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サルコペニア肥満とは?ただの肥満ではない、要介護への近道になる恐れも

サルコペニア肥満という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
身体の状態を表す言葉で、特に高齢者が放置すると要介護状態を招くリスクが高くなってしまうのです。
サルコペニア肥満とは何か、放置するとどうなるか、予防の方法などについてお伝えします。

足は細くなったのに太った気がするサルコペニア肥満

サルコペニア肥満とは何か

1)サルコペニア肥満とは

サルコぺニアは比較的新しい造語で、ギリシャ語のサルコ(筋肉)とぺニア(喪失)を組み合わせてできました。
サルコペニアとは、「加齢に伴い筋肉量が減少し、身体機能が低下した状態」をいいます。
これに加えて内臓肥満があるとサルコペニア肥満の状態です。
なお、肥満の定義はBMIが25以上です。
BMIとは、体重÷(身長×身長)で計算します。

2)生活習慣病などのリスクを上げる身体の状態

体内に脂肪細胞が多いと、慢性の炎症を起こしやすく、酸化によるストレスを受けやすく、動脈硬化のリスクが上昇します。
動脈硬化は全身の血管のしなやかさが失われていく病態ですので、心臓の血管が硬くなり、狭窄などを合併すると心疾患、脳の血管が硬くなって狭窄などを合併すると脳血管障害のリスクが上がるのです。
また、単なる肥満にくらべて筋肉量の減少したサルコペニア肥満では、内臓脂肪がたまりやすく、糖尿病のリスクが高いともいわれています。
さらに、癌にり患している方がサルコペニア肥満を合併すると、治療の効果が得られにくくなるケースもあるのです。

サルコペニア肥満の原因

人は成人を迎え、成長が終わったときからすべての身体機能は老化へと向かいます。
筋力低下も加齢性の変化の一つといえます。
若いころと同じように動いていても筋肉量が減少する場合があります。
また、消化吸収をする内臓機能が低下することから、若いころと同じように食事をしても、同じように栄養として蓄えられることは難しくなることもあります。
こうした加齢性の変化に加え、活動の低下・低栄養・骨折などで寝たきりになったことによる筋力低下もサルコペニア肥満の一因になります。

サルコペニア肥満はセルフチェックもできる

サルコペニアのリスクの目安

サルコペニア肥満は厚労省で認定された「病名」ではなく、研究段階の「身体の状態」であるため、明確な判定基準はありません。
ヨーロッパのサルコペニアワーキンググループが考案した診断基準がありますが、医療機関での測定が必要になるため、まずは参考になるセルフチェック方法を当てはめてみましょう。
1)~4)は下肢の筋力低下、5)は握力の低下を知る目安となります。

  1. 1) 若いころとくらべて歩く速度が遅くなった
  2. 2) 平らな道でも、歩いていてふらついたり、つまずいたりすることがある
  3. 3) 階段の上りがつらい
  4. 4) 両手でふくらはぎをつかんだときに隙間ができる
  5. 5) ペットボトルの蓋が開けられない

サルコペニア肥満は要介護状態の危険因子

無理はせずできるところから少しずつ

筋肉量の減少は、立っていてバランスが取れなかったり、転倒しやすくなったりといった身体機能の低下につながりやすいのです。
筋肉量が減少していることから、歩く速度が遅くなり、歩いていても疲れやすく、動くのがおっくうになることも。
こうした「体を動かすときに感じるつらさ」は、もともと運動不足であったサルコペニアの方に、さらなる運動不足を招きます。
運動不足は筋肉量を減少させますので、要介護状態になりやすくなります。
65歳以上の要介護者が、要介護状態になった原因の約2割は転倒骨折・関節疾患といわれます。
サルコペニア肥満では転倒による骨折を起こしやすいのです。
また、変形性膝関節症などの関節疾患の増悪は要介護状態を進行させます。
関節疾患の悪化を予防するには筋力を維持することは不可欠です。
これは、筋力が機能低下を起こした関節の動きをカバーしてくれるからです。
肥満自体も関節への負荷をかけるため、サルコペニア肥満であることは関節疾患の悪化を招くのです。

サルコぺニア肥満の予防はどうすればよいか

●予防の開始時期

先述したように、人間の体は成長を終えたときから老化へと向かっていきます。
特に50歳代からは1年に1%ずつ筋肉がやせていくといわれます。
そのため、介護予防のための運動療法は50歳代から始めても遅いのです。
運動の習慣がない場合、30歳代からでも筋力低下は始まります。
サルコペニア肥満の対策としては、40歳代から運動の習慣をしっかりとつける必要があるのです。

●運動の方法

負荷をかける筋力トレーニングが有効です。
スポーツジムなどのマシンで負荷をかけるのが一番わかりやすいでしょう。
しかし、運動不足でジムに行くのも難しい、という方は自宅で椅子に座った状態から立ち上がるスクワット、壁にもたれて行う腕立て伏せでも効果があります。
体脂肪率が高い肥満の方は早歩きのウォーキングを日課に取り入れるとよいでしょう。

●食事

サルコペニア肥満を予防する食事

「そんなに食べているつもりはないのに太る」とおっしゃる患者さんの多くは、必要な栄養素が不足していることが多いのです。
ビタミン・ミネラルなどの栄養バランスが良い食事を心がけることが必要ですが、タンパク質不足が筋肉量減少の一因になっていることもあります。
タンパク質摂取量が少ない(50g以下)グループよりも多い(80g以上)グループのほうが筋肉量減少は緩やかであったというデータもあります。
ただし、タンパク質を多く取ると腎臓に負担がかかる場合があるので、腎臓に疾患がある方は主治医に相談して食事療法を行うのがよいでしょう。

サルコペニア肥満の予防は早めの対策を

今からサルコペニア肥満を予防しよう

要介護状態のリスク・生活習慣病のリスクが高まるサルコペニア肥満。
予防策としては、高齢になるもっと前から食事や運動などの生活習慣を見直すことが必要です。
サルコぺニア肥満を予防すれば、高齢になってからの転倒骨折のリスクも下げることができます。
今から生活習慣を見直し、健康寿命を延ばすためにできることから始めていきましょう。

参考:
日本老年医学会 総説 サルコペニア肥満(2021年5月13日引用)
日本生活習慣病予防協会 生活習慣病(2021年5月13日引用)

  • 執筆者

    島谷 柚希

  • 小児外科・整形外科病棟・総合病院の外来などを経て2015年より医療・看護ライターに。並行して派遣看護師としてデイサービス・整形クリニック・健診機関などで勤務しています。看護師歴は20年以上。看護の知識と実践で得たことを糧に、読者様にわかりやすい記事を届けます。

    保有資格:看護師・介護支援専門員

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