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口腔ケア

唾液腺マッサージの目的や正しい方法は?食事前に行って唾液の分泌を促そう

「口の中が乾いて食べ物が飲み込みにくい…」
加齢などにより唾液の分泌が減ると、このような症状が見られることは少なくありません。
そこでおすすめなのが唾液の分泌を促す「唾液腺マッサージ」です。
今回は唾液腺マッサージについて、目的や方法、注意点を解説します。

楽しく食事をするために知っておきたい唾液腺マッサージ

なぜ唾液の分泌が減るの?唾液や唾液腺について知ろう

なぜ唾液の分泌が減るの?唾液や唾液腺について知ろう

唾液腺マッサージについて理解を深めるために、まずは唾液や唾液腺の働きを紹介します。

●唾液の働き

私たちが普段無意識のうちに口の中に分泌されている唾液には次のような作用があります。

  • ○消化を助ける
  • ○口の清潔を保つ
  • ○食べ物を飲み込みやすくする
  • ○歯や口の粘膜を保護する
  • ○歯の健康を助ける
  • ○全身の健康状態を助ける
  • など

このように唾液にはさまざまな機能が備わっており、唾液の分泌の低下はこれら唾液の持つ作用が失われることを意味します。

●唾液の分泌が低下する原因

唾液は1日1〜1.5Lも分泌するとされていますが、さまざまな原因によって分泌量が低下していきます。
以下に唾液の分泌が低下する原因を挙げていきます。

唾液の分泌が低下する原因
・加齢による唾液腺の萎縮
・噛む力の衰え
・口周辺の筋力低下
・糖尿病など口が渇く症状のある病気
・薬の副作用
・ストレス
・水分量の低下
など

高齢者はこのような原因がいくつか合わさって唾液の分泌が低下しやすくなります。

●唾液の分泌をする唾液腺は2種類

唾液の分泌をつかさどる唾液腺は「大唾液腺」と「小唾液腺」の2種類に分けられます。
それぞれの特徴について紹介します。

1.大唾液腺

唾液腺のなかでも3つの主な場所があり、「大唾液腺」と呼ばれています。
3つの唾液腺は以下のような特徴があります。

名前 場所 特徴
耳下腺(じかせん) 耳たぶの前、上の奥歯のあたり サラサラした唾液を分泌する最大の唾液腺
顎下腺(がっかせん) あごの骨の内側の柔らかくなっているあたり サラサラな唾液とネバネバの唾液を両方分泌する
舌下腺(ぜっかせん) あごの先の内側、舌の付け根のあたり サラサラな唾液とネバネバの唾液を両方分泌する

2.小唾液腺

大唾液腺以外にも口の中の粘膜には小さな唾液腺がいくつも存在しています。
それらは小唾液腺と呼ばれ大唾液腺とともに唾液を分泌しています。
以上のうちマッサージにより刺激して唾液の分泌を促すのが3つある大唾液腺になります。

食事前がなぜいいの?唾液腺マッサージの目的や効果を解説

食事前がなぜいいの?唾液腺マッサージの目的や効果を解説

ここでは唾液腺マッサージの目的や効果を紹介します。

●目的は「唾液を分泌させて唾液による作用を促す」こと

唾液腺マッサージは唾液腺に刺激を加えて、唾液の分泌を促すのが目的です。
その結果、最初に紹介した唾液によるさまざまな作用が得られます。
つまり、加齢や病気、薬の副作用などで口の中が乾いてしまうことで起こるトラブルを防ぐことができるのです。
具体的にどのような効果が期待できるかを挙げていきます。

●【効果1】食事がしやすくなる

食物をまとめたり、飲み込みやすくしたりといった唾液の効果により、食事がしやすくなります。
飲み込みやすくなることは誤嚥のリスクを減らすことにもつながります。
また、下にある味蕾(みらい)と呼ばれる味を感じる部分に、味のもとになる成分を運ぶのにも唾液が活躍します。
味をしっかり感じることも食事が進む重要なポイントです。
このような効果のために、唾液腺マッサージは食事前に実施するのがポイントです。

※誤嚥については「高齢者に多い誤嚥性肺炎、発症の原因は加齢?分かりやすく解説します」で詳しく紹介しています。

●【効果2】虫歯や歯周病を防ぐ

唾液が細菌の侵入や繁殖を防ぐため、口の中の健康が保たれて虫歯や歯周病といった病気を防ぐことにつながります。
とりわけ起床時は口が乾燥しやすく、唾液の分泌が少ないタイミングですので、ぜひ実施しましょう。

●【効果3】会話がしやすくなる

口の乾燥は口臭につながったり、口が動きにくくなったりするため、会話をするのを妨げてしまう原因となります。
そのため唾液の分泌が促されることで、スムーズな会話につながります。
食事前だけでなく、会話の前に唾液腺マッサージをするのもオススメです。

誰でも簡単!唾液腺マッサージの方法と注意点

誰でも簡単!唾液腺マッサージの方法と注意点

唾液腺マッサージは誰でも、どこでも気軽に実施できます。
そこで具体的な方法を紹介します。
ただし、実施する場合の注意点もありますので合わせて解説します。

●耳下腺のマッサージ

上の奥歯のあたりの耳下腺は唾液腺の中でもっとも大きなものです。
そのため、両頬に人差し指から小指までの4本を当てて、上の奥歯あたりを後ろから前に円を描くようにマッサージしていきます。

●顎下腺のマッサージ

両手の親指をあごの内側の柔らかい部分に当てます。
耳の下のほうからあごの先のほうまで5カ所くらいを目安に軽く圧迫を加えます。

●舌下腺のマッサージ

両手の親指をくっつけて、あごの先の内側の柔らかい部分に軽く圧迫を加えます。
各マッサージは10回程度を目安にして、唾液がジワーッと分泌されるのを感じながら実施してみましょう。

●マッサージをする場合の注意点

方法自体は簡単な唾液腺マッサージですが、いくつか注意点があります。
それはマッサージにより病気の症状が悪化する可能性があるようなケースです。
以下の病気がある場合は唾液腺マッサージをむやみにしてはいけません。

  • ○口腔がんや咽頭がん
  • ○唾液腺の腫瘍
  • ○唾液腺の炎症
  • ○不整脈

この中で不整脈がなぜいけないのか疑問に思われる方もいるかもしれません。
理由は耳下腺マッサージが耳下腺の近くにある器官を刺激するためです。
耳下腺の近くには血圧を調整する器官があり、唾液腺マッサージによる圧迫を血圧の上昇と誤って感知してしまい、血圧を下げるように調整してしまいます。
結果として、不整脈の症状が悪化してしまう恐れがあるため、実施を控えましょう。
また、首の周りには重要な神経や血管がたくさん通っています。
そのため、マッサージを実施するにしても、あまり強く圧をかけたり、もんだりしないようにしましょう。

唾液腺マッサージを習慣化しておいしく食事をしよう

道具も必要ない唾液腺マッサージは、気軽に行うことができるため、ぜひとも習慣化したいものです。
「いただきます」の前に実施したり、テレビのコマーシャル中に実施したりと、自分で実施するタイミングを決めてしまうと、習慣化しやすいのでおすすめです。
しっかり唾液の分泌を促して、いつまでもおいしく食事をしましょう。

  • 執筆者

    蔵重雄基

  • 整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
    現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
    医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。

    保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級

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