高齢者がサルコペニア状態になると、転倒リスクが上がる!?その定義や原因を知ろう!
筋力が落ち、腕や足がどんどん細くなってきたけれど、年のせいだから仕方がない。
そう考えてはいませんか?
実は高齢の方にとって筋力が落ちてしまうということは、さまざまな悪いアクシデントを起こしやすい状態であるといえるのです。
そこで今回は、筋力低下によって引き起こされる「サルコペニア」について、ご紹介します!
サルコペニアには、全身の筋肉量が落ちてしまうことで起こる現象
あまり聞きなれない言葉である、サルコペニア。
この言葉は、いったい何を意味しているのでしょうか?
サルコペニアとは、加齢や病気などによって全身の筋肉量が落ち、筋力が落ちてしまった結果、日常生活に支障がでてしまう状態を示す言葉です。
ギリシア語で「肉」を表す言葉と、「減少」を表す言葉を組み合わせた造語であるサルコペニアは、もともとは加齢に伴う筋力量の減少のみを示す言葉でした。
みなさんのなかにも、「年をとったら筋肉量が落ちることくらいは知っている」という方がいらっしゃるかと思います。
ではなぜ、今になってサルコペニアが問題とされているのでしょか?
それは近年の研究によって、筋肉量の減少が一定以上に進行すると、転倒や介護度、合併症や死亡のリスクが上昇し、その後の人生に大きく影響を与えることがわかってきたからです。
つまり、サルコペニアを起こさないよう、事前に対策を取ることができれば、転倒や介護度の上昇、および死亡リスクを減らすことができるのです。
そこで、2010年にサルコペニアが問題視されるようになり、世界一の高齢社会である日本でも、2014年3月に「日本サルコペニア・フレイル研究会」が発足され、サルコペニアの予防や対策方法が検討されるようになりました。
サルコペニアを起こすと、健康寿命が短くなる!?
テレビや雑誌などでよく見る「健康寿命」という言葉。
この健康寿命においても、サルコペニアは密接な関係があります。
どんなに元気な方であっても、加齢とともに筋肉の量は徐々に衰えていきます。
筋肉量が落ちることで一番怖いことは、やはり転倒です。
人は年を重ねると、筋力とともに骨ももろくなってしまうため、若いころとは違い転倒しただけで骨が折れてしまうこともあります。
また、骨の折れやすさだけでなく、骨折から回復するスピードも遅くなり、一度骨折してしまうとなかなか骨がくっつきません。
そのため、やっとリハビリが行えるようになるころには全身の筋肉が大きく衰えてしまい、リハビリをしても元の状態に戻ることは難しくなってしまうのです。
転倒をきっかけとして、日常生活の多くを一人で行うことができなくなり、介助が必要になってしまうケースや、起き上りなども困難になってしまった結果、日中は寝たきりになってしまうケースもあります。
これらの理由から、ご高齢の方は転倒に注意!といわれているのです。
よって、サルコペニアの予防をすることは転倒の予防ともいえ、転倒の予防ということは、そのまま健康寿命を伸ばす効果も期待できる、といえます。
サルコペニアには、痩せのほかに肥満がある!
サルコペニアになる原因には、加齢のほかにも、活動量の低下や栄養状態の悪さ、そして病気などがあげられます。
ここで注目したいのが、「栄養状態の悪さ」という点です。
栄養状態が悪いといわれると、痩せている方を思い浮かべますが、サルコペニアには、低栄養でありながら肥満傾向である「サルコペニア肥満」というものもあります。
オランダで行われた研究によると、重度の低栄養状態であるとされている方のうち、実に46%の方の体重が標準よりも重い、もしくは肥満状態でした。
このサルコペニア肥満とは、加齢や栄養状態の悪さによって全身の筋力が落ちていることに加え、以下の条件に当てはまる方をいいます。
- ●BMIという肥満を測るうえでの数値が25以上であること
- ●体脂肪率が男性25パーセント以上、女性が30パーセント以上
- ●内臓脂肪が100cm2であること
これらの数値、どこかで見たことがあると思いませんか?
そう、メタボリック検診による基準と同じなのです。
つまり、メタボリック検診での基準に加えて、加齢による筋力低下が起こることで、日常生活に支障をきたしやすく、そして最終的には寝たきりや生活上において介助が必要な状態になりやすくなってしまう、ということがいえるのです。
まとめ
長生きだけが目標だった時代から、今は健康で長く生きることが目標となっています。
しかしサルコペニア状態になってしまうと、そこから通常の筋力を取り戻すことは容易なことではなく「健康で長く生きる」が難しくなってしまいます。
サルコペニアという言葉とその内容を知り、事前に予防すること。
それが、健康寿命を延ばすためには大切です。
なお、具体的な対応方法についてはこちらのページ(高齢者のサルコペニアを予防するには、なにより食事と運動が重要!ぜひ試したい、その対策方法とは?)で紹介していますので、ぜひご参照ください。
参考:
田村佳奈美他:サルコペニアとリハビリテーションと栄養:NutritionCare:2014年7巻10号:pp9-45
吉村芳弘:その患者、じつはフレイル?もしかしてサルコペニア?高齢者の食と栄養と嚥下障害を支える 管理栄養士に必要なサルコペニアの知識:NutritionCare:2016年9巻11号:pp72-75