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腎臓病に運動は効果的?腎臓リハビリ指導士が解説します

腎臓病といえば、食事療法や血圧管理などさまざまな制限が必要になりますが、運動をしてはいけないと思っている方はいませんか?
過度な運動は腎臓病を悪くする一方で、適度な運動は腎臓病の進行を遅らせることができます。
どのくらいの運動なら大丈夫なのか、そもそもなぜ腎臓病に運動が効果的なのかについて、現役の腎臓リハビリ指導士が解説します。

腎臓病で運動していいの?腎臓リハビリ指導士が解説

腎臓病の進行予防には、生活習慣の改善が必要

「腎臓病=人工透析」ではありません

腎臓病の多くは、長年にわたり身体への負担がかかり続けることで進行しますが、食事制限や運動習慣改善など、生活習慣改善が重要なポイントになります。

●まずは血圧管理や食生活の改善からスタート

腎臓が悪い=透析をしなければならないと思っている方も多いと思いますが、そのベースには原因となる腎臓病があります。
透析導入となる腎臓病で一番多いのは糖尿病性腎症とよばれる病気であり、糖尿病による微小血管障害によって徐々に腎臓の機能が低下していきます。
また近年増加傾向にあるのが腎硬化症とよばれる病気で、高血圧による腎動脈の障害によって腎臓の機能が低下します。
これらの腎臓病は最終的に透析につながることが多いため、その原因となる糖尿病や高血圧をしっかり治療する必要があります。
血糖値を抑える薬や血圧を低下させる薬をはじめ、カロリー制限や塩分制限といった食事療法が効果的です。
「先生に腎臓が悪いと言われた、透析するしかないのか」と諦めるのではなく、まずは自分の生活を見直して、改めるべきポイントを理解することが大切です。
腎臓病の治療で重要なことは、いかに腎臓を元気に保つか、透析導入を遅らせるかであり、自身の病気を知ってからが本当の戦いかもしれません。

●腎臓病だけじゃない?生活習慣の改善には意外な効果が

腎臓病が進行しないように生活習慣を改善することで、そのほかにもさまざまなプラス効果があります。
前述したように、糖尿病性腎症や腎硬化症では、血管の障害が腎臓機能の悪化につながりますが、そのほかの血管にも影響がでます。
たとえば、脳の血管が詰まると脳梗塞、心臓の血管が詰まると心筋梗塞というように、血管が障害される部位によってさまざまな病気が起こります。
しかし、その根底にあるのは高血圧や糖尿病などの生活習慣であることが多く、これらの病気を予防するためにも生活習慣の改善は有効です
つまり、腎臓病の予防のために摂生した生活を続けることは、脳梗塞や心筋梗塞などの病気を予防することにもつながります
血管年齢という言葉を一度は耳にした方もいると思いますが、血管を健康に保つことは大きい病気を予防するために大切なことです。

運動が腎臓を守る、その理由とは?

適切な運動は効果的

食事の制限や薬を飲むことはもちろん大切だけど「運動したら腎臓病に悪影響がでるのでは?安静にしていたほうがいいのでは?」と思っている方はいないでしょうか。
ここでは、運動が腎臓病の進行予防に効果的な理由について解説します。

●昔は腎臓病に対して運動はNGだった?

かつては、腎臓病に対して「腎臓の機能を悪化させるため運動は禁忌」という、運動療法はネガティブな捉え方をされてきました。
確かに、強い運動をするとクレアチニンなどの老廃物が増加する、腎臓への血流が少なくなるなどの関係で、腎臓の機能が低下する危険があります
しかし近年において、腎臓関係の学会からは、運動による身体機能向上、心血管系機能の向上などの恩恵が着目されています。
日本腎臓リハビリテーション学会が作成したガイドラインにおいても、「保存期CKD患者に対して、負荷や身体機能を考慮しつつ運動を行うこと」が推奨されています。
運動は腎臓の機能を悪化させるという観点から、運動は腎臓を悪化させる要因に対して効果的であるという考え方にシフトしてきたともいえるでしょう。
しかし、運動療法が腎臓機能を改善させる、死亡率を減少させるといった根拠は未だ乏しく、今後も検討していく必要があります。
そのため、現時点では、病態が安定している腎臓病なら、併存症(糖尿病など)や身体機能に配慮しつつ、適切な負荷で行う運動は効果的であるといえるでしょう。

●運動は腎臓病を悪くする原因に対して効果的

運動は腎臓病に有効ですが、腎臓の細胞が活性化する、ろ過機能が正常まで回復するという効果は残念ながらありません。
腎臓病を悪化させる病態として糖尿病や高血圧を挙げましたが、運動はこれらの病態にアプローチすることができます。
運動によって血糖値や血圧が下がることで、糖尿病性腎症や腎硬化症の進行を遅らせることができるため、結果的に腎臓を守ることにつながります
また、腎臓の機能が低下するとたんぱく制限や貧血などの影響で、全身の筋力低下や体力低下を起こしやすくなります。
その結果、サルコペニアやフレイルといった病態を引き起こし、転倒による骨折や関節機能障害などにつながります。
腎臓病に対して適切な運動を行うことで、腎臓病や心臓病などを予防するだけでなく、筋肉や骨に関する病気も防ぐことができるのです

いざ実践、どのくらいの運動なら大丈夫?

適切な水分補給をする 専門家の指示のもとで運動する

では実際に、どのような運動をどのくらい行えばいいのかについて、いくつかの例を挙げて解説します。

●ウォーキングやサイクリングがおすすめ

運動といえばウォーキングをイメージする方も多いと思いますが、ウォーキングは特別な道具も必要なく、場所を選ばずに実施できるのでおすすめです。
自宅周りをぶらぶらと歩くのもよし、運動公園などに移動して決められたコースを歩くのもよいでしょう。
普通のウォーキングで物足りないという場合、以下のような工夫をすることで消費エネルギー量を増やすことができます。

  • ◯大股や早足で歩く
  • ◯腕をしっかり振りながら歩く
  • ◯ノルディックポールなどを併用する
  • ◯歩くコースに坂道や階段を取り入れる

また、ウォーキングに次いで、サイクリングも比較的取り入れやすい運動方法といえます。
サイクリングの一番のメリットは、膝への負担が少ないことが挙げられ、「歩くと膝が痛い」と悩んでいる方にもおすすめできます。
運動のための自転車というと、クロスバイクやロードバイクなどのスポーツバイクをイメージするかもしれませんが、普段乗っている自転車でも十分です。
サイクリングにおいても、以下のような工夫をすることで消費エネルギー量を増やすことができます。

  • ◯ペダルの回転数を上げる
  • ◯変速つき自転車の場合、ギアを重くする
  • ◯登り坂を走る

ただし、あまり重たい負荷でペダルをこぎ続けると膝への負担が強くなるため注意が必要です。

●適度な運動とは?「無理なく続けられる」くらいの強さや頻度が大切

息切れを起こす運動はしない 急に強い運動をしない

ウォーキングやサイクリングなどは有酸素運動の定番ですが、運動の強さも重要な要素になります。
その1つの理由として、強すぎる運動は腎臓への負担が強くなるため、かえって腎臓を悪くする可能性があります
そのほかには、急に強い運動をすることによって関節痛やけがにつながる可能性があり、かえって運動能力が低下するかもしれません。
そのため、以下のようなポイントを押さえて、無理なく続けられる強さを決めることが大切です。

  • ◯人と会話しながら続けられる
  • ◯息切れをしない
  • ◯翌日に強い疲れを残さない
  • ◯30分以上は続けることができる
  • ◯運動日の間隔をあけすぎない(できれば隔日での実施)

これらをまとめると、1日30分以上、息切れがなく疲れが残らない程度の強さの運動を、週に3回くらい(月水金など)行うのが適度な運動といえるでしょう。

腎臓病にとって運動は大切な治療法!

腎臓病につながる生活習慣病をコントロールするためには、薬物療法や食事療法に加えて、運動療法が重要になります。
運動は特別な場所や道具がなくても始められること、薬のように副作用がないこと、食事制限のような我慢ではなく爽快感を味わうことができるなど、メリットは多いです。
適切な運動によって血糖値や血圧を下げることができれば、腎臓病の進行を抑えることにつながり、透析治療を遅らせることができます。
ただし、運動の強さや頻度を間違えるとかえって逆効果にもなるため、まずは楽に続けられる程度の運動から始めてみましょう。

参考:
日本腎臓リハビリテーション学会 腎臓リハビリテーションガイドライン(2021年2月22日引用)

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。

    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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