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認知症の家族が損害を与えたときに備え、保険の契約を検討しよう

認知症の家族が徘徊すると、他人やほかの企業などに人的・物的な損害を与える恐れがあります。
徘徊への対策は見守りだけでは限界があるため、万が一に備えて保険の契約がすすめられます。
さまざまな保険がありますから、この記事で確認していきましょう。

徘徊による人的、物的損害の対策は?

「認知症の家族を外に出さない」ことは困難 努力と気力で乗り切るのは不十分

「認知症の家族を外に出さない」ことは困難努力と気力で乗り切るのは不十分

認知症の家族が徘徊することに対し、もちろん見守りは必要です。
しかし、気力と努力だけで徘徊を防ぐことは難しいものです。
本記事では個人賠償責任保険の説明をする前に、徘徊する行為そのものを完全に防ぐことは難しい点について、説明していきます。

●24時間365日の見守りは不可能

認知症の家族がいる方のなかには、「いつも家族に付き添い、見守りをしている」と答える方も、多いと思います。
しかし、介護をする方にも日々の生活があります。
たとえば買い物や入浴など、認知症の家族と一時的に離れるシーンはあるでしょう。
なにより介護する方自身も食事や睡眠を取らなければ、いずれ倒れてしまいます。
このようにどうしても介護の目が行き届かないタイミングは発生しますから、そのすきに認知症の方が自宅を離れて出かけてしまう可能性はあります。

数人で交替して介護しているならば、24時間365日ずっと見守ることは可能かもしれません。
しかし、このような恵まれた条件で介護できるケースは少ないものです。
核家族化が進む現代、1人や2人で介護するならば、「24時間365日ずっと見守れ」と要求することは酷といえるでしょう。

●そもそも認知症の患者さんは、「理由あって」外出している

認知症の患者さんは一見外出が必要ないように見えるときでも、本人にとっては「理由あって」外出しているものです。
たとえば、以下の理由が挙げられます。

  • ○昔勤務していた会社に出社する
  • ○昔の頃を思い出し、子どもを迎えに行く
  • ○以前住んでいた自宅に帰ろうとする

これらを無理に止めても、「用事があるので外出するのに、なぜ邪魔をするのか」と思われてしまうため、徘徊を止める方向には向かいません。
このような場合は認知症の方との関わり方を工夫し、認知症患者の世界に介護者が一緒に入り込むことが必要です。
本サイトの「施設全体で見直したい。事例から考える認知症ケアで習得すべきエッセンスとは」記事を参考にすることも、おすすめする方法の1つです。

●万が一の事態が起きても、「賠償金を払えない」という最悪の結果にならないよう備えを

認知症の方を自宅で介護している場合、どれだけ工夫したとしても、完全に行動をコントロールすることは難しいでしょう。
それは介護のプロがいる介護施設において、認知症の方が施設から脱出する事案が発生していることからも、この課題を克服する困難さがうかがえます。

このため「認知症の方を絶対に外に出さない」ことは困難です。
それよりも万が一事故を起こした場合、被害者に賠償金を支払える備えをしたほうが合理的といえるでしょう。
最悪の結果は賠償金が払えないため、家庭が崩壊することですから、このような事態を防ぐ備えが欠かせません。

いざという事態に備える3つの保険や特約

いざという事態に備える3つの保険や特約

認知症の徘徊に備える金銭的な対策として、保険の契約は有効です。
保険にはさまざまな種類がありますが、ここではいざという事態に備えられる3種類の保険を取り上げます。

●個人賠償責任保険や特約

個人賠償責任保険は、他人に対して以下のような損害を与えた場合、その損害額を賠償する保険です。

  • ○相手を死亡させる
  • ○相手にけがをさせる
  • ○相手の物に損害を与える(傷つけたり、壊したりするなど)

直接相手方に支払う費用はもちろん、訴訟費用なども補償の対象となりますから安心です。

ただし個人賠償責任保険は、単独で加入を受け付けている商品はあまりありません。
多くは自動車保険や自転車保険、火災保険、傷害保険に付加する特約の扱いとなっています。
しかし以下の方法で、個人賠償責任保険に加入することも可能です。

加入している保険やサービス 代表例 加入できる条件
共済 ○都道府県民共済
○県民共済(神奈川県)
共済に加入し、月々の掛け金を支払っている
クレジットカード ○三菱UFJニコス発行のカード
○イオンカード
カード会員である
銀行口座 楽天銀行 銀行の口座を持っている

上記のいずれかに該当する方は、一般の方よりも加入しやすい状況にあります。
この機会に、加入の検討をされることもよい方法の1つです。

●電車の運行不能事故を補償する保険もある

認知症の方が徘徊すると、線路内に立ち入ってしまう場合もあるかもしれません。
もし電車が接近した場合は停止し、線路内から立ち去ってもらう必要があります。
この間電車は運転できないため、止まっていた時間分の賠償を求められる可能性があります。

上記のケースでは人的・物的な損害が発生しないため、従来の個人賠償責任保険では支払いができませんでした。
しかし2010年代後半からは、電車の運行不能事故も補償範囲とする保険が現れています。
一例として、日本生命の個人賠償プラン「まるごとマモル」が挙げられます。

●認知症保険なら、賠償責任以外にもさまざまなケースに対応できる

2010年代後半から、認知症の方が起こすさまざまなトラブルに備える専門の保険として、認知症保険が登場しています。
たとえば東京海上日動火災保険「認知症あんしんプラン」では、月額1,300円の保険料で、以下の補償が受けられます。

  • ○法的な損害賠償責任が生じた場合、最高1億円まで補償
  • ○認知症の方が他人にけがをさせ、その結果死亡した場合、見舞費用を15万円支払い
  • ○行方不明になった際の捜索費用を、最高30万円(年間で100万円)まで補償
  • ○認知症の方が交通事故等によるけがにより死亡、または後遺障害が残った場合、最高50万円まで補償

個人賠償責任保険とくらべて、捜索費用などの補償が付加されていることが特徴です。
このことは認知症に特化した保険の強みといえますが、そのぶん加入には制限があり、「認知症の診断を受けている40歳以上の家族を持つ方」が契約可能となっています。

一方でリボン少額短期保険も、「リボン認知症保険」の加入を受け付けています。
こちらは補償額が1,000万円と低額な代わりに、応急手当や護送の費用、弁護士費用なども支払ってもらえること、認知症の診断を受けていなくても加入できる点が強みです。

公的費用で保険を契約する自治体も、続々と現れている

徘徊などによる事故が社会問題となるなか、公的費用で個人賠償責任保険を契約する自治体も現れています
一例として、以下の自治体が挙げられます。

  • ○神奈川県大和市、海老名市
  • ○東京都葛飾区、中野区
  • ○栃木県小山市
  • ○愛知県大府市、刈谷市
  • ○福岡県久留米市

契約する保険は自治体ごとに異なるため、補償額も最高1億円から5億円とさまざまです。
しかし最高1億円の補償でも、ほとんどの事故には対応できるでしょう。
これにより認知症の方を抱える家族は自己負担なしに、万が一の備えができます

もっともこのサービスを受けるためには、自治体が実施する「SOSネットワーク」などへの登録が必要です。
このサービスに登録すると、万が一徘徊をした場合に、公的機関や公共交通機関などへ情報が提供されます。
このため、個人情報が知られることを嫌う方もいるかもしれません。
しかし多くの方の目で家族を探してもらえるメリットのほうが、はるかに大きいといえるでしょう。

保険を選ぶ際のポイントと注意点

保険を選ぶ際のポイントと注意点

ここまで記事をお読みになった方のなかには、「認知症への備えに個人賠償責任保険を契約したい」と思った方も多いのではないでしょうか。
保険を選ぶ際には、チェックしておきたいポイントや注意点があります。
せっかくの保険を有効に活用するためにも、以下の4点をチェックすることが重要です。

●保険を契約する前に、まず自治体へ相談を

「公的費用で保険をかける自治体も現れている」で解説したとおり、自治体によっては公費で保険料を負担する場合もあります。
この場合、認知症本人やご家族の負担なく補償が受けられます。
そのためご自身で保険を契約する前に、自治体で認知症の方向けに保険料を負担するサービスがあるかどうか、確認および相談することをおすすめします。

●個人賠償責任保険は、家族のだれかが加入していれば補償される

個人賠償責任保険は契約者本人だけでなく、同居の家族なら補償対象となることが基本です。
なかには、別居している親族を対象とする保険もあります。
そのため以下のいずれかに該当する場合は、新たに保険を契約しなくても補償が受けられる可能性があります。

  • ○家族のだれかが個人賠償責任保険を契約している
  • ○火災保険に加入している
  • ○自動車保険や自転車保険に加入している
  • ○傷害保険に加入している

上記に該当する場合は、今加入している保険の契約内容を確認してみましょう。
もし十分な補償額の個人賠償責任保険を契約している場合は、改めて保険に加入する必要はありません。

●補償されないケースを必ず確認する

個人賠償責任保険は、いざというときの力強い味方になることは事実です。
しかし他人の体や物に損害を与えたら、どのようなケースでも補償されるわけではありません。
代表的な例として、他人から借りている物を壊した場合は補償の対象外となる保険が多いです。
ただし三菱UFJニコスのカード会員が加入できる「ハンディー保険」など、補償の対象となる保険もあります。

損保ジャパン日本興亜 ハンディー保険 https://webhoken-sjnk.dga.jp/handyhoken/gaiyou/baishou

従って保険を契約する際には、補償が受けられないケースを必ず確認しておきましょう。
不明な点は保険会社などに確認することが重要です。

●事故を起こした場合は、勝手に示談しない

認知症の方に限らず、もし事故を起こした場合は勝手に示談しないことが重要です。
それは損害保険の支払額は定額ではなく、相手方がこうむった損害額を計算した上で決められるという理由によります。
この損害額は、相手方の申告が採用されるわけではありません。
事故の報告を受けた保険会社が査定し、決定します。
もし勝手に示談すると、保険会社から保険金の支払いを拒否されるかもしれません。

このため事故を起こした場合は、たとえ相手方から強く求められたとしても、勝手に示談してはいけません。
とはいえ示談交渉は、心理的な負担も重いものです。
近年では示談交渉サービスが利用できる個人賠償責任保険がありますから、不安な方はこのような保険を選んで契約するとよいでしょう。

賠償に備える保険に加入することは、安心につながる

認知症の家族のいざというときに備え、保険で他人への損害賠償に備えることは欠かせません。
もし個人賠償責任保険などに未加入の場合は、加入をおすすめします。
また公的費用で加入できる自治体にお住まいの場合は、まず自治体に相談しましょう。
これにより介護する家族にも心理的な余裕が生まれ、安心して介護ができます。
保険料は高くても月2,000円程度ですから、安心を買うことで少しでも介護の不安を取り除きましょう。

参考:
金融デザイン株式会社, 株式会社さくら事務所: 損害保険を見直すならこの1冊 第3版. 自由国民社, 東京, 2017, pp.204-213,226-247.

オージー技研 施設全体で見直したい。事例から考える認知症ケアで習得すべきエッセンスとは. https://ogw-media.com/kaigo/cat_care/185 (2020年1月13日引用)
LIFULL senior 認知症による徘徊―その原因と対応方法. https://kaigo.homes.co.jp/manual/dementia/symptom/haikai/ (2020年1月13日引用)

北海道 老人施設等における事故事例集. http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sus/houjin/houkoku/jikojirei.pdf (2020年1月13日引用)
明治安田システム・テクノロジー MY介護の広場 法律でひもとく介護事故 テーマ5 徘徊して事故. https://www.my-kaigo.com/pub/carers/risk/houritsu/0060.html (2020年1月13日引用)

都道府県民共済 個人賠償責任保険. https://entry.kyosai-kojinbai.com/files/pamphlet_20190201.pdf (2020年1月13日引用)
神奈川県民共済生活協同組合 個人賠償責任保険. https://www.kenminkyosai.or.jp/shared_html/pdf/kojinbaisyo.pdf#page=3 (2020年1月13日引用)
損保ジャパン日本興亜 ハンディー保険. https://webhoken-sjnk.dga.jp/handyhoken/gaiyou/baishou (2020年1月13日引用) ※三菱UFJニコスのカード会員のみ入会可能
損保ジャパン日本興亜 「ハンディー保険」重要事項等説明書(契約概要・注意喚起情報). https://webhoken-sjnk.dga.jp/handyhoken/kanyuu/juusetsu (2020年1月13日引用)
損保ジャパン日本興亜 日常生活賠償プラン. https://webhoken-sjnk.dga.jp/aeon/gaiyou/baishou (2020年1月13日引用) ※イオンカード会員のみ入会可能
損保ジャパン日本興亜 「ネットでかんたん保険」重要事項等説明書(契約概要・注意喚起情報). https://webhoken-sjnk.dga.jp/aeon/kanyuu/juusetsu (2020年1月13日引用)

楽天インシュアランスプランニング 個人賠償責任プラン. https://hoken.rakuten.co.jp/bank_cnt/indi/ (2020年1月13日引用)

日本生命 ニッセイ個人賠償プラン まるごとマモルの豆知識. https://www.nissay.co.jp/kojin/shohin/sompo/pdf/kojin_mamechishiki.pdf (2020年1月13日引用)

東京海上日動火災保険 【業界初】認知症の方およびそのご家族のための保険「認知症あんしんプラン」の発売. https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/180724_01.pdf (2020年1月12日引用)
東京海上日動あんしんコンサルティング 認知症あんしんプラン. https://www.web-tac.co.jp/eap/doc/eap_pamphlet.pdf (2020年1月12日引用)
リボン少額短期保険 リボン認知症保険. https://ribon.com/lp_3/ (2020年1月12日引用)
東洋経済新報社 葬式・認知症も保障、知られざるミニ保険の実態. https://toyokeizai.net/articles/-/300898?page=4 (2020年1月12日引用)
東洋経済新報社 親の認知症に悩む子を助ける新種保険の正体. https://toyokeizai.net/articles/-/238701 (2020年1月12日引用)

朝日新聞出版 民間・自治体で広がる認知症“予防サービス”と“保険”. https://dot.asahi.com/wa/2019061200077.html?page=3 (2020年1月12日引用)
大和市 はいかい高齢者等SOSネットワーク. http://www.city.yamato.lg.jp/web/kourei/kourei01211676.html (2020年1月12日引用)
大和市 平成29年8月市長定例記者会見資料. http://www.city.yamato.lg.jp/web/content/000129387.pdf p.2-3(2020年1月12日引用)
大和市 令和元年 5 月市長定例記者会見資料. http://www.city.yamato.lg.jp/web/content/000149242.pdf p3 (2020年1月12日引用)
海老名市 高齢者(認知症)あんしん補償事業を開始~万が一に備え安心を提供!~. https://www.city.ebina.kanagawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/356/siryou.pdf (2020年1月12日引用)
小山市 小山市徘徊高齢者等 SOS ネットワーク登録事業. https://www.city.oyama.tochigi.jp/uploaded/attachment/208250.pdf (2020年1月12日引用)
大府市 おおぶ・あったか見守りネットワーク ~認知症高齢者等の見守り及び個人賠償責任保険事業~. https://www.city.obu.aichi.jp/kenko/koureishashien/ninchisho/1004905.html (2020年1月12日引用)
大府市 「おおぶ・あったか見守りネットワーク」事前登録・個人賠償責任保険事業のご案内. https://www.city.obu.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/905/mimamori20191001.pdf (2020年1月12日引用)
刈谷市 はいかい高齢者個人賠償責任保険事業について. https://www.city.kariya.lg.jp/smph/kurashi/fukushikaigo/koreisyafukushi/nintisho/haikaihokenn.html (2020年1月12日引用)
久留米市 久留米市認知症高齢者等個人賠償責任保険. http://www.city.kurume.fukuoka.jp/1050kurashi/2080koureikaigo/3027sonato/2018-0620-1310-34.html (2020年1月12日引用)
久留米市 久留米市認知症高齢者等個人賠償責任保険のお知らせ. http://www.city.kurume.fukuoka.jp/1050kurashi/2080koureikaigo/3027sonato/files/tirasi.pdf (2020年1月12日引用)
産経新聞 認知症事故に保険導入 葛飾区と中野区. https://www.sankei.com/region/news/190207/rgn1902070049-n1.html (2020年1月13日引用)

カカクコム・インシュランス 自転車事故での示談交渉. https://hoken.kakaku.com/insurance/%E8%87%AA%E8%BB%A2%E8%BB%8A%E4%BF%9D%E9%99%BA/%E9%81%B8%E3%81%B3%E6%96%B9/%E8%87%AA%E8%BB%A2%E8%BB%8A%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%A7%E3%81%AE%E7%A4%BA%E8%AB%87%E4%BA%A4%E6%B8%89/ (2020年1月12日引用)
橋本行政書士事務所 示談金と慰謝料の違い(示談とは何か). https://secure01.red.shared-server.net/www.toshi-office.com/jiko-6-2jidantoha.htm (2020年1月12日引用)
講談社 大ブームの「認知症保険」本当に使えるの…?. https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56251?page=2 (2020年1月13日引用)

  • 執筆者

    稗田 恵一

  • 千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
    現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。

    保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ

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