新型コロナウイルスワクチンの変異株、デルタ株の感染力とは?ワクチンの関係と日本の水際対策について解説
新型コロナウイルスが依然猛威をふるっていますが、最近では変異株と呼ばれるウイルスの遺伝子の一部が変化したものも流行しています。
なかでもデルタ変異株と呼ばれるものが拡大し、さらに世間を騒がせていますが、デルタ変異株とは一体、どのようなものなのでしょうか。
感染力やその症状の異なる点、日本ではデルタ変異株に対してどのような水際対策を行っているのか、また筆者の住むアメリカではどのような対策が推奨されているのかお話しすることにしましょう。
目次
デルタ変異株は従来の新型コロナウイルスとどう違う?症状に違いはあるの?
新型コロナウイルスの変異株であるデルタ変異株は、通常のものとくらべて症状やほかに違いがあるのでしょうか。
●デルタ変異株のもっとも異なる点は感染力と重症化
2019年終盤より世界中にまん延している新型コロナウイルス感染症は、2021年3月にインドでの爆発的なデルタ変異株への感染者数の増加を認め、その後デルタ株は世界中に広がりを見せています。
デルタ変異株は新型コロナウイルスの一種ですが、その感染率と新型コロナウイルス感染症に感染した際に起こる重症化率が通常のものよりも高い傾向にあることがわかっています。
●デルタ変異株は従来の新型コロナウイルス感染症とくらべて症状に違いはない
デルタ変異株が引き起こす感染症状は、従来の新型コロナウイルス感染症の症状とは大きな差はないといわれています。
つまり風邪のような症状が引き起こされ、発熱や呼吸苦、咳、たん、倦怠感、嗅覚や味覚の障害などさまざまな症状を引き起こします。
そのため症状だけでは、従来の新型コロナウイルス感染症によるものなのか、デルタ変異株に感染しているのかは知ることは困難です。
デルタ変異株の感染力は従来の新型コロナウイルスよりも強力。対抗措置は?
ではデルタ変異株の感染力は一体どの程度なのか、最も有効な予防手段とは一体なんでしょうか。
●デルタ変異株の感染力は通常の新型コロナウイルスの約2倍
アメリカの疾病管理センター(CDC)は、デルタ変異株の感染力は非常に高く、通常の新型コロナウイルスの約2倍にも及んでいるとしています。
ワクチン接種者でデルタ変異株にかかっている人の場合でも、人から人への感染は起こりえます。
従来は、ワクチン接種済の人はワクチン未接種の人と比較して、体内で生成される新型コロナウイルスの数は少なかったのですが、このデルタ変異株の場合はワクチン未接種の人と同じレベルのウイルスが確認されています。
しかし、ワクチン接種済の人はワクチン未接種の人とくらべると、体内で生成されるウイルス量はデルタ変異株への感染であっても早く減少するため、感染期間が短くてすむということが示唆されています。
●重症化に陥りやすいデルタ変異株の予防策はワクチン
デルタ変異株は重症化の確率が、従来の新型コロナウイルスよりも非常に高いといわれています。
アメリカの疾病管理センターはデルタ変異株の感染による重症化の予防には、ワクチンの接種が非常に重要であるといっており、ワクチン未接種の人はデルタ変異株の感染に注意が必要だといわれています。
すでに2回の新型コロナウイルスに対するワクチン接種を終えている人に関しては、デルタ変異株に対しても有効であることが示唆されています。
ワクチンの接種後は、これらの新型コロナウイルス、デルタ変異株に感染しないというわけではなく、感染しても重症化を防ぐことができます。
そのため、デルタ変異株が急増しているアメリカでは、再びマスク装着の義務化や必要性が叫ばれています。
日本のデルタ変異株に対する水際対策とは?アメリカでも広がり恐れられている
ではそのようなデルタ変異株に対して日本ではどのような水際対策を行っているのか、日本でのデルタ変異株の感染状況についてはどうなのかについてお話ししましょう。
●日本へのデルタ変異株の流行地域からの渡航は原則強制隔離3日以上
現在の日本の水際対策ではデルタ変異株が流行しているとされた諸外国44地域からの入国には、3日間の政府指定ホテルでの強制隔離を行っています。
強制隔離期間は外出が制限され、また退出前にも新型コロナウイルスのPCR検査が必要となります。
一部のデルタ変異株が非常に流行していると認定された地域からの入国には、そのデルタ株の流行状況により、10日間、6日間の検疫期間を設けられています。
対象地域は、10日間の検疫対象地域が7カ国、6日間の地域が8カ国となっており、それぞれの検疫期間後も、入国後14日までは自粛期間とされています。
その期間、政府より定期的に位置情報の確認連絡が来ることになっており、時にテレビ電話を要求され、テレビ電話や位置情報の提供に同意する誓約書を入国時に提出することになっています。
また基本的には日本国籍を持つ人のみが入国可能であり、日本国籍を持つ人の配偶者で外国籍を所有している人などは滞在ビザが必要となります。
●日本におけるデルタ変異株の感染は全国に広がりつつある。アメリカでのデルタ変異株の状況と対策とは?
日本でもすでにデルタ変異株の発生が認められており、全国に広がりつつあります。
2021年7月31日の国立感染症研究所の報告ではすでに34都道府県でデルタ変異株の発生が認められています。
また同研究所によりますとデルタ変異株の陽性率は約67%となっており、猛威をふるっています。
デルタ変異株の感染患者さんの状況は刻々と変化していますが、アメリカではワクチン未接種者、またワクチン接種ができない子どもへの感染拡大が認められています。
アメリカでのワクチン接種率は、約50%(2021年8月15日現在)といわれており、さらに若い世代へのワクチンの啓蒙活動を行っていますが、ワクチンの接種率のさらなる向上がこの変異株の沈静には重要となりそうです。
また新たな変異株、ラムダ株もデルタ変異株と同様の強い感染力を持っているとされており、世界の至る所で確認されているため、新型コロナウイルスとの我々の戦いは長丁場になりそうな勢いです。
新型コロナウイルスのデルタ変異株は感染しやすく、全世界、日本でも感染拡大
皆さんも日々ニュースなどで新型コロナウイルスのデルタ変異株に対する報道をよく耳にされることでしょう。
デルタ変異株は高い感染力を持ち、全世界に広がりつつあり、私たちの生活を脅かしています。
今回はデルタ変異株について解説し、日本での状況もあわせてご紹介しました。
日本でもさまざまな水際対策を講じていますが、全国的に広がっていることは事実であり、ワクチン接種による集団免疫と個人の感染防御が重要となります。
参考:
Jamie Lopez Bernal et al.: Effectiveness of Covid-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant. The New England Journal of Medicine, 2021.(2021年8月17日引用)
Centers for Disease Control and Prevention (CDC) Delta Variant:What We Know About the Science(2021年8月17日引用)
厚生労働省 B.1.617 系統の変異株(デルタ株等)に対する水際強化措置(変異株 B.1.617 指定国・地域について)(要旨) (2021年8月17日引用)
国立感染症研究所 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について(第12報)(2021年8月17日引用)
国立感染症研究所 新型コロナウイルス感染症の直近の感染状況等(2021年8月11日現在)(2021年8月17日引用)
Mayo Clinic U.S. COVID-19 vaccine tracker: See your state’s progress(2021年8月17日引用)
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執筆者
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1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。
保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士