老健ではどれくらいリハビリできるの?リハビリ回数や内容を現役理学療法士が解説します
「老健といえばリハビリをしっかりしてくれる施設」と思われる方も多いでしょう。
しかし、老健によってリハビリの回数に差があることも少なくありません。
そこで、老健で行われるリハビリの回数や内容について、現場で働く理学療法士が解説します。
目次
毎日リハビリがあるのは3カ月!以降はリハビリの回数は減少
老健はリハビリができると言っても、具体的にどのくらいできるのか、わかりにくいかもしれません。
そこで、老健でできるリハビリの回数を解説します。
◯3カ月間は集中してリハビリができる
老健に入ってから3カ月は集中してリハビリができ、病院と同じように理学療法士などの専門家がマンツーマンで関わってくれます。
しかし、施設が実施するサービス内容によって、リハビリの回数が異なります。
そこで、サービスごとに具体的な回数を表で示します。
実施するサービス | リハビリの回数 | 内容 |
---|---|---|
短期集中リハビリテーション | 1週間に3回〜毎日 | 自宅へ帰るために必要なリハビリを行う |
認知症短期集中リハビリテーション | 週3回まで | 認知症の利用者さんの改善を目的にリハビリをする |
以上のように、サービスにより毎日行われる場合と、週3回までしか行われない場合があります。
◯入ってすぐでも集中的なリハビリができない場合がある
自宅や病院から老健に入った場合は、専門家によるマンツーマンの関わりが集中して受けられますが、過去3カ月以内に老健に入っていたら、同じような関わりを受けられません。
たとえば、老健から自宅に戻られて1カ月暮らした利用者さんが、体調が悪くなってしまったため老健に再び入られても、毎日リハビリができないのです。
◯3カ月を過ぎると毎日から週2回に
老健に入ってから3カ月が過ぎると、以降のリハビリは1週間に2回となります。
また、施設によっては2回のうち1回は集団での体操などをして、専門家の関わりは1回ということもあります。
以上のように、入所期間が長くなると週2回のリハビリに減りますが、施設の種類によっては、それ以上のリハビリをする場合があります。
そこで、次の項目で施設のタイプによるサービス内容を説明します。
老健のタイプ別にリハビリの違いを紹介
老健は「基本型」「強化型」といったタイプに分かれています。
施設のタイプ別にリハビリ回数と施設の傾向を表で紹介します。
施設のタイプ | リハビリの回数 | 施設の傾向 |
---|---|---|
基本型 | 週2回程度 | 専門家によるマンツーマンの関わりは少なめ 自宅へ帰る割合が少なめ |
強化型 | 週3回以上 | 専門家によるマンツーマンの関わりが多い 自宅へ帰る割合が多い 自宅への訪問など積極的に自宅へ帰る取り組みを実施 |
以上のように、強化型は理学療法士などの専門家が多く在籍しており、老健の入退所の前後に自宅の環境を調べ、自宅へ帰って生活を続けるための取り組みを積極的にしています。
そのため、リハビリの回数に差があり、基本型が週2回程度なのに対して、強化型では週3回以上しています。
リハビリの内容は?1日の時間は多くても40分が目安
専門家によるマンツーマンの関わりは多くても1日40分程度です。
また、専門家が関わる時間以外にも、しっかり関わりをもっている施設もあります。
そこで、リハビリの実施時間や内容、充実したリハビリをしている施設を見極めるポイントを紹介します。
●多くても1日40分である理由
最初に老健に入って3カ月しっかりリハビリができる2つのサービスを紹介しましたが、それぞれの実施時間は20分です。
そのため、両方のサービスを同じ日にする場合は40分が目安になります。
しかし、認知症短期集中リハビリは1週間に3回までですので、40分できるのは週3回までです。
以下に1週間の実施時間の例を紹介します。
曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
---|---|---|---|---|---|---|
短期集中リハビリ時間 | 20分 | 20分 | 20分 | 20分 | 20分 | 20分 |
認知症短期集中リハビリ時間 | 20分 | なし | 20分 | 20分 | なし | なし |
合計時間 | 40分 | 20分 | 40分 | 40分 | 20分 | 20分 |
施設によっては、サービスで専門家がマンツーマンで関わる時間を延長している場合もあり、事前に把握するのがおすすめです。
●老健では普段の生活をどのように過ごすかも非常に重要
老健では専門家による関わりだけでなく、普段の生活をどのように過ごすかも非常に重要になります。
専門家がマンツーマンで関わる時間は40分と限られており、1日24時間のうちほかの時間にしっかり自宅での生活を見据えて関わることができれば、自宅に帰れる可能性も高まります。
たとえば、トイレやお風呂など普段の生活で、できるだけ自分でできることを増やすことで、自宅に帰って自分でするために必要な練習ができます。
そのため、専門家による関わりに加えて、それ以外の時間帯にどのような関わりをしてもらえるのかを施設に入る前に聞くようにしましょう。
●自宅へ帰る割合が高い施設は充実したリハビリをしている
厚生労働省のデータによると、自宅へ帰る割合が高い施設は、リハビリをする時間も長く、トイレや入浴といった日常生活での動作が改善しやすい傾向にあります。
自宅への復帰割合 | 割合の評価 | 1週間あたりの実施時間の平均値(分) |
---|---|---|
30%以下 | 低い | 66.1 |
30%以上50未満 | 普通 | 78.6 |
50%以上 | 高い | 124.1 |
そのため、自宅に復帰する割合がどれくらいかを把握すれば、リハビリの内容が充実している施設を選ぶための判断材料にすることができます。
事前に施設のリハビリについてしっかり把握して入所を検討しよう
自宅へ帰るために、リハビリをしっかりしてもらいたいと思う利用者さんや家族は少なくありません。
しかし、入所前にどれくらいできるのかを把握しなければ、思っていたような内容と異なる可能性があります。
リハビリの回数がどのように決まるのかを理解した上で、入所前に具体的な説明を施設に聞き、入所を検討しましょう。
参照:
厚生労働省 社会保障審議会ー介護給付費分科会 参考資料2(第144回.2017.8.4).(2018年12月15日引用)
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執筆者
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整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級