医療的ケアが必要な方が入所できる介護医療院にかかる費用
介護療養型医療施設の廃止に伴い、医療的な役割と介護サービスの役割も果たす介護医療院が2018年に創設されました。
従来の介護療養型医療施設や老人保健施設と異なり、介護医療院は長期的に医療と介護を受けられます。
この記事では、介護医療院に入所するときの費用や入所してからかかる費用の目安を紹介します。
介護医療院の型の種類と居室タイプ
介護医療院は、従来の介護療養型医療施設と異なり、医療を提供し最期まで生活の場を提供する施設です。
●介護医療院の種類
介護保険の介護医療院には、疾患の重篤度によりⅠ型とⅡ型に分かれています。
1)介護医療院Ⅰ型
介護医療院Ⅰ型では、サービスⅠが介護療養型医療施設の療養機能強化型Aに相当し、サービスⅡとⅢは療養機能強化型Bに相当しています。
Ⅰ型では介護療養型医療施設と同等の医療が受けられます。
介護医療院のサービス費はその施設に入院している患者の割合と患者自身の状態によって異なります。
入所者の状態 | サービス費Ⅰ (療養機能強化型A相当) |
サービス費ⅡとⅢ (療養機能強化型B相当) |
---|---|---|
重篤な身体疾患を持つ方や 身体合併症を持つ認知高齢者 |
50%以上 | 50%以上 |
医療処置が必要な方 | 50%以上 | 30%以上 |
ターミナルケアの方 | 10%以上 | 5%以上 |
上記の医療的処置が必要な方とは、喀痰吸引や経管栄養、インスリン注射などの処置が必要な方です。
介護医療院Ⅰの重篤な身体疾患を持つ方や身体合併症がある認知症高齢者とは、具体的に次の疾患を持つ方です。
重篤な身体疾患を持つ方 | 重度の慢性心不全、慢性腎不全で週に2日以上の透析が必要、肝機能障害、著しい摂食機能障害で誤嚥を起こしている人 |
---|---|
身体合併症がある認知症高齢者 | 悪性腫瘍、パーキンソン病、多系統萎縮症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、悪性リウマチ、後縦靭帯骨化症、脊髄小脳変性症、黄色靱帯骨化症など |
介護医療院には、介護保険で決められた医療や介護の専門職が常駐しているため、安心して療養しながら日常の介護も受けられます。
<介護保険で定められた人員基準>
医師 | 入所者48人に1人 施設で3人以上 |
---|---|
看護職員 | 入所者6人に対し1人以上 |
介護職員 | 入所者6人につき1人以上 |
それ以外にも理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職や薬剤師、栄養士、放射線技師がいて、診察室や処置室、機能訓練室、臨床検査室、放射線室などが整っています。
2)介護医療院Ⅱ型
介護医療院Ⅱ型は、病状が比較的安定した方で介護老人保健施設に相当する医療と介護を長期にわたり受けられます。
<介護保険で定められた人員基準>
医師 | 入所者100人に対し1人以上 |
---|---|
看護職員と介護職員 | 入所者3人に対して1人 看護職員が2人に対し介護職員が7人程度 |
施設の設備は、介護医療院Ⅰ型と同様です。
●居室タイプ
介護医療院の居室タイプには、従来型個室と多床室、ユニット型個室、ユニット型個室的多床室と分かれています。
1)従来型個室
1つの居室にシングルベッドやタンスなどが置かれ、1名の入居者が入所できる一般的な個室です。
2)多床室
1部屋に2~4人の人が同室で生活する部屋です。
1人当たりの面積が決められて、それぞれのスペースにベッドや棚などが設置されカーテンやパーティションなどで仕切られています。
3)ユニット型個室
10人ほどのグループを1ユニットとし、複数のユニットがあり、各ユニットごとに食事や浴室などを共同で利用します。
居室は1ユニットのフロアに10個ほどの個室があります。
個室の広さは、8㎡の従来型個室に対しユニット型は10㎡以上と定められています。
4)ユニット型個室的多床室
フロアをパーティションやカーテンなどで仕切って、4人ほどが1部屋で生活します。
それぞれの居室にシングルベッドや棚などが設置されています。
居室タイプや介護医療院の型、介護度で異なる費用
介護医療院の介護保険でかかる基本料金は全国どこでも同じで、それ以外に居住費、食事代、日常生活費がかかります。
●1日の介護保険の基本料金の自己負担分(1割負担の入居者、1単位10円で計算)
居室タイプ | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
介護医療院Ⅰ型 | サ|ビス費Ⅰ | 従来型個室 | 694 | 802 | 1,035 | 1,134 | 1,223 |
多床室 | 803 | 911 | 1,144 | 1,243 | 1,332 | ||
ユニット型個室 | 820 | 928 | 1,161 | 1,260 | 1,349 | ||
ユニット型個室的多床室 | 820 | 928 | 1,161 | 1,260 | 1,349 | ||
サ|ビス費Ⅱ | 従来型個室 | 684 | 790 | 1,020 | 1,117 | 1,205 | |
多床室 | 791 | 898 | 1,127 | 1,224 | 1,312 | ||
ユニット型個室 | 810 | 916 | 1,146 | 1,243 | 1,331 | ||
ユニット型個室的多床室 | 810 | 916 | 1,146 | 1,243 | 1,331 | ||
サ|ビス費Ⅲ | 従来型個室 | 668 | 774 | 1,004 | 1,101 | 1,189 | |
多床室 | 775 | 882 | 1,111 | 1,208 | 1,296 | ||
介護医療院Ⅱ型 | サ|ビス費Ⅰ | 従来型個室 | 649 | 743 | 947 | 1,034 | 1,112 |
多床室 | 758 | 852 | 1,056 | 1,143 | 1,221 | ||
ユニット型個室 | 819 | 919 | 1,135 | 1,227 | 1,310 | ||
サ|ビス費Ⅱ | 従来型個室 | 633 | 727 | 931 | 1,018 | 1,096 | |
多床室 | 742 | 836 | 1,040 | 1,127 | 1,205 | ||
ユニット型個室的多床室 | 819 | 919 | 1,135 | 1,227 | 1,310 | ||
サ|ビス費Ⅲ | 従来型個室 | 622 | 716 | 920 | 1,007 | 1,085 | |
多床室 | 731 | 825 | 1,029 | 1,116 | 1,194 |
※1日当たりの費用を示したもので単位は単位
(2020年の介護報酬算出表を参照)
重い疾患や合併症の認知症高齢者が入所できるⅠ型は、比較的軽い入所者のⅡ型より自己負担分が高いです。
また従来型個室と比較して、ユニット型個室のほうは居室が広く料金が高いですが、同じユニットタイプの個室と個室的多床室は基本料金が変わりません。
基本料金以外に、居住費や食費、日常生活費などが別途必要です。
●介護医療院の具体的な費用を算出
介護医療院は、介護保険が適用されている施設なので入所時の一時金はありません。
月額費用のおおよその目安は、8万~20万円です。
たとえば、要介護3の方が入所した場合のおおよその月額費用を算出してみましょう。
<介護医療院Ⅰ型、要介護3の重篤な疾患を持つ入所者>(※1単位=10円とする)
基本料金
- ○従来型個室 1,035円/日
- ○多床室 1,144円/日
- ○ユニット型個室やユニット型個室的多床室1,161円/日
加算
- ○栄養マネジメント加算 14単位/日(1割14円)
- ○緊急時施設診療費 2回 511単位×2=1,022単位(1割1,022円)
国の基準で定められた食費や居住費
- ○食費 1,380円/日
- ○従来型個室 1,640円/日
- ○多床室 370円/日
- ○ユニット型個室 1,970円/日
- ○ユニット型個室的多床室 1,640円/日
その他
- ○光熱費やおむつ代、ジュース代などの日常生活費 2万円
1)従来型個室
基本の月額費用=(1,035+14+1,380+1,640)×30=122,070円
緊急時施設診療費加算と日常生活費を加えると総計約143,092円
2)多床室
基本の月額費用=(1,144+14+1,380+370)×30=87,240円
緊急時施設診療費加算と日常生活費を加えると総計約108,262円
3)ユニット型個室
基本の月額費用=(1,161+14+1,380+1,970)×30=135,750円
緊急時施設診療費加算と日常生活費を加えると総計約156,772円
4)ユニット型個室的多床室
基本の月額費用=(1,161+14+1,380+1,640)×30=125,850円
緊急時施設診療費加算と日常生活費を加えると総計約146,872円
介護医療院の入所費用負担を軽減する高額介護サービス費
負担限度額の段階 | 対象者 | 食費の負担限度額 | 居住費の負担限度額(1日当たりの費用) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
従来型個室 | 多床室 | ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 | ||||
生活保護受給者 | |||||||
第1段階 | 世帯全員が市民税非課税者 | 老齢福祉年金 | 300円 | 490円 | 0円 | 820円 | 490円 |
第2段階 | 年金等の年収が80万円以下 | 390円 | 490円 | 370円 | 820円 | 490円 | |
第3段階 | 年金等の年収が80万円を超える人 | 650円 | 1,310円 | 370円 | 1,310円 | 1,310円 | |
第4段階 | 市民税課税者 | 国の基準額 | 1,380円 | 1,640円 | 370円 | 1,970円 | 1,380円 |
介護医療院は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などと同じように第1~3段階の低収入の方は費用の軽減措置があります。
市民税が非課税の世帯の入所者は、居住費や食費が軽減されます。
軽減措置を受けるには、自治体に申請して「負担限度額認定」を受けなくてはなりません。
認定されると、負担限度額を超えた食費と居住費の分は介護保険から介護医療院の施設に支払われます。
たとえば、老齢福祉年金のみの受給者で要介護3の高齢者が、介護医療院Ⅰ型の多床室に入所した場合の月額費用は次の金額です。
月額費用=(1,144+14+300)×30=43,740円
それに日常生活費2万円を加えると、おおよその月額費用は63,740円です。
市民税課税者が多床室に入所すると10万円以上かかりますが、非課税者は軽減されると4万円ほど安い料金で医療サービスと介護サービスを受けられます。
医療的ケアが必要な要介護者は介護医療院で長期療養しよう
介護医療院は、今後増加すると見込まれている合併症を持つ認知症高齢者や医療的ケアが必要な方の受け皿として需要が高まると考えられます。
介護保険適用施設のため初期費用はかからず、月額費用がそれほど高くはありません。
医療的ケアが必要な方は、介護医療院に入所して長期に療養しながら介護サービスを受けましょう。