介護保険の基礎知識 65歳以上の介護保険料はどう決まる?いくら払う?
介護保険では65歳を境に、保険料の計算方法、支払い方法が変わります。
そのため65歳を過ぎると「金額が変わった」「二重払いでは?」といった疑問の声が多く聞かれます。
65歳以上の介護保険料のしくみについて、分かりやすく解説します。
65歳になったら、介護保険料は市町村に直接納める
まず、介護保険の保険者、被保険者を確認しておきましょう。
保険者 | 被保険者 |
---|---|
市町村と 特別区(東京23区のこと) |
■第1号被保険者(65歳以上) ■第2号被保険者(40歳以上64歳以下) |
介護保険を運営しているのは市町村なので、40歳以上の人は保険料を市町村に納めることになります。
「介護保険料を市町村に納める」のは同じですが、第1号被保険者と第2号被保険者では支払い方法に少し違いがあります。
○40歳以上64歳未満では
- 1.介護保険料を、医療保険料と一緒に医療保険者に支払う
- 2.医療保険者が、加入者分をまとめて市町村へ支払う
○65歳以上では
- 1.介護保険料単独で個別に市町村へ支払う
切り替わるのは、65歳(誕生日の前日)になった月の分からです。
1日生まれの人は前月から切り替わりますので注意してください。
65歳以上の介護保険料は、原則として年金からの天引きです。
年金からの天引きは、公的年金(老齢年金・退職年金・障害年金・遺族年金など)が年額18万円以上(月額1万5000円以上)の人が対象で、約9割弱の人が該当します。
年金額が18万円以下の人は納付書か、口座振替で支払います。
「年金が18万円以上なのに天引きにならない」という質問をよく聞きます。
これは65歳になった年、市外からの転入者などでは、天引きの対象者であると確認するのに時間を要するためです(通常6カ月から1年ほどかかります)。
介護保険料は前年度の所得に応じて決まります
介護サービスを提供するために必要な費用は、公費と40歳以上の人々が支払う介護保険料とでまかなわれています。
財源の構成をみてみましょう。
●介護保険の財源負担は、保険料と公費で50%ずつ
2018年4月より、65歳以上の介護保険料(第1号保険料)で全体の27%を負担することになりました(3年ごと見直し)。
具体的に説明します。
○A市の予算が100万円だとします(分かりやすくするため、小さい金額にしています)。
○公費が50万円、保険料で50万円を負担します。
○保険料負担分50万円のうち、40歳~64歳で27万円(27%)、65歳以上で23万円(23%)を負担します。
○A市の65歳以上の人口は23人です。
○23万円を23人で負担するので、1人あたり1万円負担となります。
これが基準額です。
○このままだと現役並みの所得の人も、年金収入だけで暮らしている人も1万円負担となり、低所得の人の負担割合が大きくなってしまいます。
○そこで「どのくらい負担してもらうか」を所得に応じて決めることにしたのです。
これが保険料率です。
以下は国が示す標準例です。
段階 | 対象 | 市町村民税 | 保険料率 |
---|---|---|---|
第1段階 | 老齢福祉年金受給者、 生活保護被保護者、本人年金等収入80万円以下 |
世帯全体が市町村民税非課税 | 基準額 ×0.45 |
第2段階 | 本人の年金収入等が 80万円以上120万円以下 |
基準額 ×0.75 |
|
第3段階 | 本人の年金収入等が 120万円超 |
基準額 ×0.75 |
|
第4段階 | 本人の年金収入等が 年額80万円以下 |
本人が市町村民税非課税 (世帯に市町村民税課税者がいる) |
基準額 ×0.9 |
第5段階 | 本人の年金収入等が 年額80万円超 |
基準額 ×1.0 |
|
第6段階 | 本人の合計所得額が 年額120万円未満 |
本人が市町村民税課税 | 基準額 ×1.2 |
第7段階 | 本人の合計所得額が 年額120万円以上190万円未満 |
基準額 ×1.3 |
|
第8段階 | 本人の合計所得額が 年額190万円以上290万円未満 |
基準額 ×1.5 |
|
第9段階 | 本人の合計所得額が年額290万円超 | 基準額 ×1.7 |
市町村によっては所得基準をさらに細かく、15段階ほどに細分化しているところもあります。
お住まいの市町村窓口に確認してみてください。
年間介護保険料はいくら?事例をあげて計算
A市、基準額が月額5000円、保険料率は上記で示した国の標準例で計算します。
事例1)一郎さん、独り暮らし
市民税非課税、収入は年金72万円のみ
一郎さんは第1段階なので、5000×0.45=2250(月額)年額は2万7千円
事例2)次郎さん、40歳の息子さんと2人暮らし
次郎さんは市民税非課税、年金72万円
息子さんは市民税課税 年収300万円
次郎さんの場合は、同居する息子さんが市民税課税者なので第4段階となります。
5000×0.9=4500(月額)年額は5万4千円
一郎さん、次郎さんお二人とも年金収入のみで市民税非課税ですが、次郎さんは世帯をともにする家族が市民税課税者であるため、介護保険料は大きく違ってきます。
元気な高齢者が増えれば介護保険料は安くなる
2018年5月、厚生労働省は第1号保険料の全国平均が5869円であると公表しました。
これは介護保険制度スタート時と比べ2倍の水準であり、さらに2040年には9200円になると推計されています。
介護保険料は介護サービス利用が多いほど負担額が上昇します。
高齢化を止めることはできませんが、「元気でいること」で負担額を減らすことはできるのではないでしょうか。
参考:
厚生労働省 第7期計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について(2018年5月25日引用)