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  • 桑原

    公開日: 2021年06月24日
  • 先生のお話

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HIVはコントロールできる病気に。不治の病はどうして治療可能になったのか

1990年代から世間を騒がせ、かかったら死に直面するように思われていたHIVウイルス感染は医療の進歩により、コントロールが可能になりました。
この不治の病がどうして治療可能になったのか、現在行われている治療や予防法についてわかりやすく解説します。

不治の病=余命わずかではない HIV治療の今

そもそもHIVウイルスとは?感染すると体の免疫システムを侵していく病気

HIVウイルス感染の症状

そもそもHIVウイルスとは、どのように体の免疫システムに影響するものなのでしょうか。
また、HIVウイルス感染に関連して起こるAIDSとはどのようなものなのか解説します。

●HIVウイルスって何?ヒトの免疫システムをゆっくりと侵すウイルス感染症

HIV(Human Immunodeficiency Virus)は、ヒトの免疫システムを攻撃するウイルスです。
HIVウイルスに感染すると2~4週間は風邪のような症状が出た後、何の症状も出現しない時期があり、その間に身体の中ではHIVウイルスが免疫機能を徐々に攻撃し、最終的には免疫機能がほとんど機能しなくなります。
つまり、HIVウイルスに感染した場合、治療を行わないとAIDS(Acquired Immunodeficiency Syndrome)に至り、普段であれば感染しても防げるような細菌やウイルスでも死に至ります。

●HIVウイルス感染から起こる症状はどのようなものがあるのか

ではここで、HIVウイルスに感染した場合、起こりうる症状にはどのようなものがあるのかお話ししましょう。
まずは先ほどもお話しした感染後2~4週間には風邪のような症状が出るといわれており、起こりうる症状は以下のようになります。

  • ○熱
  • ○寒気
  • ○湿疹
  • ○寝汗
  • ○筋肉痛
  • ○喉の痛み
  • ○倦怠感
  • ○口内炎

などが主な症状だといわれています。
症状から見てもわかるように、HIVウイルスに特徴的な症状ではなく、風邪に似た症状が起こるために一見してわからず、これらの症状があるからといってHIVに感染したとは証明できません。
また、免疫機能の破壊が進行すると、めったに人体に影響を及ぼすことのないカビや細菌、ウイルス、寄生虫などに対しても免疫機能による防御が効かなくなります。

最新のHIVウイルス感染への治療方法。不治の病から上手に付き合っていく病気へ

自宅で簡単にHIV検査ができる郵送検査キット

以前は不治の病だといわれたHIVウイルス感染も、AIDSの発症を遅らせるといった方法で、うまくコントロールできる病気となっています。

●HIVウイルスは感染すると一生体からなくならないが、AIDSになる前にわかれば予防できる

ではHIVウイルスに感染すると、死に直結するのでしょうか。
以前は薬や治療法がなく、HIVウイルスに感染すると2~15年の歳月を経て、AIDSを発症して死に至っていましたが、今はHIVウイルスが増えないようにする薬が開発され、HIVウイルスを保有したまま寿命を延長できるようになりました。
つまり、AIDSを発症しないように免疫機能の低下の進行をできるだけ遅らせることができるようになったのです。
そのため、AIDSに至る前にHIV感染がわかれば、薬を生涯服用する必要はありますが、AIDSを発症することはないといわれています。
しかし、AIDSになって何の治療も行わないでいると、3年以上生き延びることができないといわれています。

●近年、重要なのは慢性期に起こるHIVウイルス感染合併症のコントロール

HIVウイルス感染への薬剤や医療の進歩により、継続的な投薬は必要なものの、HIVウイルス感染の生命予後は向上してきています。
しかし治療薬の副作用や免疫機能の低下により、骨、心臓や腎臓にかかる負荷によって引き起こされる併存疾患が新たな課題にもなっています。
2020年6月の世界保健機関(WHO)の発表によりますと、世界185の国でHIVウイルス感染に対する治療を受けることができ、世界のHIVと生きる人々の99%はすでに治療が行われています

HIVウイルスに感染しないために。感染経路、予防法も知っておこう

HIVウイルスに感染しないために。感染経路、予防法も知っておこう

HIVウイルスは毎年1,000人ほどの感染が確認されています。
ウイルスは実際には目に見えないものですが、感染の経路や予防法についてお話ししましょう。

●HIVウイルスの感染経路は体液を介する接触感染

HIVウイルスは血液や精液などの体液を介して人に感染します。

  • ○性交渉による感染
  • ○覚せい剤などの薬を注射器などで回し打ちをしたことによる感染
  • ○感染した母から子への感染

が主な感染経路として挙げられます。
輸血による感染を心配される方も多いようですが、輸血に使われる血液は処理済みなのでHIVウイルスが混入されている心配はありません。

●HIVウイルスに感染しないための予防と早期発見の重要性

HIVウイルスの感染経路は限られているため、体液への接触に留意することが最も重要です。

  • ○不特定多数との性交渉は避ける
  • ○性交渉の際にはコンドームを使用する
  • ○血液や体液は素手で触らない(使い捨て手袋などを使用)
  • ○HIVウイルスに感染している母親はきちんと薬を服用し、医師に相談する
    (母子感染後の早期対処、授乳はしないなどの指導が必要)

また最も重要なのは、デリケートな問題であるHIVウイルス感染に対する検査を容易に受けられるということを知っておくことです。
最近では、検査キットを郵送する形での検査も行うことが可能ですので、早期に治療を行うためにも心配な場合には検査を受けましょう。

HIVウイルス感染は予防と早期の治療の開始と継続が重要

HIVウイルス感染は早期の治療の開始でコントロール可能

HIVウイルス感染は、昔はかかると死に直結すると恐れられていた病気の一つでした。
しかし、医学の進歩により早期に治療を始めることでHIVウイルス感染の末期ともいえるAIDSに至らずに慢性疾患としてコントロール可能な疾患となりました。
しかしコントロールするためには何よりも早期の治療開始が重要な鍵となります。
合わせて感染しないように予防を徹底することが最も重要です。

参考:
Centers for Disease Control and Prevention HIV(2021年5月11日引用)
World Health Organization HIV/AIDS(2021年5月11日引用)
北海道HIV/AIDS情報 北海道大学病院HIV診療支援センター HIVとエイズについて(2021年5月11日引用)

  • 執筆者

    桑原

  • 1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
    その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。

    保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士

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