地域密着型通所介護は多くの魅力あり!普通の通所介護との違いを解説
日本は高齢化が著しく、地域でも高齢者を支える仕組みが重要だと考え、少人数制の地域密着型通所介護を新設しました。
今後の在宅介護を支える貴重な存在ですので、普通の通所介護との違いや魅力を知って、どのようなサービスか理解しておきましょう。
地域密着型通所介護とは
一般的に通所介護(デイサービス)とは、要介護状態の方ができる限り在宅で生活を続けられるように、介護保険を利用して受けられるサービスのひとつです。
施設に通いながら日常生活の介護を受けることができ、心身の状態を維持・向上させるための機能訓練を受けることも可能です。
具体的には
- ○送迎
- ○健康管理
- ○食事準備や介助
- ○入浴介助
- ○トイレ介助
- ○運動や認知機能のトレーニング など
サービスを利用する本人だけではなく、家族の休息「レスパイトケア」の役割も果たすため、普段介助を行っている支援者にとっても重要な存在です。
●一般的な通所介護との違い
もともとは、ひと月当たりの利用人数に応じて通所介護の規模が分けられていました。
- ○大規模通所介護(月750人以上)
- ○通常規模通所介護(月300人以上)
- ○小規模通所介護(月300人以内)
2016年4月の改正により同時に施設を利用できる利用者の数の上限が18人以下の施設と同じ市町村に住んでいる方のみ利用できるサービスとして、地域密着型通所介護が創設されました。
一般的な通所介護は住所による制限はありませんので、この点が大きな違いといえるでしょう。
また利用金額も規模に応じて違いがあり、規模が大きくなるほどに単位が低く自己負担が少なくなります。
要介護3で7〜8時間利用の場合(2021年4月時点)
- ○大規模:857単位
- ○通常規模:896単位
- ○地域密着型:1,028単位
1単位は10円の計算で「介護保険負担割合証」に記載されている内容に応じて1〜3割の自己負担が必要です。
ほかの地域密着型サービスでも行われていますが、運営推進会議の開催が義務付けられている点も通常との違いといえます。
運営推進会議では利用者や家族、地域の代表者などと一緒に市町村職員を招いて現状や今後について話し合い、サービスの質を高めるために意見交換や活動報告を行います。
●地域密着型通所介護の魅力
通常よりも費用が高く、市町村が限定されていることをデメリットに感じる方も多いかもしれませんが、実は多くのメリットもあります。
- ○少人数で利用者同士やスタッフとも顔なじみになりやすく安心感にもつながる
- ○施設側は少人数だと利用者の個性や状態が把握しやすく質の高い介護が提供できる
- ○同じ市町村の利用者が集うため、関係構築しやすく知り合いや仲間とも会える可能性がある
- ○地域協力が得られやすくサービスの質も高まりやすい
- ○運営推進会議などの実施でオープンな施設運営なので家族としても安心
通常規模や大規模の通所介護では、1日の利用者が20〜30名以上になり、同様にスタッフの人数も増えることでにぎやかにはなるものの、環境や人に慣れるためには時間がかかります。
一般的に、環境の変化は高齢者に強いストレスを与えるため、特に認知症のある方には負担が大きくなる可能性があります。
反対に少人数で市町村が限定されていることにより、精神的な負担が減り安心感や質の高い介護につながるため、メリットになる側面が多くなるでしょう。
大人数が苦手な方や状態をしっかり把握してもらいたい方などは、地域密着型が適しているかもしれません。
費用面に関しては、介護保険の限度額が要介護度に応じて定められているため、最大まで活用すると最終的に支払う金額は同じになります。
また、個人の状況に応じて利用時間を変更するなど、小規模であることから柔軟な対応がしやすいのも地域密着型通所介護の魅力です。
地域密着型通所介護は地域包括ケアシステムの一環
地域密着型通所介護は、その名の通り地域を支える仕組みのひとつといえ、このような取り組みは地域包括ケアシステムの一環でもあります。
●地域包括ケアシステムとは
日本は高齢化が著しく、2025年には団塊の世代が75歳以上になり、今後さらに高齢者の割合が増えることが予想されています。
人々が住み慣れた土地で生活を続けるために、状況に応じたさまざまな支援が必要になると考えられました。
そこで、より柔軟で迅速に対応ができるよう、各地域の特性を生かし主体的で自主的に対策を構築していく仕組みとして「地域包括ケアシステム」が設けられたのです。
住まい、医療、介護、予防、生活支援の5つを一体的に提供していくことを目指して、都道府県や市町村では現在も取り組みの検討と実施が行われています。
たとえば、福岡県大牟田市では人口の31%以上が65歳以上となり「認知症になっても安心して暮らせる市民協働によるネットワークづくり」を開始しました。
適切な知識を持つ人材を育成するために認知症コーディネーター養成講座を開設し、医療を含めたサポートチームを整えて、住民主体での見守り体制の構築を行うなど、さまざまな取り組みを行い地域を支えています。
●地域密着型通所介護の役割
地域包括ケアシステムとして、改めて地域密着型通所介護を考えると下記のことが役割として見えてきます。
住み慣れた地域での生活をサポート
- ○在宅生活を続けられるように心身の健康維持と予防、必要な介護を提供
- ○レスパイトケアの提供で家庭を支援し介助者をサポート
- ○家族の時間を確保することで経済活動の維持
- ○地域や個人のニーズを把握して、需要を満たすサービスの提供 など
普通の通所介護以上に、地域への貢献を重視した働きかけを行う存在だといえるでしょう。
地域密着型通所介護に今後期待されていること
介護保険サービスの中では比較的新しい仕組みでもあり、今後さらなる活躍が期待されています。
基本的には制度としての「共助」になりますが、地域との関係性構築により身近な存在が支え合う「互助」や、利用者自身が健康意識を持つ「自助」にも貢献することができるでしょう。
●2025年問題の対策として
特に2025年問題に対しては、地域を支える重要な役割を担う存在となります。
高齢者が急増すると、必然的に介護保険サービスの需要が高まることにもつながりますが、住み慣れた地域での生活を続けるためにはそれをサポートする体制が必要です。
そして、各地域ごとに課題や求められる内容には違いがあり、地域密着型通所介護には柔軟な対応が期待されるでしょう。
また介護保険サービスに対して「自分にはまだ必要ない」「そこまで衰えていない」と、要介護認定を受けた方でも抵抗を示す場合があります。
しかし、健康維持や予防の観点からもスムーズなサービス利用は重要です。
抵抗感の理由には、自身の衰えを認めたくないという気持ちもあるでしょうが、どのようなサービスかわからないという不安も強くあるでしょう。
普段から地域との交流を増やせる地域密着型通所介護は、その点でも安心感を持たれやすく、これから急増する高齢者のニーズにも応えやすいのです。
しかし、少人数制ということもあり、ひとつの施設では対応人数に限りがあるため受け皿として不十分な地域も多いでしょう。
これからは2025年に備えて、受け皿の確保や仕組みづくりで、超高齢社会に耐えられるシステム構築が大切になります。
地域密着型通所介護の特長を知って活用しよう
今回は地域密着型通所介護の魅力や普通の通所介護との違いを解説しました。
利用できる地域に制限はありますが、少人数であることで安心感があり、個人に対応した質の高い介護が提供される介護保険サービスです。
今後はさらに高齢者の割合が増える見込みで、地域を支える重要な存在として活躍が期待されるでしょう。
参考:
厚生労働省 通所介護及び療養通所介護 (参考資料)(2021年5月15日引用)
介護給付費単位数等サービスコード表(案)(令和3年4月施行版)(2021年5月15日引用)
厚生労働省 事例を通じて、我がまちの地域包括ケアを考えよう(2021年5月15日引用)
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執筆者
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総合病院に6年間勤務し、脳神経外科や整形外科のリハビリテーションを中心に、急性期・回復期・慢性期を経験。その後、介護支援専門員の資格を取得して家族と共に介護事業を設立。代表取締役であると同時に、現場では機能訓練指導員・介護職・ケアマネジャーを勤めプレイングマネージャーとして活躍。現在は、経営業務をメインに記事の監修やライターとしても活動中。
保有資格等:作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員