高齢者に多い脊椎圧迫骨折を予防するには!?理学療法士が具体的な対策をお伝えします
小さな衝撃でも起こる骨折を知っていますか?
背骨の骨折である脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)は、転倒や事故などの明らかな外傷がなくても起こりうる骨折です。
高齢者になって骨がもろくなると、少しの衝撃で脊椎圧迫骨折を発症することがあるため、しっかりと予防することが重要です。
そこで本記事では、高齢者に多い脊椎圧迫骨折の原因や予防法を、理学療法士がわかりやすく解説していきます。
目次
なぜ高齢者は脊椎圧迫骨折が起きやすいの?原因や影響について解説します
脊椎圧迫骨折の対策や予防法を理解するために、まずは脊椎圧迫骨折の原因や日常生活に生じる影響について解説したいと思います。
◯脊椎圧迫骨折は骨粗鬆症と密接に関係している
元文ら(2009)によると脊椎圧迫骨折が発生する割合は、60代で10%前後、70代になると40%前後になるとされており、高齢になるほど発生しやすい骨折であるといえます。
また、男性より女性の方が約2倍発生する割合が高く、女性は特に注意しなければなりません。
このように、高齢者や女性に発生しやすいのは、脊椎圧迫骨折が骨粗鬆症と大きく関係しているためです。
通常、骨は古い骨が吸収されて、新しい骨がつくられるというサイクルを繰り返し、頑丈な状態を保っています。
しかし、高齢によってその機能がうまく働かなくなると、骨がもろくなる骨粗鬆症になり、小さな衝撃でも骨折しやすくなります。
とりわけ女性の場合は、閉経によってホルモンの分泌が悪くなるため、骨の吸収と新しい骨がつくられるバランスも崩れやすくなります。
そのため、閉経以降の女性ほど骨粗鬆症になりやすく、転倒による衝撃だけでなく、くしゃみ、中腰の姿勢といった外傷のない動作などでも、脊椎圧迫骨折が発生しやすくなるのです。
◯日常生活に大きな支障をきたすことも!脊椎圧迫骨折によって生じる影響とは
脊椎圧迫骨折が生じた直後は、骨折部を中心として痛みがでます。
特に寝返りや起床時などの動作を行うときに、強い痛みが生じるため、日常生活の動作が非常に困難になります。
また、骨折が治ったあとも、背骨が曲がったままになってしまうことがあり、そのゆがんだ姿勢が影響して腰痛を招くことがあります。
骨折の状態によっては、しびれや麻痺などの神経症状が見られる場合もあり、日常生活にも大きな支障をきたす危険性があります。
若い頃から予防が大切!脊椎圧迫骨折を予防するために実践したいポイント3選
高齢になっても骨を丈夫に保つためには、若い頃から骨を強くしておく必要があります。
具体的には、思春期までに骨を丈夫にするような食生活や運動習慣を整えることが、骨粗鬆症の予防には非常に有効です。
しかし中高年においても、運動や栄養、生活習慣などの点に注意することで、骨粗鬆症や骨折のリスクを減らすことができます。
ここでは、骨を強くして脊椎圧迫骨折を予防するために実践したいポイントを3つ紹介します。
1.栄養管理
骨粗鬆症を予防するためには、骨を頑丈にするために必要な栄養素をしっかり取る必要があります。
みなさんもご存じのように、カルシウムは骨の量を増やすために必要ですが、ビタミンDも骨を丈夫にするためには重要な栄養素とされています。
また、骨の量が増えても、骨の質が良くならなければ骨の強度は上がりません。
骨の質を高めるためには、ビタミンB群や葉酸をしっかり摂取する必要があります。
2.運動
骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインによると、積極的に活動する人は骨粗鬆症による骨折が少ないとされています。
また、思春期を含めて継続的に運動を行うことで、骨密度の低下を防ぎ、脊椎圧迫骨折の予防をすることが可能です。
脊椎圧迫骨折の原因となる転倒を予防するためにも、運動は効果的ですので、ぜひ実践することをオススメします。
のちほど、具体的な運動方法をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
3.生活習慣
喫煙や飲酒といった生活習慣は骨粗鬆症のリスクを高め、脊椎圧迫骨折の発生につながります。
また、カルシウムの吸収を助けるビタミンDは紫外線を浴びるごとで活性化されます。
そのため、家に閉じこもりがちになり外出頻度が少なくなると、ビタミンDが活性化されず、カルシウムの吸収が妨げられるため注意が必要です。
外出をすることは大事なのですが、すでに骨粗鬆症の診断を受けている場合は、背骨に衝撃を与えないような動作をする必要があります。
転倒をしないように注意することはもちろん、腰を長時間かがめる姿勢をとらない、勢い良く座らないといったことに注意しましょう。
理学療法士がオススメする!脊椎圧迫骨折予防のための運動
それでは脊椎圧迫骨折の予防に効果的な運動を、筆者が普段から指導している例を交えながら紹介したいと思います。
1.骨粗鬆症予防のためにはウォーキングを習慣化しよう
屋外で日光を浴び、骨に体重をかけてほどよい刺激を与えるという点では、ウォーキングがオススメです。
ビタミンDの活性にかかる時間は30分程度ですので、可能であれば一日30分以上を目安にウォーキングを実施するようにしましょう。
2.転倒予防のためのバランス運動をしよう!
脊椎圧迫骨折の原因となる転倒を防ぐために、バランスを鍛える運動をしましょう。
バランスを鍛えるためにはロコモーショントレーニングがオススメです。
運動方法は非常に簡単で、以下の3種類があります。
◯開眼片足立ち
目を開いた状態で、片足を1分間あげる運動です。
左右1回ずつ、1日3セット行いましょう。
◯スクワット
ゆっくり膝の曲げ伸ばしを行いましょう。
真っすぐに立ち、椅子に座るように膝を曲げていくのがコツで、曲げた膝がつま先より前に出ないように注意しましょう。
5〜6回を1セットとして、1日3セット実施しましょう。
◯カーフレイズ
ゆっくりと踵(かかと)を上げてつま先立ちになり、ゆっくりと下ろしていく運動です。
10回を1セットとして、1日3セット実施するようにしましょう。
3.圧迫骨折予防には体幹トレーニングがオススメ
背筋力強化を中心とした体幹筋力トレーニングを行い、腰にかかる負担を減らしたり、姿勢が前かがみになってしまうのを防ぐようにしましょう。
具体的な運動として、ドローイングインとダイアゴナルを紹介します。
◯ドローイングイン
深呼吸をする要領で、大きく息を吸って、口をすぼめながらゆっくり息を吐きます。
そして、息を吐きながらできる限りおなかをへこますようにしましょう。
そうすることで、コルセットの役割を果たす腹筋である、腹横筋(ふくおうきん)を鍛えることができます。
◯ダイアゴナル
背中が丸くなったり、反ったりしないように意識しながら、四つばいになります。
片方の手を上げ、上げた方と反対の足も上げながら、ぶれないように姿勢を保ちます。
この運動で、背筋のなかでも背骨をしっかりと支える脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)という筋肉が鍛えられます。
まとめ
脊椎圧迫骨折を予防するポイントは、栄養や運動に気をつけて骨粗鬆症を予防することと、転倒などで背骨に強い衝撃を与えないことです。
自分自身はもちろん、周りの方と一緒に予防に取り組むことで、運動の継続や予防への意識を高めることにつながります。
今回の内容を周りの皆さんで共有して、一緒に脊椎圧迫骨折の予防に取り組んでみましょう。
参考:
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版(2018年3月4日引用)
元文 芳和:骨粗鬆症性脊椎椎体骨折.日医大医会誌5(2):125-129,2009
遠藤 直人(監修): 病気がみえる vol.11 運動器・整形外科 第1版. MEDIC MEDIA, 東京, , pp.426-437.
三森 由香子:ビジュアル 実践リハ 整形外科リハビリテーション カラー写真でわかる リハの根拠と手技のコツ.相澤 純也(編) ,羊土社,東京, pp.407-416.
立野 伸一:脊椎圧迫骨折に起因する腰痛に対する理学療法.理学療法34(9):816-822,2017.
安田満喜子 さん
2020年7月15日 12:04 PM
76歳女性です 五年前松の枝におでこをぶつけ真後ろに転倒松の根っこに思いっきり背中をぶつけ、一週間の入院で、リハビリは夫の献身で家で続けました。半年間は家事はできませんでしたが、当時尾骶骨が痛み座っていることが困難で、また眠る際もいきなり仰向けにはできませんでしたが一年程でその痛みもなくなり、直ぐに長く楽しんできた卓球・ゴルフもできるようになり、ただ現在体力が低下、膝の痛みなどは一度も経験がありませんが、真っ直ぐに姿勢を正して歩くのが辛く、また重い物を持つ習慣がなかったせいか背筋腹筋が全くありません。この度のアドバイスはとっても参考になりました。有難う
ございました。未だ元気で過ごしたいと希望が持てました。