包括支援センターの役割とは?居宅介護支援事業所との違いは?
介護保険は介護が必要な方やそのご家族に、すっかり身近な存在となりました。しかし、初めて制度を利用する方には分からないことだらけです。
そんな方へ、包括支援センターと居宅介護支援事業所のそれぞれの役割や違いについて、ご説明します。
相談窓口は増えたけれど~どこに行けば良いの?
配偶者や親など身近な方が高齢となったとき、心配となるのが介護のことです。
「以前よりも歩いていてふらつくことが増えた」
「物忘れの回数が増えてきた気がする」
こうした日々の暮らしの中で感じる将来への不安は、高まる一方です。
介護などの不安について相談したいと街を歩けば、介護の会社や施設はたくさん見かけるようになりましたが、施設ごとの違いがよく分かりません。
そこで相談できる窓口が、包括支援センターと、居宅介護支援事業所の2つです。
これらのサービスは介護の相談を受け付け、解決のための手助けをしてくれます。
しかし、2つとも全く同じというわけではなく、得意分野が違っています。
それぞれのサービスの内容と違いを見ていきましょう。
包括支援センターは暮らしの相談窓口
包括支援センターはお住まいの地域の行政から委託を受け、運営されています。
最大の特徴は、ご利用者もしくはそのご家族へ向けて介護の相談以外に、福祉や医療の相談も受けている点です。
地域での暮らしには多くの問題があります。
一人暮らしの高齢の方を例として考えてみましょう。
最近、足腰が弱くなったため、ゴミ出しや買い物が負担になってきました。
そのため捨てきれなかったゴミが溜まり、悪臭を放つようになっています。
買い物にも思うように行けないため、食事もきちんと取れなくなってきました。
腰や膝も痛いので病院にも行きたいのですが、それもうまくできません。
これからの自分のお金の管理にも不安があります。
こうなると、お一人の力で問題を解決をすることは困難となります。
こうしたとき包括支援センターではケアマネジャーが介護を、社会福祉士が福祉を、保健師が健康の問題をそれぞれ担当し、文字通り「包括的に」問題解決に当たります。
- ● ホームヘルパーがゴミを指定の曜日に出すことや、買い物を支援
- ● 成年後見制度を利用して、お金を適切に管理
- ● 保健師が訪問し、必要に応じて医療機関に紹介
- ● 病院への送迎は介護タクシーを利用
また地域で暮らす方たちをつなぐ拠点としての役割もあります。
ボランティアグループに活動の場を提供したり、それぞれのグループ同士をつないだりといったネットワーク作りもその業務となっています。
一人暮らしの方が孤立しないための力ともなるのです。
次に居宅介護支援事業所について見ていきましょう。
居宅介護支援事業所はケアプラン作成の助っ人集団
居宅介護支援事業所は「ケアマネジャーが介護プランの作成を行うところ」です。
介護保険利用のためには行政による「要介護認定」を受け、「要介護度」が分かっている必要があります。
居宅介護支援事業所では、ケアマネジャーが要介護度を基準に、その方の生活への希望を聞き取り「ケアプラン」を作成します。
利用者がケアプランを了承すると、ケアマネジャーはこのケアプランを実行に移します。
デイサービスやホームヘルパーといった必要なサービスを提供できる介護事業所を探します。
こうしたケアプランの作成には全額介護保険が適用されるので、自己負担はありません。
実際にサービスの提供が開始されてからも、サービスが利用者の希望や現在の状況に見合っているか確認し、事業所との調整を行います。
介護保険制度には多くのサービスが提供されており、素人である利用者や家族だけでは有効活用しきれないのが現実です。
そうしたとき、ケアマネジャーのサポートは大きな力となります。
包括支援センターと居宅介護支援事業所、どう使い分ける?
包括支援センター、居宅介護支援事業所ともにケアマネジャーが所属していて、介護の相談に乗ってくれます。
この2つのサービスはどう使い分けたらよいのでしょうか?
包括支援センターは、地域で暮らす方の「こんなときどうすればいい?」と気軽に聞ける窓口です。
寄せられるさまざまな相談に対応できるよう介護、福祉、医療の専門スタッフがいます。
一方、居宅介護支援事業所は「介護保険の専門家であるケアマネジャー」が、利用者の「ケアプラン作成と実行をサポート」する事業所です。
福祉や医療の相談もできますが、これらの専門スタッフはいないためケアマネジャーが必要なサービスへつなぎます。
包括支援センターと居宅介護支援事業所のどちらに行くべきか迷ったときは、以下をポイントにしてみてください。
「介護以外にも悩みがある」方は包括支援センターへ
- ● どうしたらよいのか、分からないのでとにかく話を聞いて欲しい
- ● 65歳以下であり、心身に障害がある
- ● 年金の管理や、健康についても不安がある
- ● 地域の中で知り合いがいなくて寂しい
「介護や、介護保険についての悩み」がある方は居宅介護支援事業所へ
- ● 要介護認定が出たので介護保険を利用したい
- ● ケアプランの作成をして欲しい
- ● 今、契約しているケアマネジャーを変更したい
(ケアマネジャーは変更ができます)
包括支援センター、居宅介護支援事業所ともに相談料金はかかりません。
まとめ
介護、福祉、医療の各分野の国家資格を持つ専門家の活躍はとても心強いものです。
しかし各分野のサービスごとに専門化や、細分化が進んでしまうことの弊害も心配されます。
肝心のサービス利用者の側からみると、いろいろ難しい名前のセンターばかり増えて「なにがなんだか分からない」という声を現場ではよく耳にします。
各サービスごとの違いを分かりやすく説明して周知する広報の努力はサービスの充実と同じくらい重要といえるでしょう。
関連記事:
介護サービスの利用にはどうすれば?~実際の例で介護認定から開始まで、わかりやすく解説
参考:
地域包括支援センターの業務(厚生労働省)(2018年6月19日引用)
居宅介護支援(ケアマネジメント)(厚生労働省)(2018年6月19日引用)
介護の基礎知識(厚生労働省)(2018年6月26日引用)
良いケアマネジャーを選ぶ方法~選び方から交代方法まで解説(OGスマイル)(2018年6月26日引用)