高齢者が腰椎圧迫骨折で介護認定されるまでの流れは?どこに相談すればよいの?
高齢者の骨折のなかで罹患率が高い腰椎圧迫骨折。
受傷直後から強い痛みがあり、ほとんどの患者さんはADL(日常生活動作)の低下を招きます。
日常生活の変化に対応するのが介護保険。
腰椎圧迫骨折で介護認定されるために必要な手続きはどのようなものなのか。
その流れを解説します。
腰椎圧迫骨折で起こる生活の変化
腰椎圧迫骨折の受傷のきっかけは椅子や高所からの転落・重量物の移動などがあります。
しかし、なかにはただ長時間座ってテレビを見ていたら腰椎がつぶれて骨折していたという事例もあるのをご存じでしょうか。
患者さんが骨折に気づかずに日常生活を送っていくうちに症状の悪化を招いてしまうのです。
患者さんが受診するときには歩行時の疼痛・起床時・座位から立位への移動など、ほとんどの体位変換で痛みを感じています。
そのためADLではトイレ・洗面・入浴などが困難になっているケースがほとんどです。
腰椎圧迫骨折での入院の可否は、骨折の病態によって異なります。
たとえば、ベッド上安静を維持しなければ腰椎のつぶれが進む恐れがある場合や、手術適応の場合などは入院が必要です。
しかし医師が病状から自宅療養可能と判断すれば、自宅での療養となるのです。
介護認定は届け出主義
腰椎圧迫骨折があり、入院はできないが高齢夫婦二人で生活している家庭だと「家庭内で介護することができない」とおっしゃる方もいます。
このような方には介護保険の利用をおすすめします。
しかし介護保険料は支払っていても、介護保険を使用したい場合はその旨を自ら市区町村に届けなければなりません。
クリニックで診察についていると、「病院から介護保険が使えるように言ってもらえませんか」とおっしゃる患者さんがとても多いのです。
しかし、介護保険の利用は本人もしくは家族が届け出るもののため、医療従事者は介入できません。
大きな病院でソーシャルワーカーが常駐しているところはソーシャルワーカーが相談に乗ることができるケースもありますが、あくまでも介護保険の使用は届け出主義。
この事実が、介護保険を実際に利用する高齢者に浸透していないと感じます。
●介護認定までの流れ・初回認定の場合
- 1) 住所がある市区町村に本人または代理人が介護保険認定を申請する
- 2) 市町村から本人・家族に、どの医療機関に通院中であるか、現状困っていることなどを質問される
- 3) 市町村から医療機関あてに主治医意見書が届き、主治医がこれに記入して提出する
- 4) 認定調査員が本人のもとに調査に来る(ADLや認知症の有無など)
- 5) コンピューターで認定項目を一次審査する(食事・洗面などのADL68項目)
- 6) 認定調査・主治医の意見・コンピューターの分析をもとに認定会議を開く
- 7) 介護認定(要介護度の決定)されて、本人のもとに通知される
患者さんが病状により入院中の場合、認定調査員は病床まで出向いてくれます。
また、通常申請から認定まで2カ月程度かかりますが、圧迫骨折後で緊急性がある場合は認定までの期間が早まる場合もあります。
さらに、認定が下りるまで待てない、すぐに介護保険サービスを使用したいという方もいるのではないでしょうか。
その場合は事前に市町村に相談したときに必要だと判断されると認定前に介護保険サービスが使用でき、後から介護保険を適用することも可能です。
なお、新規認定期間は6カ月間ですが、市町村によってはこの期間が3カ月~12カ月となる場合もあります。
●介護認定の変更
すでに要介護認定を受けている方の介護の更新認定は、制度上は利用者さんの状態によって1~3年に一度。
しかし、腰椎圧迫骨折によって生活に支障が出ている場合、期限を待たずに更新認定を受けることが可能です。
担当のケアマネジャーに病状を伝えて相談してみましょう。
※2021年3月時点で更新認定の最長は3年ですが、法改正により2021年4月より4年になる予定。認定期間は過去の法改正でも変更歴があります。
介護認定後に使えるサービス
介護認定が下りると必ず担当のケアマネジャーが付きます。
担当者が患者さんの状態に応じて介護計画を立て、必要な介護サービス計画を立ててくれるのです。
ケアマネジャーに介護プランを考えてもらうために、腰椎圧迫骨折後に何に困っているかをよく相談しましょう。
週に何回サービスが受けられるかは、要介護度によっても異なります。
●腰椎圧迫骨折で提供されるサービスの一例
- ○体を曲げることができない⇒デイサービスによる入浴サービス
- ○掃除や洗濯など腰に負担がかかる動作ができない⇒生活介護サービス
- ○トイレで立ったり座ったりする動作がつらい⇒トイレに簡易手すりをレンタルする福祉用具貸与
- ○通院のための車への乗降介助
腰椎圧迫骨折後に介護認定を受けるために必要なこと
腰椎圧迫骨折後の介護認定までの流れについてお伝えしました。
介護認定制度は届け出主義ですので、一連の流れはけがなどがなく、自宅で生活できているほかの認定を受ける方と変わりありません。
ただ、急な骨折によって日常生活に困難が生じた場合、その状況を配慮してサービスを受けるケースもあるのです。
骨折の病状は一人ひとり異なるため、困っている状況をケアマネジャーに伝えることも必要です。
参考:
平成23年度神奈川県介護支援専門員実務者研修テキスト・資料編Ⅱ(要介護認定の基礎)、P23
田中拓樹, 他: 圧迫骨折の再発リスク因子について. 第50回日本理学療法学術大会 抄録集, 2015.(2021年3月22日引用)
社会福祉法人 創誠会 要介護認定 介護(介護予防)サービスを利用手順(2021年3月22日引用)
厚生労働省 要介護認定に係る法令(2021年3月22日引用)
葛飾区 介護保険の仕組みについて(2021年3月22日引用)
官庁通信社 要介護認定を簡素化、条件が合えば1次判定を採用 有効期間は36ヵ月に 厚労省(2021年3月22日引用)
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執筆者
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小児外科・整形外科病棟・総合病院の外来などを経て2015年より医療・看護ライターに。並行して派遣看護師としてデイサービス・整形クリニック・健診機関などで勤務しています。看護師歴は20年以上。看護の知識と実践で得たことを糧に、読者様にわかりやすい記事を届けます。
保有資格:看護師・介護支援専門員