サービス付き高齢者住宅を選ぶポイント~住戸面積・駅からの距離・食事の提供・併設施設・入居率
いま、特別養護老人ホームや有料老人ホームに代わる新しい住まいとして、サービス付き高齢者住宅が増えています。
高齢者住宅推進機構(2018)の調査によると、2011年には全国で3000件ほどだったものが、2018年1月時点においては22万件超にも増えていることがわかります。
今回は、サービス付き高齢者住宅への入居を検討されている方に向けて、確認すべき項目や選ぶポイントについて具体的にお伝えしていきたいと思います。
目次
住戸面積の確認~生活するうえで十分な広さが確保されているか
サービス付き高齢者住宅の住戸面積は、25㎡以上と定められています。
住戸面積とは、1人あたりの床面積のことをいいます。
ちなみにこの住戸面積、ユニット型特別養護老人ホームでは基準が10.65㎡、有料老人ホームにおいては13㎡と定められており、いかにサービス付き高齢者住宅がゆったりとしているのかが、おわかりいただけるのではないでしょうか。
ただしこの基準については、「特例措置」というものが設けられており、食堂や台所、居間など、高齢者が共同で利用するための部分が十分であると判断される場合については、18㎡でも構わないことになっています。
これにちなみ、厚生労働省のデータでは住戸面積を25㎡以上確保している物件は30%にも満たないことがわかっています。
平均面積は23.0㎡で、18 ㎡以上 20 ㎡未満の物件については 63.2%であることがわかっています。
ただし物件のなかには、60㎡以上の住戸面積を確保しているものもあり、物件によっては3倍から4倍程度の差があるのです。
住戸面積が広ければいいというものではありませんが、サービス付き高齢者住宅を選ぶにあたっては、必ずチェックしておくべき項目だといえます。
駅からの距離~徒歩何分か、周りの環境はどうか
サービス付き高齢者住宅を選ぶ基準の一つとして、駅からの距離も気になる項目といえるのではないでしょうか。
高齢者の住まいになりますし、また家族などが尋ねてくることを考えても、移動に便利なところを優先するべきでしょう。
実際の駅の距離を調べてみると、駅前で徒歩1分という物件から、駅から徒歩40分というものもあります。
もちろん電車だけではなく、バスなどを利用できる場合もありますが、どのような場所にあるのか、立地条件も確認しておく必要があります。
なかにはとても不便な場所に建っていることも少なくありません。
生活をする拠点が不便な場所では、出かけることをおっくうにさせ、外出する機会を減らすことになってしまうかもしれません。
サービス付き高齢者住宅は、老人ホームなどとくらべて自由度が高いことがメリットとして挙げられますが、これではそのメリットを生かすことができなくなってしまいます。
「いつまでも元気で自分の足で歩いて生活がしたい」という目標を持っている方ならなおさら、駅やバス停まで5分圏内の場所を選ぶべきでしょう。
食事の提供~厨房で作られているか、毎食の提供はあるか
サービス付き高齢者住宅のサービス内容を確認するうえで、抜けてしまうのがこの食事に関する部分です。
食事については、多くの住宅は独自に厨房を備えており、できたての食事を提供することができます。
食事をアピールポイントにしているところも少なくありませんが、なかには厨房を有しておらず、近隣からの配食に頼っているところもあります。
もちろん物件内にはキッチンがあり、自炊するために食事サービスは受けないという方もたくさんいらっしゃいます。
しかし、長く暮らすことを希望されているなら、将来的に食事の提供を受けなければならない状況を考えておかなければなりません。
今後のことを見据えて、おいしい食事を提供してくれるところを選ぶべきでしょう。
どのような食事を提供されているかについても、確認しておくことをおすすめします。
また、基本的には3食を休まずに提供されますが、なかには朝食と夕食の2食のみというところも存在します。
自炊ができる間はいいのかもしれませんが、もしもできなくなった場合、その1食をどう補うか、その時点で考えなければなりません。
たとえば、配食やヘルパーによる調理などの外部サービスを受けるとなると、そのぶん費用もかさんでしまうことになります。
こうした外部サービスを受け続けることは、精神的にもとても負担になることですから、食事の内容や回数についても、よく確認しておく必要があるといえるでしょう。
併設施設~どのような介護サービスが併設されているか
サービス付き高齢者住宅の多くは、住宅のほかにも外部に介護サービスを展開しているところがほとんどです。
入居者にその外部サービスを勧めるところもあるようですが、なにかの際に力になってくれる介護サービスがあるというのは、安心できる材料でもあります。
外部で運営しているものの多くは、訪問介護(ヘルパー)、デイサービス、居宅介護支援事業所などです。
なかには訪問看護や小規模多機能型施設、診療所、配食サービスなども運営しているところがあります。
今後の生活を考えたときには、そのようなサービスがすぐに確保できることはプラスに考えていいのではないかと思います。
逆に、併設施設をまったく持たない(住宅のみ)というところも存在します。
そのような場合、近隣の介護サービスは充実しているのかどうか、確認しておくことが必要です。
もしもその地域に、介護サービスが不足している状況だった場合、なにかあった際にもすぐにサービスを受けることができない可能性があります。
たとえば骨折などのけがで、一時的に動けない場合でも介護サービスは必要になりますので、いざというときに頼れるサービスがあるかどうかは、しっかりとチェックしておきたいポイントです。
入居率~経営は安定しているか
報道によりますと、サービス付き高齢者住宅のなかには、入居者を集めることができずに廃業している物件が出始めています。
せっかく広さや利便性などを考えて入居したにも関わらず、廃業されてしまったのでは、経済的にも精神的にも大きな負担となってしまいます。
このような事態を避けるためには、各物件の入居率がどの程度か確認しておくことが必要です。
2013年のサービス付き高齢者向け住宅等の実態に関する調査研究によりますと、入居開始から1年以上経過した物件の平均入居率は86.9%。
特別養護老人ホームにおいては95%を超えているところが多くありますから、これがどれだけ低い数字で経営に苦戦しているのかが、おわかりいただけるのではないかと思います。
そのなかでも入居率80%以上あるのが約53%で、100%は23.1%となっています。
この入居率については、公開している物件と公開していない物件があります。
インターネットでも確認することができる物件もありますから、ぜひ調べてみてください。
まとめ
サービス付き高齢者向け住宅を選ぶにあたって、今回ご紹介した5つの情報、
- 「住戸面積」
- 「駅からの距離」
- 「食事の提供」
- 「併設施設」
- 「入居率」
これらは意外に見落としがちなチェック項目です。
どれも、快適な生活を送るためには不可欠といえる大事な情報になりますから、必ず確認するようにしてください。
なお価格や職員配置、サービスについては、こちらの記事「サービス付き高齢者向け住宅~トラブルの内容から学ぶ上手な選び方」にてお伝えしておりますので参考にしてください。
参考:
一般社団法人 高齢者住宅推進機構 サービス付き高齢者向け住宅登録状況(2018年2月20日引用)
財団法人高齢者住宅財団 サービス付き高齢者向け住宅等の実態に関する調査研究(2018年2月20日引用)
NHK クローズアップ現代 2017年3月16日(木)放送(2018年2月20日引用)