は、筋肉などの細胞の中にある水(細胞内液)と、血液中などの細胞の外の水(細胞外液)に分けられます。
割合は細胞内液が3分の2、細胞外液が3分の1です。
ご高齢の方は筋肉量が少ないので、細胞内液がより少ないという特徴があります。
ところが、通常水分は細胞外液から先に失われ、足りなくなった分が細胞内液から補充されるようになっているため、補充できる細胞内液が少ないご高齢の方は、脱水になりやすいといえるのです。

●腎機能の低下

腎臓が悪くなると尿がでなくなると思っていませんか?
腎臓には血液中の老廃物を尿に捨てる働きがありますが、実は必要な水分は血液に戻し、バランスを保ってくれているのです。
腎臓の病気がないご高齢の方では、この濃縮機能が低下しやすくなります。
濃縮できないと、老廃物を捨てるときにたくさんの尿が必要になり、尿量が増え、体の水分は減ってしまいます。
このように人は老化によって、水分バランスに関係するさまざまな機能が低下することで、脱水になりやすくなるのです。

1日の水分摂取量を「見える化」!トヨタ自動車にならう共有システム

筆者は長く脳外科病棟に勤務していました。
脳外科病棟にはご高齢の患者さんが多いうえ、麻痺や飲み込む動作がうまくできない障害などにより、自力で水分摂取することが困難な方や、言葉の障害があり、のどが渇いてもうまく伝えられないという方がいらっしゃいました。
このような患者さんが脱水になることを防ぐために、病棟で実施していた対策があります。
それは、患者さんが使用しているコップの容量を測り、そのコップで何杯飲んだかを記録して、1日の水分摂取量を確認するというものです。
この方法を「見える化」といいますが、「見える化」は、必要水分量の達成だけが目的ではありません。

●「見える化」で見える3つのこと

「見える化」は、トヨタ自動車の製造工場から始まり、現在はさまざまな企業で広く使われている「物事を誰にでも見えるようにして共通認識する」というシステムです。
施設での水分摂取に「見える化」を採用した場合の効果は以下のようになります。
1)情報が見える
2)問題が見える
3)行動が見える

では、それぞれの項目ごとにみていきましょう。

1)情報が見える

コップの容量を測って飲み物を入れておけば、どのくらい飲んでいるか一目瞭然です。また飲んだ総量をチェックすることで、その入居者さんが普段平均してどのくらい飲むのかを知ることができます。

2)問題が見える

コップの飲み物が減っていなければ、飲んでいないと気づくことができます。
お声をかけても飲みたがらなければ、なにか飲みたくない理由があるのだと気づくことができます。

3)行動が見える

飲んだ量が少なければ、摂取を促します。まったく飲むことができない様子なら、医師や看護師に報告します。
「見える化」を取り入れることで、介護スタッフの誰もが水分不足や体調の変化という問題に気づき、水分補給やオンコールなどの行動を起こせるようになるのです。

意外?水分補給目的ならコーヒー、緑茶もOK

水分補給目的ならコーヒー、緑茶もOK

皆さんは、「コーヒーや緑茶は水分補給にならない」と聞いたことはありませんか?
コーヒーや緑茶にはカフェインが含まれており、カフェインには利尿作用(尿量を増加させる効果)があることが分かっています。
よってコーヒーや緑茶は飲んだ分より多く尿が出てしまい脱水になる恐れがあるため、水分補給にならない、と考えられていました。
しかし、ご高齢の方でもコーヒーがお好きな方は意外と多いものです。
現に、筆者の母はコーヒーが大好きでした。
では、カフェインを含む飲み物は、本当に水分補給に不適切なのでしょうか。
日本コカ・コーラが運営するサイト「飲料アカデミー」でも触れられましたが、米国医学研究所(IOM2)が発表したガイドライン(2005年)によると、日常的にカフェインを摂取している人には耐性があるため、尿量増加は認められず、コーヒーも水分補給になると述べています。
海外のデータではありますが、緑茶を飲む習慣がある日本人にも、この結果は適用されると考えられます。
よって発熱などの脱水傾向がなく、医師からカフェイン摂取を控えるよう指導がない場合には、ときには、お好きな飲み物で水分補給しても良い、と考えます。

「ちょこちょこ飲み」は高齢者の適切な水分補給方法

厚生労働省が10年以上行っている「健康のため水を飲もう」推進運動では、1日1.2ℓの水分摂取を推奨しています。
今回の記事で解説したように、ご高齢の方が1.2ℓもの水分を摂取するのは、意識しなければ非常に難しいです。
施設入居者さんが飲み物を常備する理由は、言い換えればご高齢の方に適切な水分補給方法でもあります。
「お好きな飲料」の「ちょこちょこ飲み」でお年寄りを水分不足から守りましょう!

参考:
野溝明子:看護師・介護士が知っておきたい高齢者の解剖生理学.秀和システム,東京,2014,pp.12-13
コカ・コーラサイト 飲料アカデミー(2018年1月27日引用)
厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進運動(2018年1月24日引用)

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