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呼吸器疾患

家庭でもできる小児喘息の呼吸リハビリテーション:本人とご家族のために

日本小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017によりますと、日本の学童期の子どものうち、2.5〜10%が気管支喘息をもっているといわれています。
喘息は気管支に炎症を起こし、せき・たん、ゼーゼーヒューヒューという音が聞こえる発作が現れ、息が吐けなくなる気管支の病気です。
今回は、小児喘息の呼吸リハビリテーションについて、ご家族への指導を中心にお話ししていきましょう。

小児喘息と診断されたら:本人だけでなく家族も呼吸法を知っておこう

喘息とは息苦しくなったり、せきやたんがでやすくなる病気で、運動をすることにより息苦しさはさらにひどく感じます。
発作時にひどくなると、話の途中で息つぎが必要となったり、食欲の低下、おう吐、興奮状態などに陥ることがあります。
発作が起きたら、呼吸法の指導やたんの排出を促すことが最も適した治療となります。
以下では呼吸の指導方法や、たんの排出を促す方法にについてお伝えしていきますが、乳幼児にはこれらの処置が困難な場合もありますので、できる限りで構いません。

1)腹式呼吸と口すぼめ呼吸の練習法!ティッシュペーパーを吹き飛ばせ

喘息は腹式呼吸・口すぼめ呼吸などで、息をしっかりと吐くことが重要です。
しかし子どもは、大人のようにはスムーズにいかないため、腹式呼吸の動きを大人がアシストする必要があります。

  • ●腹式呼吸:おなかに手をあてて息を吸うときに軽く腹部を押す。(食事の直後や胃の上を押さないように)
  • ●口すぼめ呼吸:口笛を吹くように、もしくは細く裂いたティッシュペーパーを吹き飛ばす

ようにする、と伝えるとわかりやすいでしょう。
特に口すぼめ呼吸の場合には、笛や吹き流しなどのおもちゃをうまく使うといいでしょう。

2)たんの排出もパパママのお手伝いでスッキリ!

喘息発作のときには、力強く息を吐きだすことができず、たんをだせなくなります。
鎖骨の下あたりを前後から胸を挟むように手をあて、息を吐くときに合わせて、胸側にあてた手を軽くおなかの方へ押し下げるように呼吸を介助します。
息をしっかり吐けると、大きく息が吸えるために肺や気管支の中のたんが動かされて、そのあとハーっと声を出しながら息をはくと、たんを出すことができます。
呼吸の介助ポイントは力強く押しすぎないこと、呼吸の動きに合わせておこないましょう。
また水分をしっかりと取らないと、たんの粘度が高くなり出しにくくなります。
水分の摂取も忘れずにうながしましょう。

小児喘息の治療には運動が大切!運動することで得られる2つの効果

喘息は運動をすると息が切れたり、せきがでたりするために運動を敬遠してしまう傾向があります。
発作時の運動は息苦しさが増し、酸素の取り入れが悪くなるため避けたほうがいいですが、発作がでていないときには、必ずしもこの限りではありません。

1)どんな運動をすると喘息発作が起こる?運動すると息苦しさは治る?!

小児喘息は運動をすると、「運動誘発性(激しい運動によって起こる発作)」の喘息を起こすことがあります。
運動誘発性喘息を起こさないために、

  • ●薬の飲み忘れなどに気をつけ、体調管理をきちんと行う。
  • ●冷たい空気を吸うと発作が誘発されるので、マスクなどを使用する。
  • ●急激に運動を始めずに準備運動をしっかりと行う。

などに心がけることが大切です。
運動をすることで苦しくなると、今後の運動習慣にも響くため、十分注意しましょう。
体は無理のない運動をしていくことで、運動に対する許容範囲が広くなります。
これは、もともと運動習慣がない人が走るとすぐに息切れしますが、もともと運動をしている人はそれほどでもない、というのと同じです。
つまり普段から運動習慣をつけておけば、息苦しく感じにくくなるというわけです。

2)柔軟体操で首・肩・胸の筋肉をほぐすと呼吸も楽になる!

小児喘息のようにせきが頻繁にでたり、息苦しさがでると、肩や首、腰の筋肉なども使って息をしようとします。
そうすると筋肉も緊張した状態が続き疲労するため、胸郭の動きを制限されてしまうといった悪循環を起こしてしまいます。
そのようなときには胸や首、肩、体幹のストレッチなどを行い、筋肉のコリをほぐし胸郭の柔軟性を保持することで、呼吸も楽になります。
以下では、筋肉をほぐす効果のある体操をご紹介します。

  • ●肩の上げ下げ:両肩を耳につけるようなイメージで、肩をすくめたり力を抜いて落したりします。
  • ●胸のストレッチ:胸を張るようにそらしたり、逆に背中を丸めたりします。
    そらす際に、首も一緒にそらすと首のストレッチも一緒に行えます。
  • ●腕の上げ下げ:のびをするように両腕を上に挙げ、頭の上で両手を組み、裏返して手のひらを天井にくっつけるように伸ばします。
  • ●体の前屈と左右への側屈・回旋運動:床に両手をつけるように前屈したら、今度は両手を頭の後ろで組んで体を左右に倒し、体のひねり運動も行います。

いずれの体操も息を吐きながらストレッチすると楽に行えます。

喘息についての学びも大切!小児喘息にも患者教育が必要!

子どもにとって自分の病気を理解することは、とても難しいことです。
しかし学童期になると、病気に対する理解もすすみ、やってはいけないこと、やらなければならないことなどの説明も、聞いてくれるようになります。
「子どもだから病気のことはわからない」と考えず、お子さんにも病気について話していくことが必要です。

1)できることから始めよう!喘息発作時は近くの大人や友達に助けてと言おう

学童期になると親がそばにいない「学校」という生活の場ができます。
しかし学校には、喘息を起こしやすくするもの(ホコリや運動、風邪の菌など)もたくさんあり、急に気分が悪くなることもあります。
あらかじめ担任の先生やお友達に話しておき、発作の際にはそばにいる人に息が苦しいと訴えることが大切です。
息苦しさを我慢すると体の中の酸素がどんどん足りなくなり、重症化することもあります。
またかかりつけのお医者さんにも最近の体調や学校での様子、息苦しくなったことがあるかないかなど、伝えられるようにしましょう。

2)君も知ろう!普段飲んでいるお薬や最近の体調など、パパママ任せではダメ!

小児喘息は長く付き合う必要がある病気です。
以下のことに気をつけ、喘息とうまく付き合っていきましょう。

  • ●薬をきちんと使う:息苦しくなったら、吸入薬などを使用する。
  • ●部屋をキレイにする:雑菌の繁殖を防ぐ。
  • ●運動などで体力をつける:息切れがしにくい体をつくる
  • ●風邪をひかないようにする:うがい・手洗いをする、マスクの装着、インフルエンザワクチン接種など、感染症の予防をする。

お子さんでも、気をつけられることがたくさんあるのがわかるでしょうか。
またこれらは、お子さんの協力なしにはできないことばかりですから、この機会にお子さんにも病気についてきちんと説明することが大切です。

まとめ

小児喘息の6〜8割は、大人になると症状がでなくなると言われていますが、一部のお子さんは大人になっても保持していることがあります。
しかしうまく付き合うことで大きな発作などを起こさず、日常生活を過ごすことも可能ですし、運動ももちろん可能です。
大切なのは病気を理解し、喘息発作を誘発する風邪などをひかないように、うがい・手洗い・インフルエンザワクチン摂取などを行うことです。

参考:
小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン 日本小児アレルギー学会 2017 協和企画 PDF版はこちらからダウンロードできます。(2018年2月13日引用)
日本呼吸器学会 呼吸器の病気 気管支ぜんそく(2018年2月13日引用)
浜崎雄平:
小児喘息 急性発作対応、長期管理、吸入用具取り扱いについてのポイント アレルギー 59(5):514−520. ,2010
笠原剛敏:
喘息の呼吸リハビリテーション 順天堂医学54(4)550−553, 2000
独立行政法人 環境再生保全機構 ぜんそく情報館(2018年2月13日引用)
成人喘息の疫学診断、治療と保健指導、患者教育 厚生労働省(2018年2月13日引用)

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