高齢者のサルコペニアを予防するには、なにより食事と運動が重要!ぜひ試したい、その対策方法とは?
いつまでも健康で長生きしたい。
その願いを阻むものの一つとして挙げられるのが「サルコペニア」です。
サルコペニアを予防することで、寝たきりや介護のきっかけとなる転倒のリスクを減らすことができます。
そこで今回は、健康寿命を延ばすためにぜひ知っておきたい、サルコペニアへの対策方法について、ご紹介します!
サルコペニアを防ぐには、食事と運動、双方の管理が大切!
サルコペニアは、加齢や病気などによる筋肉量の低下によって、筋力の低下や日常生活に支障をきたしてしまう状態をいいます。
サルコペニア状態を引き起こす要因としては、加齢や病気などがあるため、完全に防ぐことはできません。
特にご高齢の場合、筋肉量が低下しやすく、日常生活にも介助が必要な状態になりやすいですが、日頃から注意することで、サルコペニア状態になりにくい身体にすることは可能となっています。
では、どうすればサルコペニアを少しでも起こしにくくすることができるのでしょうか?
その答えは、食事と運動にあります。
●食事
サルコペニアは、栄養状態が悪いことでも起こりやすくなります。
よって日頃から栄養バランスを考えた食事を取ることが大切です。
よく、肥満の方は栄養過多の状態であり、栄養状態は悪くないと考えている方がいらっしゃるのですが、これは違います。
肥満は、必要以上にカロリーを摂取することで体の中に脂肪を多くため込んでいる状態をいうのであり、決して「栄養状態が良すぎる」ことを意味していません。
こちらの記事(高齢者がサルコペニア状態になると、転倒リスクが上がる!?その定義や原因を知ろう!)でも触れていますが、実際に肥満の方であっても低栄養状態であると診断される方はいらっしゃいます。
よって、サルコペニアを防ぐためには、体型に関係なく栄養バランスを考えた食事をすることが大切となります。
●運動
食事と同様もう一つ重要なのが、運動です。
加齢によって、筋肉は徐々に衰えていきます。
テレビや雑誌などで、80歳を超える方が元気に体操したり、スポーツをされている様子がよく取り上げられていますが、この方々は日常生活以上に筋肉を多く使い、鍛えることで、加齢による筋力の衰えを防いでいるのです。
よって、サルコペニアを起こさないためには、栄養バランスに気を付けるとともに、日頃から運動習慣をつけ、筋肉を鍛えていくことが大切となります。
それでは次に、食事と運動、それぞれの注意点についてさらに詳しくみていきましょう。
食事は、タンパク質摂取とカロリー計算が重要!
皆さんは、プロテインという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
筋肉隆々のボディビルダーなどがよく飲んでいるイメージが強いプロテインですが、なぜ筋肉を鍛えている方はプロテインを飲んでいるのでしょうか。
それは、筋肉量を増やすために欠かすことのできない栄養素だからです。
筋肉は、負荷をかけることで一時的に組織が破壊されてしまうのですが、この破壊された組織を修復することで、筋肉量がアップしていきます。
そして、この修復時に欠かせない栄養素、それがタンパク質なのです。
50歳以上の方の場合、一日あたり男性で60グラム以上、女性で50グラム以上が奨励されています。
よって普段の食事の中でも、全体の栄養バランスを見ることはもちろんのこと、小鉢としてタンパク質を多く含む納豆を追加することや、肉と魚をバランスよく献立に取り入れるなど、タンパク質を献立に組み込むことが大切となります。
なお、高齢者におけるタンパク質の重要性については、こちらのページ(ラクして筋肉をつけるコツは、ズバリ栄養!~見直そう食生活~)にて詳しくご紹介しておりますので、ぜひご参照ください。
また、食事を取る上で、栄養の他にもう一つ重要なのがカロリーです。
健康診断などで肥満気味、あるいは肥満と診断された場合には、一日あたりの摂取カロリーを控える必要があります。
日本医師会では、70歳以上の方はご自身の体重に21.5をかけたものに、日常での運動量に応じた数値を再度かけることで、一日あたりに必要な摂取カロリーとしています。
たとえば現在50キロ、運動習慣がない方の場合は、50×21.5×1.45=約1558キロカロリーとなります。
なお、この数値は医師のカロリー制限を受けていない方のみの数値となり、医師から指示されている方は、必ず医師の指示に従ってください。
●宅配サービスを頼むのも一つの手段
栄養バランスの良い食事が健康に良い。
そうわかってはいるけれど、加齢とともに食事の準備がおっくうになってしまい、ついついスーパーのお惣菜やコンビニのお弁当などで食事を済ませてしまう、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでお勧めしたいのが、タンパク質をはじめとして、全体の栄養バランスが取れた食事を配達してくれる、宅配サービスです。
1日の食事のうち、夕食だけこのサービスを利用するだけでも、お惣菜や市販のお弁当にくらべれば、栄養バランスをしっかり取ることが可能となります。
さらに宅配サービスで提供される食事は、他にも減塩に配慮されたものや、カロリーを低く抑えつつ、味も美味しいものが多数あります。
現在介護を受けている方はより安く宅配サービスを利用できることもあるので、ぜひ一度ご検討いただけたらと思います。
運動は有酸素運動のほかに、レジスタンス運動を行おう!
サルコペニアを防ぐうえで、食事とともに重要となるのが運動です。
運動というとジョギングなど、息を切らして行う全身運動をイメージしやすいのですが、サルコペニアにおいて、より重要となるのがレジスタンス運動です。
全身を動かし、酸素を多く使うジョギングのような運動を有酸素運動といいますが、レジスタンス運動はダンベルなどの筋力トレーニングのことをいいます。
筋力トレーニングと言われると、スポーツジムや専門の施設に行かないとできないイメージがありますが、自宅でペットボトルを持ち、ダンベルの代わりにすることも十分可能です。
レジスタンス運動の場合は毎日行うと、筋肉の疲労が取れず効果を最大限に引き出すことができません。
そのため、少なくとも48時間以上空けて週1~3回行います。
また、運動時間は1時間未満として、運動中は呼吸を止めないように注意して行うようにしましょう。
まとめ
食事と運動。
これらを自分の力だけで改善することは想像以上に大変なことです。
そこでお勧めしたいのが、「民間や自治体のサービスを積極的に利用すること」です。
最近は各自治体でも介護予防教室として、自宅でも簡単にできる運動方法や食事法について、講習をおこなっています。
それらの情報を積極的に集め、まずはお話だけでもどんどん聞くこと。
それが、いつまでも健康で過ごすために大切なことといえます。
参考:
田村佳奈美他:サルコペニアとリハビリテーションと栄養:NutritionCare:2014年7巻10号:pp9-45
吉村芳弘:その患者、じつはフレイル?もしかしてサルコペニア?高齢者の食と栄養と嚥下障害を支える 管理栄養士に必要なサルコペニアの知識:NutritionCare:2016年9巻11号:pp72-75
日本医師会 健康になる!1日に必要なカロリー「推定エネルギー必要量」(2018年2月26日引用)