ウェアラブル端末で心電図?心臓リハビリ指導士が活用方法をご紹介します
1日10,000歩を目標に、万歩計で自分の運動量を管理している方も多いと思います。
ここ近年では、身体に身に着けて歩数や心拍数をチェックする機械、いわゆるウェアラブル端末が普及しています。
しかし、時計型の端末(ウェアラブルウォッチ)で心電図が確認できることはあまり知られていないのではないでしょうか。
本記事では、心電図の活用方法や注意点などについて、心臓リハビリ指導士がご紹介します。
健康志向の高まりとウェアラブル端末の普及
まずはじめに、ウェアラブル端末の特徴についてご紹介します。
●ウェアラブル(身に着ける)端末はさまざまな身体情報を教えてくれる
ウェアラブル端末とは、体に身に着けることによってさまざまな身体情報を教えてくれる機械の総称です。
ひと昔前までは、運動の結果を反映する機械といえば万歩計が主流でしたが、現在では時計型や胸に巻くバンド型などさまざまな種類があります。
また、歩数に加えて消費カロリーの計算や走行ルートなども表示することができるため、屋外での活動全般に利用することができます。
ここ1年間、コロナ禍により大人数での会食や屋内での密集が制限されるなか、これを機に運動を始めてみたという方も増えているのではないでしょうか。
その結果、ウェアラブル端末は、運動に対して意識の高い方や、競技シーンで活躍するアスリートだけでなく、一般の方にも普及してきたのかもしれません。
●ウェアラブルウォッチの特徴と活用場面
時計型のウェアラブルウォッチ(スマートウォッチ)は、時計の機能に加えて、心拍数や歩数などさまざまな情報を得ることができます。
ランニングを趣味にしている方の場合、走行時の心拍数を参考にしてペース配分している方も多いでしょう。
また、GPS機能が搭載されていれば、走行時の速度や距離なども知ることができるため、運動のモチベーションも上がります。
そのほかにも、スケジュールを確認したり音楽を聴いたりと、ビジネスや趣味などさまざまな分野で活躍してくれます。
ウェアラブルウォッチは、普段の生活に加えて、健康管理にも利用することができる優れものといえるでしょう。
Apple社が販売しているApple Watchに関しては、iPhoneと同期させることによって、メールや電話の着信を知ることができたり、ナビとして使用したりすることもできます。
また本製品は、国内で初めて心電図の読み取りができる機能が追加され、健康管理の幅も広がっています。
Apple Watchで心電図を確認する方法は?
ここでは、Apple Watchにおける心電図の確認方法についてご紹介したいと思います。
●必要な機器はApple WatchとiPhone
Apple Watchは、それ単独で使用することもできますが、同社のスマートフォンであるiPhoneと一緒に使用することで活用の幅が広がります。
Apple Watchの背面にあるセンサーで心拍数や酸素飽和度を確認できますが、逆の指で側面のボタンに触れることによって心電図を読み取ることができるようになりました。
実際に医療機関で心電図を検査する場合、12方向から心臓を見て評価するのですが、Apple Watchではこのなかの1つ(Ⅰ誘導)を表示することができます。
iPhoneとあわせて使用した場合、解析結果をヘルスケアのアプリに記録したり、後述するように結果をプリントアウトすることもできます。
また、その時々の心電図をチェックするだけではなく、生活のなかで脈の乱れがないかをチェックし、異常があれば記録をするという機能もあります。
記録した心電図はPDF化してプリントアウトすることができるので、医師の診察時に持参することで自分の症状を伝えやすくなります。
●すべての不整脈を読み取ることはできないことに注意
「心電図が読み取れるなら自分の病気がわかる」と思うかもしれませんが、残念ながら万能であるとはいえません。
Apple Watchでは、正常な調律(洞調律)と心房細動という不整脈、極端な頻脈や徐脈を読み取ることができますが、それ以外の解析は困難です。
また、前述したように12方向ある心電図の1つを表示することになるため、心臓の状態を完璧に把握しているのではないことも事実です。
「自分は狭心症があるから心筋梗塞を起こす前のデータを把握して状態を判断したい」といった、心臓の虚血性変化を把握することは困難です。
心電図が確認できる=自己診断ではなく、診断の補助ツールとして、または体の異常サインを記録することが目的になります。
あくまで、心房細動と診断された後に治療の一環として使用すること、自分の心電図を確認して医師に相談するなどが大切です。
自己診断はNG!心電図機能の正しい活用方法とは
心電図アプリを使用する上で一番注意したい点は、自己診断で解決してはいけないということです。
正しい活用方法、誤った活用方法について、具体的な例を挙げてご紹介します。
●ケース1「心房細動がいつ起こっているか確認したい場合」
心房細動のなかでも、普段は正常な調律なのに、何かをきっかけに発生する心房細動(発作性心房細動)という種類があります。
病院を受診したときには正常な調律なのに、普段生活していると動悸が強くなるというパターンもあります。
医師としても、発生頻度や症状などをしっかり把握した上でなければ薬を処方することができないでしょう。
この場合、普段の心電図を記録しておくことによって、その結果を医師に見せることができるので、治療を進めることができます。
自分と医師が協力して診断することにつながり、自身での健康管理という観点からは理想的であるといえるでしょう。
●ケース2「胸の動悸や倦怠感があり、病院の受診を考えている場合」
普段から運動をしている健康自慢の方でも、「あれ、なんか最近動悸や息切れがしやすくなった」と感じることがあるかもしれません。
ただ、それらすべてを「歳のせい」と片付けてしまうのは危険であり、仮になんらかの病気であった場合は早期診断、早期治療が大切になります。
心電図を記録していて、万が一心房細動の結果が出た場合、かかりつけ医師の診察を受けることが重要です。
心房細動では、息切れや動悸など目に見えた症状だけでなく、血液の流れが滞ることにより血栓(血の塊)ができやすくなります。
その血栓が心臓から飛ばされた結果、心原性脳梗塞という重篤な病気につながるかもしれません。
気づかなかった病気を早期発見できる、重大な病気を回避することができるという点で、心電図の記録が大いに役立つでしょう。
●悪いケース「自己診断によって大きな事故につながる場合」
前述しましたが、Apple Watchでの心電図解析はすべての不整脈に対応できるわけではないため、心房細動以外の不整脈がある場合は注意が必要です。
「前に不整脈があるって言われたけど」と心電図を記録してみたものの、特に異常が検知されなかったから医療機関を受診しないというのはNGです。
たとえば、脈が遅くなる不整脈1つとっても、心房細動や房室ブロック、洞不全症候群など原因はさまざまであり、それぞれ治療も異なります。
そのなかには急に失神につながるもの、ペースメーカーの適応となるものなどもあり、自己診断で完結させるのは非常に危険です。
異常を感じた場合、体調に不安を感じる場合は、必ず医療機関を受診するようにしましょう。
ウェアラブル端末は今後も普及する?
ウェアラブル端末は運動のサポートという概念から、ビジネスやアウトドア、健康管理ができるマルチパートナーという認識になっています。
まだまだ自粛期間が続くなか、ストレス解消のために運動をしようと考える方も増えてくるでしょう。
また、自身の体調管理に目を向けるうちに、健康志向が高まる方が増えるかもしれません。
これらの後押しにより、ウェアラブル端末の人気は今後も続き、他社からも心電図やほかの生体情報を検知できる端末が発売される可能性もあります。
「自分の体は自分で守る」、一人ひとりが高い健康意識を持ち、誰もがウェアラブル端末を活用できる世の中がくるかもしれませんね。
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執筆者
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皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士