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しびれ・麻痺 腰痛

その痛み、坐骨神経痛かも!?特徴的な症状と、隠れている原因について

坐骨神経痛はなじみのある言葉ですが、痛みが出る原因が人によって異なります。
テレワークの普及により、自宅で長時間同じ姿勢で作業する時間が増えることや、1日のなかでの運動量が減ることで腰や股関節に負担がかかり、坐骨神経痛を引き起こすリスクが高くなります。
坐骨神経痛を正しく理解し、原因を探るキッカケをつかみましょう。

何とはなしの違和感 坐骨神経痛の症状を解説

坐骨神経痛とは?

足の運動や感覚を司る神経は、腰椎といわれる腰骨から足に向かい伸びていきます。
これらは末梢神経と呼ばれ、手足や体を触れられた感覚や温度などを脳に伝えることや、運動の指令を伝達することを担います。
坐骨神経は末梢神経のなかで最も太い神経で、人の小指くらいの太さになります。
坐骨神経は足先に向かうにつれて、草の根のように細い神経へと形を変え、太ももの裏側と、膝から下の運動や感覚を担います。
この神経の通るどこかで圧迫や引っ張る力が加わることで、坐骨神経を刺激し痛みやしびれなどを引き起こします。
また、坐骨神経は筋肉と骨の間をすり抜けるように足先へ向かいます。
神経自体が悪さをすることはほとんどなく、基本的には神経まわりの筋肉が腫れることや、炎症に伴い神経とまわりの組織が癒着(ゆちゃく)してしまうこと、あるいは腰椎と呼ばれる腰骨の変形やヘルニアなどによる物理的な圧迫などが原因で、坐骨神経痛を引き起こします。
なにかしらの原因により痛みなどが現れるのが坐骨神経痛のため、医療機関では「坐骨神経痛」という診断病名がつくことはありません。
たとえば各種検査の結果、腰椎椎間板ヘルニアという病気が見つかった場合、「腰椎椎間板ヘルニア」という診断になります。

どんな症状が出る?

坐骨神経は腿の後ろと膝から下の運動と感覚を担うため、症状は人によって全く違います。
例を挙げると、以下のような症状が現れます。

  • ●お尻の痛み
  • ●足全体、もしくは一部の痛みやしびれ
  • ●足が冷たく感じる、火照るように熱く感じる
  • ●足の指が動かしにくい、力が入らない
  • ●足がずっと圧迫されている感じがする

すべての症状が出ることもありますが、足裏の痛みだけが現れることもあります。
一定した症状が出ないことが、坐骨神経痛の特徴ともいえます。
痛みとしびれを伴う場合もあれば、痛みだけが現れる場合もあります。
坐骨神経の圧迫が強いほど、これらの症状が強く現れる傾向にあります。
腰痛はあるがお尻や足に痛み、しびれなどがない場合は、坐骨神経痛ではない可能性が高いです。

隠れている病気は多岐にわたる!

坐骨神経痛を引き起こす病気は、主に腰椎と呼ばれる腰の骨に由来するものと、お尻まわりの筋肉に由来するものの2通りあります。
主要な病気の解説と、それぞれにオススメの対処法をお伝えします。

●腰椎に由来する病気

腰椎に由来する病気として、腰椎椎間板ヘルニア、仙腸関節炎、腰部脊柱管狭窄症の3つが挙げられます。

1)腰椎椎間板ヘルニア

前屈みになったときに走る痛み 腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアは、腰椎の背骨と背骨の間にある椎間板といわれる軟骨に傷がつき、椎間板の中にある髄核(ずいかく)と呼ばれるゼリー状の組織が飛び出て神経を圧迫することで、痛みやしびれなどの症状を引き起こします。
この椎間板は本来クッション材としての役割を担っていますが、加齢によりその弾力が失われ緩衝材としての役割が低下することで傷つきやすくなり、発症のリスクが高まります。
骨格や姿勢には個人差があり、椎間板にストレスが加わりやすい体の使い方をすることで、日常的に軽微な負荷が積み重なり、ある日些細な動作をきっかけに亀裂が入ることもあります。
具体的には、前かがみや中腰姿勢で長時間作業をすることや、重いものを急に持ち上げようとしたりすることで、椎間板に傷がつきやすいとされています。
いわゆる前かがみの動作で痛みが出て、後ろに反り返るような動作は痛みなく行うことができる場合は、椎間板ヘルニアである可能性が高いといえます。
オススメの対処法としては、うつ伏せに寝た状態から、腕立て伏せの要領で腰を反らせる方法です。
腰を反らせることで、飛び出た髄核を元の位置に戻すような力が加わり、神経への圧迫を軽減することにつながります。
この病気を確定するためには、一般的なレントゲン撮影のみでは不十分です。
そもそも軟骨や水分はレントゲンには写らないため、MRIを撮影し、どの背骨の間の椎間板がどの程度、どの方向に飛び出ているかを確認する必要があります。
急に痛みやしびれが出てきた場合には、椎間板が傷つきヘルニアになっている可能性がありますので、まずはお近くの整形外科を受診することをオススメします。

2)仙腸関節炎

仙腸関節とは、手を腰に当てたときに触れることができる左右の腸骨(ちょうこつ)と、その間にある仙骨(せんこつ)で構成される関節です。
仙腸関節自体はほとんど可動性をもたない関節で、多くの靭帯(じんたい)と呼ばれる硬いヒモのような組織で固定され、安定を保っています。
日常生活のなかで繰り返される動作や、身体の使い方のかたよりによって仙腸関節まわりの靭帯に負荷がかかり、仙腸関節がねじれて靭帯に炎症が起きることで、痛みやしびれが出ます。
特徴的な症状としては、長時間座っていられないこと、仰向けに寝ることができない、歩きはじめは痛みがあるが徐々に痛みがとれてくる、正座は全く問題ないなどです。
仙腸関節炎の場合は、患部の安静を保つために骨盤にサポーターなどのベルトを巻くことがオススメです。
もしこの方法で痛みが軽減するようであれば、仙腸関節周囲の靭帯が影響している可能性があります。
また、直接炎症が起きている部位に炎症を抑制する薬を注射することで、即時的な痛みの軽減が期待できます。
特別な誘引がなく痛みが出てきた場合、日常生活動作での繰り返しが靭帯に負荷をかける原因となった可能性があります。
特に多いのが、足を組む癖がある、立つときに利き足にばかり体重を預けているなど、左右に負担がかたよってしまっているケースです。
日常のなかでなるべく左右均等に体重をかけるように意識することも、病気の予防につながります。
まずは日頃ご自身にどんな癖があるかを注意深く、観察することからはじめてみましょう。

3)腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

腰を伸ばしたときに走る痛み 腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症とは、腰椎と呼ばれる腰の骨が加齢や負荷の集中によって少しずつ変形し、脊柱管と呼ばれる神経の管を狭めることで、足に痛みやしびれなどの症状が出ます。
また、腰椎にある黄色(おうしょく)靱帯と呼ばれる骨を支える靭帯が分厚くなって神経の通る脊柱管を圧迫し、神経に対する血流が低下することなども原因になります。
腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状は、長時間歩くことができないことです。
この状態は間欠性跛行(かんけつせいはこう)
といいます。
一般的に脊柱管は、猫背のように前にかがむような動作で拡大し、後ろに反り返るような動作で狭まります。
このため、座って姿勢を崩しているときは症状はないが、歩くときなどに腰を伸ばすような反る刺激が加わると、神経への血流が低下し、痛みやしびれが現れるのです。
基本的に一度変形してしまった骨は手術以外では治すことはできないため、運動療法と内服療法を併用し、これ以上症状を悪化させないことが重要となります。
運動療法としては、椅子に浅く腰掛け、椅子の下をのぞき込むように腰を丸める体操がオススメです。
脊柱管を広げるようにストレッチをかけるとともに、変形による腰椎の可動域が狭くなることを予防します。
内服療法としては、医師の指示のもと処方された神経に対する血流障害の改善を目指す薬があります。
まずはかかりつけの医療機関に相談し、主治医の指示を仰ぐことをオススメします。

●筋肉に由来する病気

長時間座っていると発生するしびれ 梨状筋症候群

筋肉に由来する病気として、梨状筋(りじょうきん)症候群というものがあります。
梨状筋は股関節のインナーマッスルと呼ばれ、お尻の深いところにあります。
梨状筋が坐骨神経痛に原因する理由は、坐骨神経との位置関係にあります。
骨盤の骨と梨状筋の間に坐骨神経が位置するため、梨状筋が固くなると坐骨神経を骨との間で圧迫し、足に痛みやしびれなどの症状が出てきます。
足を組むような格好をとると、この梨状筋にストレッチがかかり、長時間この姿勢が続くことで梨状筋をはじめとしたお尻の筋肉への血流が低下してしまいます。
デスクワークで座っている時間が長い方は、梨状筋を含めたお尻の筋肉への血流が低下しやすく、梨状筋症候群を引き起こすリスクが高いといえます。
予防する方法としては、20分に1回は立ち上がるようにするなど、長時間お尻にかかる圧迫を避けることがオススメです。
また、日頃から股関節まわりの筋肉を柔らかく保つことも予防に効果的です。
お風呂上がりにお尻まわりのストレッチをすることや、テニスボールなどで筋肉をほぐしてあげるだけでも筋肉の緊張がほぐれ、予防につながります。
日頃のメンテナンスが重要になりますので、股関節まわりの筋肉に硬さがある場合は、これらの筋肉をほぐすことで症状が軽減するかを試してみてください。

こんな症状のときはすぐに医療機関へ!

お伝えした足に広がる痛み以外に、注意したい症状があります。
これらは腰痛の危険兆候(レッドフラッグ)と呼ばれ、重篤(じゅうとく)な病気が隠れている可能性があるため、注意が必要な症状になります。

  • ●発症年齢が20歳未満、または50歳以上の腰痛
  • ●時間や活動に関係のない持続的な神経痛
  • ●転倒などの外傷後に生じた神経痛
  • ●急激な体重の減少
  • ●痛みに伴う発熱
  • ●広範囲に及ぶ痛みやしびれなどの症状
  • ●お小水が出にくくなった

これらの症状がある場合、以下のような病気が隠れている可能性があります。

  • ●腰椎の悪性腫瘍やほかの臓器がんの腰椎転移
  • ●腰椎の感染症
  • ●腰椎骨折
  • ●解離性大動脈瘤
  • ●強直性脊椎炎
  • ●馬尾神経障害

これらの病気は、早急に対応しなければ命に関わることや、後遺症としてしびれや痛み、お小水が出にくいなどの症状が残る可能性もあります。
このため、ただの坐骨神経痛だろうと自己判断せずに、まずはかかりつけの医療機関を受診し、適切に検査してもらうことをオススメします。

  • 執筆者

    菊池 隼人

  • 理学療法士として、整形外科に勤務する傍ら、執筆活動をしています。
    一般的な整形分野から、栄養指導、スポーツ競技毎の怪我の特性や、障害予防、 自宅でできる簡単なエクササイズの方法などの記事を書くのが得意です。
    仕事柄、介護部門との関連も多く、介護の方法を自分が指導することもあります。

    保有資格等:理学療法士、福祉住環境コーディネーター2級

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