ガイドラインは医療者・患者・家族にとって重要!より良い医療を知るために脳卒中ガイドラインについて解説します
脳卒中のリハビリにも治療の指針といわれるガイドラインが存在します。
脳卒中急性期、回復期のそれぞれにおいて、ご本人やご家族にとってはどのようなリハビリが良いのか疑問に思うところでしょう。
そこで本記事ではガイドラインを元に、どのようなリハビリが推奨されるのかを、急性期・回復期それぞれの病期を追いながら解説していきます。
ガイドラインってどんなもの?ガイドラインにはオススメ度に4つのレベルがある
ガイドラインという言葉を聞いたことがありますか?
日本語に直すと「治療指針」といい、今回の場合では推奨される治療内容をまとめたもの、という意味になります。
ガイドラインは治療者の質や置かれた環境(日本全国どの地域の病院でも)に影響を受けることなく、医療の質を保証できるように標準化したものです。
治療法ごとに医学的根拠(エビデンス)が4段階のレベルで示されており、それぞれ推奨される度合いが異なります。
1)ガイドラインは治療の指針!文献や研究によって確証を裏付けた治療方法
臨床研究などから明らかになった医学的根拠(エビデンス)をもとに、ランク付けされた医療は重視され、医療者、本人、患者家族からも求められています。
つまりガイドラインは、医療行為に関して医学的根拠を明示し、患者さんにとって有益なのか害となるのかなど、最善のケアを選択するための文書といい表すのが適当でしょう。
このガイドラインのメリットとしては、
- ●最も新しい研究などの成果に基づいた高い質の医療を提供
- ●推奨されている医療を明確化することにより、医療者、本人、患者家族が理解しやすい
などがあります。
推奨される最新の医療を誰でも確認することができるというのは大きな利点であり、医療者は最高の医療を、場所や技量に関係なく提供することが可能になります。
患者さんや家族にとっても医療に対する信頼感が増すなど、双方にとってなくてはならないものとなっています。
2)エビデンスによる推奨度合いは4段階!それぞれどう違う?
先ほどからお伝えしているように、エビデンスには段階(ランク)があり、それにより推奨度が異なります。
ガイドラインのなかでは「推奨グレード」と呼ばれ、A〜Dで表記されます。
下記の分類を参考にされると、ガイドラインについても理解しやすいでしょう。
推奨グレード | ||
---|---|---|
A | 行うことが強く勧められる | |
B | 行うことが勧められる | |
C | 1 | 行うように勧められる根拠がない |
2 | 行わないように勧められる根拠がない | |
D | 無効性や有害だと示す科学的根拠がある |
ガイドラインは主な治療法に対し、どのレベルの推奨度なのか?ということも記載されています。
Aは最も推奨度が高い治療法で、Dは無効・逆効果であるということが証明されている治療法が該当します。
推奨度が高いからといって、必ずしもAの治療法を選択するわけでなく、状態によってはBやC1の治療法を選ぶこともあります。
脳卒中急性期では可能な限り早くリハビリを始めることが大切
脳卒中急性期において推奨されるリハビリは3つあります。
- ●十分なリスク管理下で発症早期からの積極的なリハビリテーションを行うことが強く推奨される。
- ●脳卒中のリハビリユニットなどで、チームリハビリテーションを行うことが強く推奨される。
- ●高血糖、低栄養、けいれん、心不全、誤えんなど安全面に考慮し合併症に注意することが勧められる。
これらについて解説します。
1)脳卒中急性期リハビリは早期開始の推奨度が高い!
脳卒中のリハビリガイドラインでは、発症から24〜48時間中にリハビリを開始すると、機能予後は良い傾向があると示されています。
そのため血圧などの安全面に考慮し、座位や立位など早期に訓練量を増やす介入が推奨されているのです。
脳卒中ユニットなどの専門病棟でケアを受けた方は、リハビリ実施日数が多いほど機能予後はよく、退院時の機能も従来病棟入院者より良好です。
また、1年後の自宅復帰率も高いことがわかっています。
2)早期離床は自立歩行率も高くなる!
先にお話しした、発症早期からリハビリを行い、ベッド上の生活から解放されることで、筋力・体力低下を最小限にし、寝たきりになることを防ぐことができます。
これらは短期的な効果だけではなく、脳梗塞発症後の機能障害や日常生活動作も改善する効果があります。
脳卒中回復期のリハビリはチームで患者さんの日常生活を変える
「脳卒中回復期リハビリ」に関しては強く推奨される項目はありませんが、比較的エビデンスの高い治療法がいくつか提示されています。
1)脳卒中回復期はリハビリチームでの取り組みが必要!
脳卒中回復期には、リハビリチームによる関わりが重要とされます。
医師や看護師、理学療法士、作業療法士、言語療法士、ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどさまざまな業種が関わって、個人にあった訓練を立案することが重要であり、強く推奨されます。
回復期リハビリテーション病棟や専門リハビリテーション医療機能を有する医療施設で、集中的なリハビリテーションを提供することによって、日常生活に必要な動作能力を改善させます。
特にリハビリテーション専門医が関与することにより、日常生活動作の改善率は高くなります。
2)手足の麻痺だけではなく、障害が重複する方には特に回復期リハビリが必要
脳卒中による脳のダメージで引き起こされる機能障害は、手足の麻痺やしびれだけではなく、運動の協調性の低下や、バランス障害、コミュニケーション障害、認知障害など実にさまざまなものです。
脳がダメージを受けた場所によっては、機能障害が重複している場合があり、筋力を十分にだせない、コミュニケーション障害のために指示が理解できないなど、さらに複雑化します。
このような場合は特に短期間での操作の習得が難しく、回復期リハビリでの長期にわたる訓練を実施していくことが大切になります。
まとめ
突然起こる脳卒中は、治療が落ち着いてもすぐに元の生活に戻れるという方は少ないため、不安を抱える患者さんや家族は多いでしょう。
そのなかで、日常生活動作などの訓練を行うリハビリに焦点が集まり、より良い医療を求めるのは当然のことです。
ガイドラインは、そうしたニーズに応えられる指標ともいえ、医療を提供する側と受ける側とが納得して治療を始めるための足掛かりにもなるのです。
参考:
脳卒中理学療法診療ガイドライン 日本理学療法学会(2018年2月24日引用)
国立がん研究センター ガイドラインとは(2018年2月24日引用)
脳卒中リハビリテーションガイドライン 急性期リハビリテーション(2018年2月24日引用)
脳卒中リハビリテーションガイドライン 回復期リハビリテーション(2018年2月24日引用)
脳卒中治療ガイドライン 急性期リハビリテーション(2018年2月24日引用)