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体操・ストレッチ

五十肩の治し方と予防のためのストレッチ方法。理学療法士が具体的に解説

ある日突然、肩に痛みが走る「五十肩」。
五十肩になると、痛みによって手が挙がらなくなったり、夜もゆっくり眠れなくなったりします。
日常生活に大きな影響を与える五十肩ですが、治療法がないわけではありません。
今回は、病院で受けられる五十肩の治療法や、自宅でもできるストレッチの方法を解説していきます。

五十肩になりやすい人は?五十肩で多い症状を解説

五十肩の正式名称は「肩関節周囲炎」といいます。
中高年から多く見られ、50代の方に多いことから五十肩と呼ばれていますが、40代の方でも60代の方でも発症します。
はっきりとした原因はわかっていませんが、発症しやすいリスクが存在することはわかってきました。

●生活習慣の見直しも?!五十肩になる要因にはあの内科的な疾患も!

理学療法ガイドラインによると、五十肩になる要因として以下のようなものが挙げられています。

  1. 1)糖尿病
  2. 2)肩関節術後
  3. 3)甲状腺疾患
  4. 4)血中脂質
  5. 5)職業

これらの原因をみてみますと、糖尿病や血中脂質など日頃の生活習慣が影響している可能性が高いと考えられます。
このほかにも臨床でよく見かける例では、肘や手首を骨折したあとに、ケガをしたほうの腕をあまり使用していなかったり、喫煙歴や心臓手術、くも膜下出血などの既往がある方も五十肩のリスクが高まるといわれています。
また職業ではデスクワーク中心の仕事の方に多いといわれています。

●特徴的な症状!激痛と結帯、結髪動作の制限

五十肩の特徴的な症状は、痛みと関節可動域の制限になってきます。
痛みは安静時、夜間、運動時のいずれのときにも発生します。
あまりの痛さに、歩いているときでもほとんど手を振らないなどの様子もみられることがあります。
関節の可動域は痛みによって各方向に制限されますが、主に腕を上に挙げる動きと帯を締めるように腰の後ろに手を回す動き(結帯動作)頭の後ろに手を持っていく動き(結髪動作)に制限がでることが特徴です。

五十肩はなかなか治らない!病院での治療法と治療期間

五十肩は一度なってしまうと治療が長期化することが多いです。
まずは投薬で痛みをコントロールし、痛みが落ち着いてから徐々にリハビリをすすめていくことになります。

●投薬、注射で痛みをコントロール!

痛みが強い時期は、炎症を抑えるために飲み薬や湿布、注射などを使って痛みをコントロールしていきます。
あまりにも痛みが強い方は、三角巾やスリングを使用して腕を安静に保つようにすることが有効です。
理学療法ガイドラインには、
「運動療法の積極的な介入、特に発症初期での介入が好ましくない影響を及ぼしていることを指摘する文献も見られた。 これは早期の炎症収束と運動強度の選択の重要性を示している」
とあります。
つまり、五十肩の発症初期には、炎症の状態や運動の強さを十分に検討してリハビリを行っていく必要があることを意味しています。
筆者の場合は、この時期のリハビリではリラックスしてもらうこと、痛みのでない楽な姿勢を見つけてもらうことを重点に行っています。

●痛みが引いたら少しずつリハビリを!

初期の痛みが軽減してくるにしたがって、痛みよりも肩の可動域制限の訴えが多くなってきます。
痛みが引いてきたら、徐々に関節可動域を広げる運動やストレッチ、筋力トレーニングを行うようにしましょう。
温熱療法とストレッチを併用して行うと効果も高まるため、リハビリ前にホットパックなどで温めてから行うことも有効です。

●治療期間は数カ月から数年にわたるが…多くのケースは自然に治る!

五十肩の予後は比較的良好で、多くの方は自然に治っていきます。
しかし、治療期間は長期化することが多く、半年~1年以上かかる場合もあり、精神的なフォローも重要になってきます。
自然に治るといっても、残念ながら痛みや関節可動域制限が残ってしまう方もおり、痛みの持続期間や職業、糖尿病の有無などによっても左右されます。

自宅でできる五十肩の治し方と予防法は?セルフケアを病期別に解説!

五十肩は病期によってアプローチの仕方が大きく変わってきます。
病期は痛みが強い「急性期」、少し和らいできた「慢性期(凍結期)」、安静にしていれば痛くない「回復期」の3つに大きく分けられ、たとえば痛みが強い急性期に「じっとしておくのは良くない」と勝手に判断して肩を使ってしまうと、症状はさらに悪化します。
急性期以外の時期では特に安静にする必要はなく、痛みに合わせてできる範囲のことは行っていくようにします。

●痛みの強い急性期に無理は禁物!!就寝時にも工夫を

この時期は痛みをとることが先決になるので、無理な運動は控えるようにしましょう。

1)少しでも眠れるような姿勢を見つける!

五十肩のつらい症状として「夜間痛」があります。
夜間痛があると夜に睡眠をとることができず、睡眠不足による疲労の蓄積やストレスなどで、日常生活にも大きな影響を与えます。
夜間痛を軽減させるポイントは、腕が体より後ろにいかないようにすることです。
あおむけで寝るときは、腕の下にタオルやクッションをいれるようにしましょう。
横向きで寝るのも効果的です。
寝転ぶと痛みがでるような場合は座った状態でもいいので、少しでも睡眠をとるようにしましょう
眠ることで筋肉の緊張がほぐれたり、精神的にもリラックスすることができるようになります。

2)温めて痛いようならアイシングを!

急性期では患部を温めることで血流を良くしてしまい、その結果、炎症症状を引き起こし痛みを悪化させる可能性があります。
お風呂に入って痛みが強くなるようであれば無理に温めず、15~20分ほどアイシングをしてみましょう。

3)痛いときは腕を体から離さないように!

痛みが強いときは、なるべく体の近くに腕を置くようにしましょう。
たとえば、電話をとるときでも手を伸ばして取るのではなく、電話に近づいてとるようにします。

●痛みが和らぎだす慢性期(凍結期)から少しずつストレッチを!

少しずつ痛みが和らいできたら、ストレッチや肩を動かす練習をしていきましょう。

1)まずは肩甲骨のストレッチから!

肩甲骨には肩を動かす筋肉がたくさんあります。
肩を動かすためには肩甲骨が連動して動く必要があるのですが、五十肩の方は肩甲骨の動きが悪くなっている方が目立つので、以下のようなストレッチを無理のない程度に行ってみてください。

  • 〇肩甲骨を上下に動かす
  • 〇肩甲骨を寄せる(胸を張るように)
  • 〇肩甲骨を離す(背中を丸めるように)

このように動かすだけでも肩甲骨の動きは良くなっていきます。
普段から意識して動かすようにしましょう。

2)振り子運動

立った状態で上体を前に倒したら、痛いほうの腕を重力に任せて下に垂らし、反対の手は机や台において楽な姿勢をとります。
そのまま体を前後左右に振って、腕を振り子のように揺らしながら肩の可動域を広げていきます。
あくまでも腕は重力に任せて垂らしているだけで、無理に腕を動かそうとしないようします。

3)棒体操

棒を横にして両手で持ち、そのまま腕を挙げていきます。
上だけでなく、横に動かしても効果的です。

4)この時期からは温熱療法も効果的に!

この時期になると患部を温めてストレッチを行ったほうが効果的になってきます。
自宅でもできる温熱療法の方法は、下記の記事にてくわしく解説していますのでよろしければ参考にしてみてください。

詳細はこちら(温熱療法って本当に効くの?効果や種類と自宅でカンタンにできる4つの方法を解説)

●回復期ではどんどん動かそう!

回復期になると、痛みはだいぶ落ち着いてきますが関節の可動域はまだ制限された状態です。
特に腰の後ろに手を回す結帯動作は最後まで制限されることが多く、意識して練習していくことが必要になります。

1)結帯動作の練習

関節可動域に制限があるほうの手を腰の後ろに回し、反対の手で掴んだら、痛くない範囲まで上に挙げていきます。

2)壁に手を置いて腕を挙げる練習を!

できる範囲の高さまで腕を挙げ、そのまま壁に手をつき、手の位置は変えないままゆっくりとしゃがんでいくことで肩を上に挙げる練習ができます。

3)肩を安定させるためのトレーニング

あおむけで500グラム程度の重りを持ち、腕を90°持ち上げた位置で小さな円を描くように動かします。
腱板(けんばん)といわれる肩を安定させる筋肉のトレーニングになります。

病期ごとに分けて説明しましたが、いずれの運動も「その時期にしかやってはいけない」というわけではなく、痛みや症状に合わせて行っていくことが大切です。

まとめ

五十肩は自然と治っていきますが、痛いときに動かしすぎたり、動かす時期に安静にしすぎたりすると可動域の制限が残る可能性があります。
また五十肩の予防には運動だけでなく、日頃の生活習慣の改善が重要です。
五十肩と勝手に判断せずに早めに医療機関を受診し、適切な処置を受けましょう。
現在五十肩ではない方も、予防のために一度生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか?

参考:
日本理学療法診療ガイドライン 肩関節周囲炎(2018年2月28日引用)

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