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体操・ストレッチ 高齢者

毎日続けたい!高齢者が座ってできる運動を現役理学療法士がレクチャー

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「運動をしないとね」「体を動かさないと…」
やったほうがいいのはわかっているけど、そんなには動けない。
体力が低下していたり、要介護状態になったご高齢の方は、ちょっとした運動がなかなかできないものです。
そんな方のために今回は座ってできる運動をまとめてみました。
ぜひご高齢のご家族と一緒にやってみてください。

座ってできる簡単エクササイズ!腕の体操編

まずは腕の体操からいきましょう。
腕の機能を保つことは、主に着替え・食事といったADL(日常生活動作)の維持につながります。

1)グーパー運動

両手を前に伸ばした状態でグーパーグーパーを繰り返します。
指の関節可動域(関節が曲がる範囲)と握力の維持が期待できます。
また、腕を前に伸ばしたままで行うことで、腕をあげるための筋肉も鍛えることができるでしょう。

2)肩回し運動

指先を肩にのせたまま、肩を回していきます。
前まわしをした後は後ろ回しをしましょう。
ゆっくりと大きく回すことによって、肩の関節可動域の維持につながります。

3)座ってボクシング

その名の通り、座って行うボクシングです。
拳を握って、両手で交互にパンチをだします。
腕全体の筋力トレーニングになりますし、何度も繰り返し取り組むと有酸素運動としても効果的です。
音楽などを流して行うとリズムがあって楽しくできるかもしれません。

4)背筋伸ばし

体の前で手を組みます。
手を組んだまま、上に手を挙げていきます。
肩の関節可動域の維持と背筋を伸ばす練習になります。
肩に関節可動域の制限がある方はできる範囲で行い、無理に高く挙げないようにしましょう。

5)胸を張って深呼吸

両手を広げて大きく息を吸い手を閉じながら息を吐きます。
吸うときは鼻から吸い、口から長く時間をかけて吐いていきます。
ゆっくりと深く呼吸をするようにしましょう。
普段姿勢が丸まってしまいがちな方には、特におすすめです。

座ってできる簡単エクササイズ!足の体操編

次は足の体操を紹介していきます。
足の体操をすることで筋力の維持を行い、歩行能力や立ち上がりなどの動作の改善につなげていきます。
歩行や立ち上がりなどの能力は基本的な生活動作にもつながりますので頑張って行いましょう。

1)ひざ伸ばし運動

座ったまま両ひざをピンと伸ばした位置で10秒程度静止します。
大腿四頭筋(だいたいしとうきん)とよばれる太もも前面の筋力強化ができます。
余力がある方は足に重りをつけて負荷を大きくすることで、より効果的に筋力強化ができます。

2)もも挙げ運動

片脚ずつ、交互にもも挙げを行います。
もも挙げをすることで腸腰筋(ちょうようきん)と呼ばれる背骨と股関節をつなげる筋肉を強化することができます。
両足を一緒に持ち上げると腹筋の強化にもなりますので、余力がある方は行ってみましょう。

3)つま先立ち運動

かかとを持ち上げ、つま先立ちになることでふくらはぎの筋力強化が行えます。
座った状態でこの運動を行う際は、つま先に少し体重をかけて、ふくらはぎの筋肉が働いていることを意識してみてください。
逆につま先を持ち上げることで前脛骨筋(ぜんけいこつきん)と呼ばれる脛(すね)の前面部分の筋力強化をすることができます。

4)太もも後ろのストレッチ

片脚のひざを伸ばして、体を前に倒していきます。
ハムストリングスという太もも後面の筋肉のストレッチができます。
「気持ち良い」と感じる程度に、筋肉を伸ばしていきましょう。

5)内もも運動

内ももをくっつけるように両足を閉じていきます。
内転筋(ないてんきん)という内ももにある筋力強化ができます。
枕やバスタオルを挟んで行ったほうが、運動していることを実感できるのでおススメです。

座ってできる簡単エクササイズ!全身運動編

最後は座ってできる全身運動です。
有酸素運動のような効果が見込める、運動とえん下(えんげ)機能を高める顔の運動、体幹の運動を紹介していきます。

●有酸素運動編

心肺機能が低下してくるとあまり動きたくないと思うようになり、やる気も低下してきます。
そして運動する量がさらに減少してしまうため、心肺機能が低下するという悪循環に陥ってしまいます。
高齢者の活動性を高めていくためにも有酸素運動は重要になります。

1)両手でペダルこぎ運動

顔の前でタオルを両手で持ち、ピンっと張った状態にします。
その状態を保ちながら腕を前後に回していきます。
あまりに早く回しすぎるとすぐに疲れてしまいますので、長い時間続けられるように自分のペースで回しましょう。

2)座ってウォーキング

座ったまま足踏みをしましょう。
足踏みに合わせて腕も一緒に振りましょう。
「1、2、1、2」と声掛けしながら行うとリズムもつかみやすくなります。

どちらの運動も「ややきつい」と感じる程度の強度で行いましょう。
本人の体調にあわせて行ってもらうのが一番良いですが、あまりにも短すぎると有酸素運動にはならないので注意しましょう。

●顔の体操編

高齢になってくるとえん下機能(飲み込む力)が低下してしまいます。
誤えん(ごえん)してしまうと誤えん性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こし、命の危険も伴うため、できるだけえん下機能を維持していきたいところです。

1)大きな声で「あ」「い」「う」「え」「お」

口やあご、舌を動かすトレーニングになります。
口を大きく開き、「あ」「い」「う」「え」「お」とゆっくり、大きな声をだしてみましょう。
ほかにも「パ」「ピ」「プ」「ぺ」「ポ」と言うのも効果的です。

2)早口言葉

早口言葉もえん下機能を維持するために有効です。
「生麦生米生卵」「赤パジャマ黄パジャマ茶パジャマ」など、一般的に知られている早口言葉をゆっくりでいいので発声していきましょう。

これらの運動を食事前に行うことで誤えんを予防することが期待されています。
食事前の習慣として顔の体操を行ってみてはどうでしょうか?

●体幹の運動

最後に体幹の運動を紹介します。

1)腰捻り体操

座った状態で腰を左右に捻ります。
高齢になってくると体を捻る動作が難しくなるので、痛みがでない範囲で行いましょう。
骨粗しょう症や脊柱管狭さく症などの疾患を患っている方が無理に捻ると、症状が悪化することがあるので注意しましょう。

2)おじぎ体操

ひざに手を置き、体を前に倒していきます。
余裕があれば手を下に伸ばして、地面に着くまで前に倒してみましょう。
体を前に傾けることができるようになると、立ち上がり動作もスムーズに行いやすくなりますし、自分で靴の着脱ができるようになります。

まとめ

要介護状態になった方や体力が低下してきた方は、できることなら誰の世話にもならずに、日常生活を過ごしたいと思っているでしょう。
定期的な運動は筋力やADL(日常生活動作)の維持、さらには認知症の予防にも効果があるという報告が多くあります。
今回は座ってできる体操を紹介してきましたが、一人ではなかなか運動は継続できません。
しかし周りの人や家族が協力することで、運動を継続することが可能になり、ご本人のQOL(生活の質)の向上につながってくると筆者は考えています。
介護者の負担を減らすために、ご高齢の方が少しでも自分で生活できるように、みなさんで運動をしていきましょう。

あわせて読みたい:
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参考:
長屋政博:認知症に対する運動及び身体活動の効果:Jpn Rehabili Med47:637-645,2010(2018年2月15日引用)

  • 執筆者

    鴨居 健一

  • 専門学校卒業後、理学療法士として整形外科病院に勤務しています。
    大腿骨骨折などの高齢者の骨折の手術後はもちろんのこと、靭帯損傷などのスポーツ外傷や成長期のスポーツ障害、慢性疾患など幅広く対応しています。
    日本理学療法士協会認定の認定理学療法士(運動器)も取得しています。
    また、中学生の野球チームへのトレーナー活動や、車椅子テニス大会などのサポート経験もあります。
    皆様の疑問に答えられるような執筆をしていきたいと思います。

    保有資格:保有資格、理学療法士、認定理学療法士(運動器)

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