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乳がんの手術後にもリハビリが必要!術後生活から社会復帰までの注意点について

リハビリテーション(以下リハビリ)というと、骨折や脳卒中などに対するものと思われがちですが、乳がんの手術後にもリハビリは行われます。
乳がんの手術を受ける方は比較的若年層も多く、手術後の生活や社会復帰に対して不安を抱かれる方も多いのが特徴です。
この記事では、乳がん術後のリハビリ、社会復帰における注意点について具体的にお話ししていくことにしましょう。

乳がん術後のリハビリはどんなことをするのか?

乳がん後にもリハビリを行うことをご存じですか?
乳がんの手術後は術創部による痛みのために、特に肩関節の動きが制限され日常生活動作にも大きな影響を与えます。
実際に行われるのは、関節可動域訓練と呼ばれるリハビリ、自主訓練、日常生活動作の指導が主な内容です。

1)関節可動域訓練

関節可動域制限とは、何らかの理由で体の関節の動きが正常範囲よりも制限されることをいいます。
特に乳がん術後の場合は、胸部にある術創部が引きつれて痛みが生じるため、肩関節の動きが制限されます。
手術後はドレーンと呼ばれる、傷の内側にたまってくる血液や浸出液を外に出すための管が数日ほど挿入されることがあります。
その管があるかないかによって、可能な関節可動域訓練も内容が変わります。

●ドレーンが抜けるまでの数日は緩やかな運動を

乳がんの手術においてリンパ節を切除した場合、あまり早期から本格的なリハビリを行うと、創部に浸出液などとよばれる液体がたまりやすいことが知られています。
そのため、ドレーンが挿入されている時期には特に緩やかなリハビリを意識する必要があります。

経過が良好であれば、手術1〜2日目から指や肘を動かす運動から始めることが一般的です。

指と肘関節の運動 肩の振り子運動
●指のグーパー運動など、簡単な運動から始める
●ゆっくりと肘の曲げ伸ばしを行う
●手のひらを内外に返す運動を行う
●立った姿勢で前後に少し足を開く
●上半身と下半身が90度になるように深くおじきをする
●手術した側の腕をだらんと垂らし、体を前後に揺らしながら腕を振り子のように振る
●肩の力を使うのではなく、体の揺れを利用して動かすことがポイント

こちらの表にあるように、指や肘の小さな動きから始め、様子を見ながら「肩の振り子運動」にもトライしてみると良いでしょう。

●手術から数日が経過したら、痛みのない範囲で運動を進める

術後数日ほどでドレーンが抜けたら、本格的な運動を始めますが、強い痛みのない範囲で行います。
手術をしていないほうの手を活用した「自動介助運動」を行っていきます。

肩関節の自動介助運動
●手術をしていない手で肘を支え、手術した側の腕を上方向・横方向に挙上する
●壁に手術した側の手のひらを付けて、指で壁を登るようにして腕を上方向・横方向に挙上する
●いずれも座位・立位で実施可能
●痛みがない範囲で段階的に行っていく

痛みにより運動が制限されることが多いですが、無理のない範囲で少しずつ可動域を拡大していきます。

2)自主訓練として活用できる運動

関節可動域訓練は退院後も行う必要があるため、ご自身で行う方法をご紹介します。
状態に応じて、こちらの運動も参考にしてみてください。

肩関節の自動運動
●手術をした側の腕を痛みのない範囲で上方向・横方向に挙上する
●前ならえの姿勢をとり、腕を内側と外側に開閉するようにゆっくりと動かす
●いずれも座位・立位で実施可能

先にご紹介した振り子運動や自動介助運動よりも負荷が大きくなるため、経過をみながら実施すると良いでしょう。
壁にシールなどを貼り、肩を動かすことができた距離を記録しておくと自分自身でも改善している様子がわかるため、成果を認識しやすく効果的です。

3)日常生活動作訓練

手術をすると肩の動きが制限されるため、衣服の着脱やブラジャーの装着、洗髪動作、調理や洗濯物を干すなどさまざまな日常生活動作に不自由が生じます。
あらかじめ関節可動域の制限により困難となる日常生活動作を予測し、訓練や工夫することで可能となります。

乳がん術後に起こるリンパ浮腫の対策としてできること

乳がんの手術後に起こる後遺症の一つとしてリンパ浮腫があります。
浮腫は炎症によって血管から流れ出た水分が皮下にたまるもので、指でむくんだ部分を押さえると押した跡が残るのが特徴です。

1)リンパ浮腫が起こる機序

リンパ浮腫は、リンパ節を取り除いた場合や、放射線治療でリンパの流れが悪くなることにより、腕に浮腫が生じるものです。
浮腫自体は健康な方でも起こり得るもので、立つと心臓より足が低くなり、重力の影響で水分がたまりやすくなるため、夕方になると足がむくむのです。
心臓から送られてきた血液が細胞にとりこまれ、細胞からリンパ、静脈へと流れ出ますが、流れが悪くなることにより皮下の細胞にたまり、むくみとなります。

腕を上にあげるようにするとむくみが緩和されることがありますが、リンパの流れを良くするマッサージやきつめのストッキングのような弾性スリーブ、弾性包帯を巻くことでたまったリンパ液の排泄を促す複合的理学療法を行います。

2)リンパ浮腫に対する複合的理学療法とは

リンパ浮腫に対する治療は、リンパドレナージ(マッサージ)、ドレナージ後の圧迫(弾性包帯、弾性スリーブ)、圧迫した状態での運動、衛生管理と保湿が基本です。
このように複数の手法を合わせて行う理学療法を、複合的理学療法と呼びます。
むくんだ手の皮膚は傷つきやすく、炎症を起こすと蜂窩織炎(ほうかしきえん※)という状態となり、発熱を伴うこともあります。
まずは、皮膚の清潔を保ち、保湿剤をしっかりと塗り、リンパドレナージで心臓に向かってリンパの流れに沿い、軽く皮膚を圧迫しながらリンパ液を流します。
その後弾性包帯でヨレないよう(ヨレると皮膚が傷つきます)包帯を巻き、一日を過ごし、歩行などの軽度の運動も行います。
その後、弾性スリーブのはめ方などの指導を行いますが、弾性スリーブは入浴時以外常時装着しておく必要があります。
1〜2週間にわたる複合的理学療法のあとは、セルフケアを行います。

※皮膚の深部から皮下脂肪組織にかけて炎症を起こす化膿性の細菌感染症

乳がん術後の生活上の注意点とは?

乳がんは30代から増加しはじめ、40代後半から50代前半にかけて最も患者さんの罹患率の高いピークを迎えます。
そのため、術後の家庭もしくは社会復帰などに関して、不安に思われる方も多くいらっしゃることでしょう。

1)術後の生活指導

日常生活では、洗髪、洗体動作、衣服の着脱、洗濯などの家事が最も腕を使う動作であり、肘を台の上に乗せる、手術を受けていない腕と交互に使う、などの工夫がお勧めです。
肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)などのトラブルを合併される方もいらっしゃいますので、痛みのない無理のない範囲内で行い、徐々に腕を使用する頻度や時間などを増やしていきましょう。
腕が重苦しく感じることがあれば、むくみの前兆ですので休ませるようにしてください。

2)日常生活・社会復帰に必要な注意点

乳がんの患者さんは若年層も多く、乳房切除は女性にとって喪失感を与え、乳がん手術のあと、抗がん剤治療などを行う必要がある方には精神面でのサポートも必要となってきます。
家族や周囲の人の理解、悩みを打ち明けられる友人を持つことをお勧めします。
術式にもよりますが、部分切除の場合であれば1〜4日程度での退院も可能、職場復帰までの期間も短期間になります。
しかし、乳房全摘出術やリンパ節を切除した場合には、入院期間が1〜数週間ほどかかるので、安静期間も長くなり職場復帰にも時間がかかります。
抗がん剤などの影響で気分がすぐれなかったり、通院のために休暇をとることで、焦る気持ちもでてくるでしょう。
しかし職場への復帰には、半日や短縮勤務など1〜3カ月の復職リハビリを行い、徐々に復帰していくことが理想です。
仕事をやめなければならないのではと思われる方もいるようですが、勤務先や上司に相談し、支援制度があるかなどの確認をしましょう。

まとめ

乳がんの手術後のリハビリは日常生活動作のみに限らず、社会復帰にも大きく関係しており、手術後の経過でリンパ浮腫が現れた場合にはさらなるリハビリが必要になります。
無理のない範囲から始め、予測される日常生活動作制限を対処していくことにより、早期の社会復帰の実現が可能です。

参考:
日本乳癌学会 患者さんのための乳癌診療ガイドライン(2018年1月31日引用)
国立がん研究センター 乳房切除後のリハビリテーション(2018年1月31日引用)
国立がん研究センター がんになったら手に取るガイド(2018年1月31日引用)
国立がん研究センター 乳癌(2018年1月31日引用)
がん研有明病院(2018年1月31日引用)
国立がん研究センター がん情報 乳癌冊子(2018年1月31日引用)
日本リンパ浮腫学会 リンパ浮腫の考え方と治療の基本(2018年1月31日引用)
日本リンパ浮腫学会 リンパドレナージ(2018年1月31日引用)

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