定期巡回・随時対応サービスの活用のポイントは?24時間、1日複数回訪問で介護負担を軽減!
介護保険サービスのヘルパー派遣には「滞在型」と「定期巡回型」というふたつの制度があるのをご存じですか?
今回は2012年4月から開始された「定期巡回型」訪問介護について、どんな制度?滞在型との違いは?活用の仕方は?といった内容をお届けいたします。
在宅で介護される方にとってメリットの多いこの制度。
ぜひともケアプラン作成の参考になさってください。
「定期巡回型」ってどんな制度?
2012年に追加された新しい訪問介護のかたち
「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」。
たくさんの漢字が並ぶこの制度は、2012年4月開始の介護保険による訪問介護サービスの名称です。
サービスの主なポイントは以下の4つになります。
- 1)「要介護」認定の方が利用できる
- 2) 24時間の随時対応サービス
- 3) 介護の必要に応じてヘルパーが1日複数回、24時間対応で訪問
- 4)訪問看護との連携が強化
このなかで特に注目されるのは、24時間必要に応じてヘルパーが訪問し、急に介護が必要になったときでも随時訪問を依頼できることです。
また、「訪問看護と連携している」という点は、在宅介護をする方にとってはとても心強いシステムだといえるでしょう。
ただし、ご利用にはこんな注意ポイントがあります。
- 1)訪問1回あたりの滞在時間は最大で30分程度と短め
- 2)身体介護が中心
ヘルパーの滞在時間が短く設定されているのは、「随時訪問」を可能にするためといえるでしょう。
訪問での滞在時間が長くなると、迅速な対応が難しくなってしまうのです。
気になる利用料は、要介護度に応じてひと月当たり定額となっています。
「随時訪問を頼むとその都度料金が掛かるの?」と心配される方もいますが、利用料にはその費用(随時)も含まれています。
依頼するたびに料金がかかることはありませんのでご安心ください。
では次に、従来からの訪問介護と「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の違いをみていきましょう。
「滞在型」と「定期巡回型」、どう違う?
「定期巡回型」が登場する以前の訪問介護サービスは「滞在型」と呼ばれています。
利用者さんは定期巡回型、滞在型のどちらかを選択し利用することができますが、併用はできません。
では「定期巡回型」と「滞在型」の違いとは一体何なのでしょうか。
大きく違う点を3つ挙げてみます。
- 1)要支援、要介護問わず利用可能(要支援の方は介護予防サービス)
- 2)ヘルパーの訪問1回あたりの滞在時間は1時間など長く設定できる
- 3)随時訪問サービスは別サービス(夜間対応型訪問介護)として契約が必要
このように、ヘルパーの滞在時間を長く設定できる滞在型は、食事介助や調理など時間をじっくり掛けたいケアを受けたい方に適しています。
滞在型を選択する利用者さんからは「ヘルパーが長くいてくれるので安心。用事も頼みやすい」といった声も多く聞かれます。
滞在型を利用するときのポイントは、「随時訪問をどうするか」です。
- 1)夜間対応型訪問介護は夜間と、24時間対応の2つのタイプがある
- 2)随時訪問を依頼すると1回ごとに料金がかかる
夜間対応型訪問介護での「夜間」とは「午後6時から翌朝8時まで」を指します。
一方、随時訪問は1回ごとに料金が掛かるので、割高なサービスに感じる方もいるでしょう。
しかし、「ヘルパーの滞在時間は長いほうがいい」「随時訪問はいざというときのお守り代わり」といった考えの方には適したサービスといえます。
「定期巡回型」を生かしたケアプランをご紹介
ここでは、定期巡回型がどう利用されているか、モデルケースでみていきます。
定期巡回型は24時間、1日複数回の訪問介護サービスを受けることができます。
具体的な利用方法を2例ご紹介します。
モデル1:ご家族と同居。寝たきりのケース
ベッド上での生活を余儀なくされている方へのケアでは、排泄介助が大きな負担となっています。
こうしたご家族の負担も、定期巡回型の「1日複数回訪問」を利用すれば軽減することが可能になります。
筆者は1日4~5回(朝、昼、夕、就寝前、深夜)に訪問し、排泄介助のケアを提供したことがあります。
夜中や早朝の訪問のとき「その都度、家族が玄関の鍵を開けるのか?」という質問を受けますが、基本的にその必要はありません。
介護事業所により対応は異なりますが、厚労省の介護保険事業者向けQ&A(平成27年)では「予め鍵の預かり方法を定めるなど、介護事業所が責任をもって対応する」とされており、ひとつの方法としてキーボックスという鍵付きの小型保管庫を玄関脇などに設置して、ヘルパーはそこから鍵を出し入れして入室するという方法もあります。
滞在時間は最大30分程度と短く感じますが、集中して行う30分は意外にもさまざまなサービスを提供することができるのです。
たとえば排泄介助、身体を拭く、シーツやパジャマの交換、歯磨きなどのケアなど、これらの内容を筆者も実際に30分の間に行っています。
また、定期巡回型では訪問看護との連携が強化されています。
日常的に訪問看護を利用されていない方でも、毎月看護師が訪問し健康管理のサポートを受けることができます。
さらに訪問入浴などと組み合わせることで、より手厚いケアが可能となるでしょう。
排泄介助や清拭(身体を拭く)など、ご家族だけではケアが大変なときは定期訪問とは別に随時訪問が依頼できますので、ご家族の心理的、身体的な負担の軽減の助けとなります。
モデル2:ひとり暮らしで、身体障害や認知症があるケース
高齢の方のひとり暮らしは、ご本人も周囲の方もなにかと心配なものでしょう。
しかし定期巡回型の活用によって、食事の配膳、片付け、服薬などのケアが可能になり、ご家族の安心にもつながります。
また、配食弁当や訪問看護など、ほかのサービスと組み合わせれば、利用者さんの安否確認をより密に行えます。
簡単な買い物、掃除など生活支援も提供されます。
たとえば朝のヘルパーが洗濯機を回し、昼のヘルパーが洗濯物を干す。
そして夕のヘルパーが取り込むといった連係プレーによって、時間内では間に合わないことでも対応することができるのです。
ひとり暮らしの方の場合、金銭管理も大事なケア。
この場合、行政や成年後見人と連携し、金銭管理の補助を行います。
成年後見人が、年金や生活保護などの金銭をご本人に渡し、ヘルパーが買い物依頼を受けたときなどに、残金や使用状況を確認します。
この情報を行政や成年後見人に報告することで、認知症などの利用者さんでもお買い物を楽しんでいただくことができるのです。
まとめ
定期巡回型の訪問介護は24時間対応、1日複数回の訪問など長所が多い一方、滞在時間が短めなどの注意点があります。
しかしケアマネジャーのなかには、定期巡回型の利用経験がない人もいます。
そのため、訪問回数や随時訪問の希望や必要性について、利用者さん側からケアマネジャーに伝えることが重要です。
ケアマネジャーも、より利用者さんに適したプランの作成を検討してくれるでしょう。
日頃から積極的にケアマネジャーと情報交換を行っておくことは、在宅での暮らしをさらに快適にするための、大事なポイントです。
関連記事:
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参照:
24時間対応の定期巡回・随時対応サービスの創設(厚生労働省)(2018年1月30日引用)
ワムネット(福祉医療機構)(2018年1月30日引用)
ワムネット(福祉医療機構)(2018年1月30日引用)
定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び 夜間対応型訪問介護(厚生労働省)(2018年1月30日引用)
介護保険事業者向けQ&A<介護サービス> 介護サービス12/平成27年度版(2018年1月30日引用)
国土交通省 住宅局 安心居住推進課 在宅サービスに対応した住宅を考えるヒント(案)(2018年1月30日引用)
厚生労働省 定期巡回・随時対応サービス モデル事業について(概要)