もう1つの介護保険。保険会社が発売する介護保険のメリットと選び方
介護保険は公的なものだけでなく、民間でも多くの保険会社が介護保険の商品を発売しています。
公的な介護保険とうまく使い分けることで、介護への備えを充実できます。
本記事では保険会社の介護保険について、メリットや契約のポイントなどを解説します。
保険会社が提供する介護保険とは?
保険会社が提供する介護保険(以下、「民間の介護保険」と略)には、公的な介護保険にない特徴があります。
ここでは3つの特徴を取り上げます。
●公的な介護保険と別に、介護に備えられる保険
民間の介護保険は公的な介護保険で足りない部分を補い、介護に備えられる保険です。
公的な介護保険の内容は全国一律ですが、民間の介護保険はあなたのニーズに合わせて選べます。
加えて公的な介護保険では保障されない、以下の費用もカバーできます。
- ○64歳以下の介護費用(ただし40歳以上で特定疾病にかかった方は、公的な介護保険の対象)
- ○介護保険の自己負担分
- ○その他、介護に必要な費用
このように介護に対し、手厚い備えができることが特徴の1つです。
●費用を金銭で受け取れる
公的な介護保険は、自己負担額の減免が原則です。
負担が大幅に軽くなることは大きなメリットですが、自治体から現金が支給されるケースはあまりありません。
一方で民間の介護保険は、金銭での支払いが原則です。
このため用途が自由であり、使いやすいメリットがあります。
●保障内容は保険により多種多様。複数のコースから選べる保険もある
民間の介護保険には、以下の特徴を持つ保険もあります。
- ○要介護2からの保障が多いが、要支援1から保障される保険もある
- ○認知症や死亡時、障害者になった場合なども保障する保険がある
- ○保障額は数十万円から数百万円までさまざま。複数のプランを用意する保険もある
- ○年金で受け取れる保険もある
- ○保険料の支払いをある年齢で打ち切りつつ、契約は終身継続できる保険もある
上記のように多種多様な保険があることは、民間ならではの特徴といえます。
民間の介護保険を利用するメリット
民間の介護保険を利用することには、多くのメリットがあります。
ここでは主なメリットを3つ取り上げ、それぞれの内容を解説します。
●自己負担分の費用をカバーできる
介護の負担額は公的な介護保険の活用により、大幅に減額できます。
一方で最低でも1割の自己負担が必要であり、毎月続くと生活を圧迫しかねません。
厚生労働省「平成29年度 介護給付費等実態調査の概況(平成29年5月審査分~平成30年4月審査分)」によると、2018年4月審査分における1人当たりの費用は以下の通りとなっています。
- ○介護サービスを受けた方の平均は、194,200円
- ○うち施設介護を受ける方の平均は、295,000円
参考:厚生労働省 平成29年度 介護給付費等実態調査の概況(平成29年5月審査分~平成30年4月審査分)2 受給者1人当たり費用額
1割負担としても月2~3万円の自己負担を求められるわけですから、経済的な負担が重くなることに変わりはありません。
民間の介護保険では年金で受け取ることで、自己負担分の費用もカバーできます。
経済的な面で後押ししてくれることは、メリットの1つに挙げられるでしょう。
●39歳以下の方でも保障対象に。若いうちから将来に備えられる
民間の介護保険は、公的な介護保険がカバーしていない方でも保障の対象になることがメリットです。
公的な介護保険において、64歳以下の方が保障を受けられるケースは特定疾病にかかった場合に限られます。
また39歳以下の方は、そもそも加入できません。
一方で民間の介護保険なら、ジブラルタ生命のように15歳から加入可能な商品もあります。
若い方でも介護を必要とするリスクはゼロといえませんから、万が一に備えることは賢明な方法といえるでしょう。
●ニーズに応じて、保障額や掛金を選べる
民間の介護保険は、保障額や保障内容、掛金を選べることも主なメリットの1つです。
保険の活用で、以下のニーズにこたえられます。
- ○コストを抑えたいので、できるだけ掛金を安くしたい
- ○要支援の段階でも保障が欲しい
- ○年金で受け取りたい
- ○配当金も欲しい
なかでも複数のコースから選べる保険は保障額だけでなく、家計に合わせた保険料を選べるという観点でも魅力的です。
民間の介護保険を選ぶ5つのポイント
民間の介護保険にはさまざまな種類がありますから、どれを選べばよいか迷う方もいるでしょう。
ここでは選ぶポイントを5つ取り上げ、どの点に着目すればよいか解説していきます。
●その1:要支援でも支払われるか、要介護2や3以上でよいか
介護保険の支払い基準は一般的な医療保険のように、「入院したら支払い」「手術したら支払い」といった単純なものではありません。
たとえば要介護度を基準とする保険の場合、どの段階から支払われるかは保険によってまちまちです。
支払条件 | 保険の例 |
---|---|
要支援1以上 | プラス少額短期保険「親孝行保険」 |
要支援2以上 | 朝日生命「あんしん介護」(要支援一時金タイプ) |
要支援2以上 | 多くの保険商品が該当 |
要介護3以上 | 明治安田生命「介護のささえ」 |
どこから保険でカバーするかは、各自のニーズにより異なります。
一人暮らしの方やあまり身内に頼れない方は、早い段階から支払われる保険を選び、積極的に介護サービスを受けることが選択肢となるでしょう。
一方で身内の支援が期待できる場合は、支払条件が厳しい保険を選び、月々の保険料を下げるという選択肢もあります。
保障内容と保険料はトレードオフの関係ですから、どこから保険の助けを得るか、よく検討することをおすすめします。
●その2:受け取りは一時金か、年金か。必要な額の契約をおすすめ
保険金の受け取り方法と金額も、重要なポイントに挙げられます。
受け取り方法には一時金と年金があり、それぞれ以下のメリットがあります。
生命保険文化センターが公表した「介護経験者による、実際にかかった資金額」も表に記載しました。
受け取り方法 | メリット | 用途の例 | 資金額の平均 |
---|---|---|---|
一時金 | まとまったお金を受け取れる | リフォームや入所時の一時金 | 69万円 |
年金 | 毎月の収入が増える | 月々の生活費や介護費用 | 月々78,000円 |
上記のように、介護はまとまった費用がかかります。
このため必要な金額だけ契約する、支払える保険料の範囲内でできるだけ大きな保障を選ぶといった選択肢があります。
最近では一時金と年金の両方を支払う保険も登場していますから、検討してみるとよいでしょう。
●その3:保険料はずっと一定か、若いうちは安く済ませるか
保険料が年々アップするか、契約時の年齢で決まるかも、重要なポイントの1つです。
年々アップする保険の場合、若いうちは保険料が低額で済む一方、介護が必要な年齢になってからの負担は重くなります。
一方で契約時の年齢で決まる場合、若い間の保険料は割高になります。
もし余裕がある場合は、保険料がずっと一定の保険に加入すると生活設計が立てやすくなります。
保険料が加入時に決まる保険の一例として、ソニー生命の「5年ごと利差配当付終身介護保障保険」が挙げられます。
●その4:高齢でも加入できるか
介護保険は、人生の折り返しに近づいてから気になる方も多いもの。
多くの保険は75歳まで加入できますが、それ以上でも加入したい方もいるでしょう。
あるいは「高齢の親に保険をプレゼントしたい」方も、いるかもしれません。
プラス少額短期保険の「親孝行保険」は、60歳から100歳まで加入できます。
支払われる一時金は80万円、保険料は毎年アップする保険ですが、高齢でも加入できることは大きなメリットといえるでしょう。
●その5:掛け捨てか、配当金や解約金がある保険か
保険料が掛け捨てか、配当金や解約金があるかも選ぶポイントに挙げられます。
掛け捨ての保険は少ない保険料でより大きい保障を受けられる一方、定期的または解約時に何も受け取れない点はデメリットです。
一方で配当金や解約金がある保険は介護が必要にならなくてもお金が受け取れるものの、その分保険料が高くなります。
個々の判断にもよりますが、「保険は掛け捨て。浮いた費用を貯蓄や投資にまわし、資産を作って備える」ことはよい方法の1つです。
掛け捨てであれば、保険商品の選択肢が広がることもメリットに挙げられます。
保険選びや契約する際の注意点
ここまで解説した通り、民間の介護保険には公的な介護保険にない、さまざまなメリットや特徴があります。
一方で契約する際には、4つの注意点も押さえておかなければなりません。
それぞれどのような点に注意が必要か、順に解説していきます。
●保険金が支払われる基準は、保険により異なる
「ポイントその1」で解説した通り、保険金が支払われる基準は以下の通り、保険によって異なります。
- ○独自の基準を設けている保険会社がある
- ○同じ保険会社でも、介護度によって支払い可否が分かれる場合がある
たとえば「コープの介護保険」は公的な要介護認定を目安にしつつ、独自の基準となっています。
また朝日生命「あんしん介護」には5つのタイプがありますが、保険金が支払われる基準は以下の通りさまざまです。
タイプ | 保険金支払の基準 |
---|---|
介護年金タイプ | 要介護1以上 |
介護一時金タイプ | 要介護3以上 |
認知症年金タイプ | 要介護1以上 |
認知症一時金タイプ | 要介護1以上 |
要支援一時金タイプ | 要支援2以上 |
参考:アイ・エフ・クリエイト 朝日生命 あんしん介護(年金・一時金)<特長>
上記の違いは加入者のニーズにこたえるという側面がありますから、「同じ保険会社だから支払基準は同じ」と思い込んではいけません。
いざというときに困らないためにも、保険金が支払われる基準を必ず確認し、あなたに合った保険を選んで申し込みましょう。
●介護が必要な期間、ずっと受け取れるとは限らない
公的な介護保険は自己負担額の減免が終身にわたって受けられますが、民間の介護保険はその限りではありません。
それは保険金の支払基準に達すると、所定の一時金を支払って契約終了となる保険も多いためです。
もちろんリフォームや介護施設の入居一時金など、1回だけの費用にあてる目的ならば一時金のほうが向いています。
しかし継続的な生活の支えを目的とするならば、一時金だけでは心細いですから、年金タイプが向いています。
このため保険金の額だけでなく、どのように支払われるかにも着目して商品選びを行いましょう。
できれば、高齢になってから一時金か年金かを選べる保険に加入しておくと便利です。
●保険によっては、何歳になっても保険料を払わなければならない場合も
保険によっては、保険料の支払いが「終身」となっている場合があります。
この場合は生きている限り、保険料を支払わなければなりません。
また年齢が上がるにつれ、保険料が急上昇する保険もあることに注意が必要です。
そもそも年齢が上がると、年金以外の収入を得にくくなります。
そのため漫然とした考えで保険を契約すると、将来「もう今の保険料は高くて払えない。ほかの保険に入りたいが、適当な保険がない。どうしよう」といったジレンマに陥るおそれもあります。
だからといって解約してしまうと、必要なときに保障が受けられない事態になりかねません。
このため、以下の3点に注意して加入先を決めることをおすすめします。
- ○何歳まで保障されるか
- ○何歳まで保険料を払い続ける必要があるか
- ○保険料は一定か、毎年アップするか。高齢になっても、保険料を払い続けられるか
●クレジットカード付帯の保険は、カード会員でなくなると契約が終了する可能性に注意
クレジットカードによっては、会員向けに専用の介護保険を用意している場合があります。
保険料が比較的安価であることはメリットですから、加入をお考えの方もおられるのではないでしょうか。
一方で、「カードをやめなければ、生涯にわたって契約が続く」とは限らない点に注意が必要です。
それは契約の内容により、以下の状況になると契約が自動的に終了し、保障が受けられなくなる可能性があるためです。
- ○自らカードを解約する
- ○カード会社から強制解約される。または、更新を拒否される
特にカードを更新するかどうかはカード会社に権限がありますから、あなたが希望しても更新カードが発行されない可能性があることに留意が必要です。
このため保険料の安さだけで申し込むと、カードを退会後に保障が受けられないという結果につながりかねません。
従って契約の概要だけでもよく読み、条件を確認してから申し込むことをおすすめします。
各社の保障内容をよく比較し、安心な老後につなげよう
民間の介護保険にはさまざまなタイプの商品があり、受けられる保障内容も商品によりさまざまです。
保険を比較検討する際には「受け取った保険金を何に使うか」を考えることが、あなたにフィットした保険選びにつながります。
また月々の保険料だけでなく、何歳まで支払いが続くか、保険金が支払われる基準などにも注目して選びましょう。
保険を上手に選ぶことで介護への備えを手厚くでき、安心な老後につなげることができます。
参考:
金融広報中央委員会 介護保険制度のしくみ(2020年7月23日引用)
パナソニック 介護保険の被保険者に該当するのは、どういう人?(2020年7月23日引用)
厚生労働省 平成29年度 介護給付費等実態調査の概況(平成29年5月審査分~平成30年4月審査分)(2020年7月23日引用)
厚生労働省 平成29年度 介護給付費等実態調査の概況(平成29年5月審査分~平成30年4月審査分) 2 受給者1人当たり費用額(2020年7月23日引用)
国税庁 No.1140 生命保険料控除(2020年7月23日引用)
国税庁 No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等(2020年7月23日引用)
横浜市 高額介護サービス費等について(2020年7月23日引用)
生命保険文化センター 「生命保険に関する全国実態調査」(2020年7月23日引用)
生命保険文化センター 平成30年度 生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉pp.96-97(2020年7月23日引用)
住友生命 1UP Vitality(2020年7月22日引用)
明治安田生命 介護のささえ(2020年7月22日引用)
アフラック 介護EVER(2020年7月22日引用)
アフラック スーパー介護年金プランVタイプ(2020年7月22日引用)
プラス少額短期保険 ちょこっとプラス・シリーズ(2020年7月22日引用)
プラス少額短期保険 親孝行保険(2020年7月22日引用)
朝日生命 あんしん介護(2020年7月22日引用)
朝日生命 あんしん介護のラインナップ(2020年7月23日引用)
アイ・エフ・クリエイト 朝日生命 あんしん介護(年金・一時金)<特長>(2020年7月24日引用)
ジブラルタ生命 介護保証付終身保険(低解約返戻金型)(2020年7月22日引用)
太陽生命 My介護Best(2020年7月22日引用)
太陽生命 My介護Best(2020年7月22日引用)
ソニー生命 終身介護保障保険(低解約返戻金型/無配当)(2020年7月22日引用)
ソニー生命 介護保険パンフレット(2020年7月22日引用)
JA共済 介護共済(2020年7月22日引用)
JA共済 介護共済(2020年7月22日引用)
日本コープ共済生活協同組合連合会 コープの介護保険(2020年7月22日引用)
ユニヴァ共済 介護・認知症共済(2020年7月22日引用)
本田元: クレジットのすべてがわかる!図解カードビジネスの実務<第2版>. 中央経済社, 東京, 2017, pp.95-108.
-
執筆者
-
千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。
保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ