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  • 桑原

    公開日: 2021年06月24日
  • 体力づくり

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今日から自宅でできる。がんや心臓病の予防にも効果大、高齢者の足の筋トレについてご紹介

超高齢社会の現在の日本において、いかに健康的に長く過ごすかという健康寿命も大きな焦点となっています。
そこで今、高齢者に対する運動の重要性が叫ばれています。
今回は高齢者の足の筋トレについて、筋トレの重要性や、ご家庭でもできる簡単な筋トレをご紹介します。

おうちでできる簡単筋トレのご紹介

高齢者にとって足の筋トレはとても重要。体力維持、健康寿命の延長など多岐にわたるメリットがある

どうして高齢者には足の筋トレが重要なのでしょうか?

●足の筋力をつけると、体力の維持だけではなく健康寿命の延長にも

ふくらはぎは第2の心臓といわれています

足の筋トレは体力を維持できると同時に、歩行能力の向上も期待できます。
歩行能力の向上は運動習慣を構築しやすく、運動に体を慣らすことにつながるのです。
それにより、高齢者のロコモティブシンドローム、心臓病患者さんの運動能力低下によるフレイルやサルコペニアといった筋力・体力の低下を防ぎ、健康に過ごすことのできる寿命を延ばすことができます。
健康寿命とは、心身ともに自立し、健康上の問題で日常生活に支障が出ない生活を送れる期間としており、日常生活での動作時に心拍数が上がりにくくなる、運動への予備力が増える、社会参加が可能となるといったさまざまな利点が足の筋トレで得ることができます。

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●高齢者にとって足の筋トレは転倒予防にも効果的

下肢の筋力トレーニングは歩行時の推進力や持久力だけでなく、転倒しそうになったときに踏ん張ったり、歩行時に足が上がらずちょっとした段差につまずきそうになるという危険からの回避にも役立ちます。
たとえば、ふくらはぎの筋肉が弱くなると歩行時に地面を蹴る力が弱くなり、足を持ち上げる必要があるため、つまずきやすくさらに疲れやすい歩き方となります。
つまりふくらはぎの筋トレを行うことで、より楽にまた安全に歩くことができるのです。
また股関節周囲の筋肉を鍛えると歩行中のふらつき時にバランスを取ったり、踏ん張ったりすることが可能であり、転倒予防にも効果が得られます。

高齢者にとって足の筋トレは、がんや心臓病の予防としても大切

高齢者の方に対する足の筋トレは、心臓病やがんの予防にも有効だと証明されています。

●心臓病と診断されている高齢者の方には足の筋トレが再入院する確率、要介護のリスクを軽減する

日本の死亡原因の第2位 心臓病

現在日本の死亡原因の第2位となっている心臓病。
心臓病と診断された方が足の筋トレなどの運動習慣をつけることは、生活の質の向上、運動に対する対応能力の向上、心不全の重症度の改善などに効果があるとされています。
また、心臓病の悪化による再入院する確率が下がるため、運動と健康の結びつきが大きいことがわかります。
要支援や介護度1の高齢者の介護度の進行、つまり悪化は、立ち上がりや歩くといった足の筋力低下が原因となっており、日常生活動作に支障を来します。
つまり、足の筋トレは高齢者の介護度に大きく作用する要因といえるでしょう。

●足の筋トレはがんの予防にも効果的。あまり知られていないがんの予防と運動の関係とは

がんの要因の一つとして生活習慣が問題視されており、以前から注目されている喫煙のほかに、運動不足や肥満、飲酒などが予防要因として挙げられています。
特に、運動不足と関連が深いといわれているのが大腸がん、肥満に関しては食道・大腸・乳房・子宮・腎臓・肝臓・膵臓のがんです。
足の筋トレなどの運動をすることにより、インスリン抵抗性の改善や免疫機能の増強や、腸内の食べ物の通過時間の短縮など、がんの予防に役立っているといわれています。

今日からご自宅でも簡単にできる、高齢者向けの足の筋トレをご紹介

ここで高齢者の方が今日からご自宅でも行える簡単な筋トレからご紹介しましょう。

股上げ 足指の運動 膝・足首伸ばし

●膝や腰が悪くても大丈夫。自宅でもできる座りながら行う足の筋トレ

まずは安定した椅子を用意し腰をかけます。
このとき椅子の高さはご自身の身長と膝や股関節の状態に合わせましょう。
膝や股関節に痛みや制限がある場合には、座面の高いものをお勧めいたします。

1)股関節の筋トレ

  • ○腿上げ 左右10回ずつ〜:椅子の両サイドの座面をつかみ、膝を胸につけるように椅子の座面から太ももの裏面を浮かせます。このとき体が後ろに反らないようにしましょう。
  • ○お尻の筋トレ 左右10回ずつ〜:太ももの裏側にゴムボールや細長く巻いて筒状にしたバスタオルなどを入れ、太ももの裏でグッと押し付けます。

2)膝、足関節の筋トレ

膝、足首伸ばし 左右5回ずつ〜:椅子に少し浅く腰掛け、膝をゆっくりと足が真っすぐになるまで伸ばし、その状態で足首を反らせたり、指先を下に向けたりして足首を上下に動かします。次にゆっくりと曲げて元の位置に戻します。

3)足指の筋トレ

タオルをつかむ 左右共に10回〜:足元にバスタオルを敷いてその上に両足をのせます。足の指で、タオルをつかみ離します。

これらの運動は高齢者でも安全に座って、テレビを見ながらでも行える足の筋トレとなっています。
股関節の筋トレに関しては10回ずつに設定していますが、ご自身の体調に合わせて回数は調節してください。

●立って行うとさらに筋力アップ。立って行う筋トレは安全を確保しよう

まずはテーブルなどの支えになるもの、壁や手すりの前に立ちます。
その際いつでも休息が取れるように椅子を一つ用意しておくと良いでしょう。
不安定な場合には机や手すり、壁などを支えにしましょう。

1)股関節の筋トレ

  • ○立ち上がり5回〜:浅く腰掛け、両足をしっかりと床につけた状態から立ち上がります。
  • ○段差昇降(立位)左右5回〜:膝をしっかりと曲げ、前方に体重をかけて段差を上がり、爪先から踵にかけてうまく体重移動させながら段差を下りましょう。片足立ちのバランスが悪い方は、手すりや机などを持って行いましょう。

2)膝関節の筋トレ

  • ○壁や机を持って体を支え、膝の屈伸(スクワット)運動(両膝5回〜)
  • ○レッグカール 左右5回ずつ〜:壁や机を持って体を支え、踵をお尻につけるように膝を曲げる

3)足関節の筋トレ

  • ○踵上げ 1・2回〜始めましょう:壁や机を使って両手で体を支え、踵を床からはなし爪先立ちの姿勢を取りましょう。休憩を入れながら行うようにしましょう。

立位での足の筋トレは、特に安全に行えるように十分に注意して行うようにしましょう。
体調に合わせて無理のない範囲で回数を調節しましょう。

今日から始めてみましょう。足の筋トレは高齢者にとって多岐にわたる効果がある

高齢者に対する足の筋トレの重要性は、体力だけではなく健康寿命にも大きく影響するため注目を浴びています。
また心臓病やがんに対する予防効果、介護度の悪化を予防するなどその効果は多岐にわたります。
あなたの健康寿命、さまざまな病気の予防のためにも今日からご自宅でも始めてみませんか。

参考:
後藤葉一: わが国における心臓リハビリテーションの現状と将来展望. 日本冠疾患学会雑誌21巻1号: 58−66, 2015.(2021年5月24日引用)
厚生労働省 運動器の機能向上マニュアル(改訂版) 平成21年3月 p.35.(2021年5月24日引用)
国立がん研究センター がん情報サービス 科学的根拠に基づくがん予防 (2021年5月24日引用)

  • 執筆者

    桑原

  • 1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
    その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。

    保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士

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