膝が痛いならグルコサミン!?医学的根拠にもとづく、その効果をご紹介します!
テレビや新聞など、多くのメディアで取り上げられているグルコサミンですが、飲むだけで膝関節などの痛みに効果があるという簡便性から、購入される方も多いでしょう。
しかし、グルコサミンがどのように痛みを抑える効果があるのか、ご存じの方は少ないと思います。
そこで今回は、膝関節痛に対するグルコサミンの効果を検証した文献から、その作用メカニズムをひも解いていきます。
グルコサミンが膝関節痛を改善する理由とは!?
ここでは、グルコサミンが膝関節痛にもたらす効果について、みなさんが気になる項目をリストアップしてみました。
●関節の炎症をおさえる!
関節に炎症が生じると、血液中の好中球(こうちゅうきゅう)という細胞が増えます。
好中球は関節内に炎症が起きると、それに反応して血液中の割合が増加します。
長岡ら(2002)は、グルコサミンを添加することにより、この好中球の働きが弱くなったと報告しています。
生体内に投与した場合に、きちんと吸収されて関節内で作用するかどうかはさておき、培養皿の上での実験では、グルコサミンには関節内の炎症を抑えてくれる働きがあるとされているのです。
●軟骨の修復を促す効果は…?
グルコサミンが関節の軟骨に何らかの効果を及ぼすかどうかについては、これまで、ネズミ、ウサギ、人間などいろいろな生物において、多角的な検証がなされています。
その結果を読み解いていくと、グルコサミンが関節保護に役立ったという文献と、効果が得られなかったという文献が混在しています。
このため、現時点では医学的にその有効性が示されているというわけではなく、今後の研究によってその効果が実証されていくかどうかが注目されるというのが現状です。
●関節の痛みをとる効果は…?
膝関節痛については、日本国内でも多くの研究がなされています。
なかでも、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)という疾患には、これに対する治療のガイドラインもつくられています。
川口(2016)は、グルコサミンが変形性膝関節症におよぼす効果について多数の文献を比較し、文献によって大きな差があると述べており、痛みに対する効果は今後の検証が必要であると述べています。
一方で、Jos Runhaarら(2017)は、毎日の摂取を2〜3年続ければ変形性膝関節症の進行を遅らせることができる可能性があると述べており、何らかの効果が出る可能性は、明確には否定されていません。
●血液サラサラの薬を飲んでいる場合は注意が必要?
血液をサラサラにする効果がある、クマリン抗凝固薬(特にワルファリン)を飲んでいる方は注意が必要です。
欧州食品安全機関(2011)によると、グルコサミンとの飲み合わせにより、ワルファリンの効果が薄くなる可能性があることを報告しています。
そのため現状では、ワルファリンを飲んでいるかたは、積極的な摂取は控えたほうが良いかもしれません。
グルコサミンが関節軟骨におよぼす効果とは?
さまざまなメディアで、軟骨の修復を促す成分としてうたっているグルコサミンですが、実際軟骨にどのような効果を及ぼすのでしょうか。
●軟骨には血流がない!
関節の中にある軟骨は、硝子軟骨(しょうしなんこつ)と呼ばれています。
組織に損傷が起きた場合には、修復を担当する物質が血流に乗って運ばれ、傷ついた部分まで行くことで組織の修復が始まりますが、榊田(1996)は硝子軟骨には血流がないと述べています。
つまり、血流がない硝子軟骨は傷ついても決して元通りになることはなく、やけどの痕のように別の組織に置き変わることになるのです。
このことから、グルコサミンを摂取したとしても、もともと血流がないため、関節内の軟骨まで有効に到達するかどうかは不明であり、軟骨そのものを直接修復することは期待できません。
●軟骨がすり減るから痛みがでる!?
そもそも痛みというのは、痛みを感じる神経が刺激されることによって引き起こされる感覚ですが、硝子軟骨には痛みを感じる神経がありません。
つまり、軟骨がすり減ったから痛みがでるわけではないのです。
軟骨がすり減って痛みがでる例外は、軟骨の下にある軟骨下骨(なんこつかこつ)が露出するほど、硝子軟骨がすり減った場合です。
軟骨下骨には痛みを感じる神経が存在するため、痛みが生じるのです。
このため、硝子軟骨が多少すり減ったとしても、軟骨下骨まで届かなければ痛みはでません。
痛みの改善には運動と減量を組み合わせることが重要!
日本理学療法士協会(2016)では、変形性膝関節症に対するガイドラインとして、主に減量、運動を勧めています。
この減量と運動は、多くの文献などから得たデータを統合し分析した結果、科学的に行うことが推奨できるもので、研究内容の信頼性、妥当性が高いと判断されたうえで勧められています。
●運動習慣の改善と、グルコサミンを飲むことで膝関節痛が軽減!?
膝の痛みに悩まされ、グルコサミンを継続的に愛飲していた方を担当したことがあります。
その患者さんは、普段からあまり運動の習慣がなく、グルコサミンの摂取だけでご自身の膝の痛みがなくなると思っていました。
そこで筆者は、グルコサミンはまだ医学的に効果が実証されていないこと、運動と減量が膝の痛みに有効であることを伝え、運動を習慣化するように指導しました。
その間、グルコサミンの摂取は継続してもらいました。
その後筋力がつき体重が減るにつれて、軟骨はすり減ったままですが関節内の炎症がおさまり、痛みもなくなりました。
これはグルコサミンの関節内の炎症を抑える効果と、運動、減量の相乗効果により、膝関節の痛みをなくすことができたケースだと思います。
運動や減量を中心に、その補助としてグルコサミンをとることで、さらに膝の痛みをやわらげる効果が期待できるのではないでしょうか。
まとめ
グルコサミンの効果については、現時点では賛否両論です。
しかし、少なくともグルコサミンを摂取した結果、膝関節痛が悪化したという話はあまり聞きません。
また上述したように、運動や減量と併用することでグルコサミンの効果をより引き出すことができる可能性もあり、まだこれから十分に検討していく余地はあるといえるでしょう。
あなたの膝関節痛が一日でも早く良くなるように、これらを上手に組み合わせて習慣にしてみてはいかがでしょうか。
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参考:
長岡功,華見ら:グルコサミンの好中球機能抑制作用とそのメカニズム.日本炎症再生医学会,22-5,.461-468.2002.(2018年2月9日引用)
榊田喜三郎:損傷関節軟骨の修復,日本リウマチ・関節外科学会雑誌.1-2,1996.(2018年2月9日引用)
川口浩:変形性膝関節症治療の国内外のガイドライン.日本関節病学会誌35-1,2016.(2018年2月9日引用)
European Food Safety Authority:Statement on the safety of glucosamine for patients receiving coumarin anticoagulants,2011(2018年2月9日引用)
日本理学療法士協会 理学療法士ガイドライン5変形性膝関節症(2018年2月9日引用)
Jos Runhaar,Rianne M Rozendaal et al.Subgroup analyses of the effectiveness of oral glucosamine for knee and hip osteoarthritis: a systematic review and individual patient data meta-analysis from the OA trail bank.BMJ Journals 76-11.2017.(2018年2月12日引用)