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介護予防運動

介護が必要になるのは目前!?介護予防のためには必ず知っておきたいフレイルについて解説します!

いくつになっても自分のことは自分でやりたい…。
誰もがそう願っていても、加齢などで体が弱ると介護が必要になってきます。
いつ介護が必要になってもおかしくない状態をフレイルと呼び、フレイルを予防することが介護予防につながると注目されています。
そこで今回は、フレイルとはどういう状態なのかを解説し、自身でチェックできるポイントについてご紹介します!

フレイルとは、いつ介護が必要になってもおかしくない状態?

加齢により体のさまざまな機能が低下していくことで、病気やけがを引き起こしやくなります。
その結果、自分の身のまわりのことができなくなり、いずれは誰かの手を必要とする「介護」の状態が訪れます。
要介護状態になるまでには、多くの場合で段階的な経過をたどるとされ、活動量や筋力の低下など、心身は徐々に虚弱していきます。
こうした「介護状態になるまえ」の段階のことをフレイルと呼んでいます。
フレイルは、介護が必要になる一歩手前の状態というだけでなく、さまざまな健康問題を生じるリスクを高めます。
クレッグら(Clegg /2013)によると、フレイルの高齢者は健常な高齢者にくらべ、軽い病気にかかっても体の機能低下が著しく、回復には時間もかかり後遺症などが残りやすいとされています。
またフレイドら(Fried/ 2001)は、フレイルの場合、そうでない場合にくらべて寿命が短いというデータを示しています。
以上のように、フレイルはさまざまな健康問題と関連していますが、フレイルになったからといって、元に戻れないわけではありません。
一度フレイルになっても、再び健康な状態に戻ることができますし、健康なうちに対策をとることで予防することもできます。

実際、筆者が地域で行っている介護予防事業でも、フレイルの状態を早期に発見して、運動の実施や栄養改善を行うことで要介護状態を予防することができている事例があります。
そのため、要介護状態を予防するためには、しっかりフレイルの段階で対策を行い、予防する必要があるのです。

フレイルは体が弱ってくるだけじゃない!?心や人との関わりも影響

フレイルといわれると、体力の低下や病弱な状態といった、身体的な側面ばかりをイメージする方は少なくないでしょう。
しかし、フレイルは身体的な側面も含めて大きく3つに分類されています。
それぞれの特徴を紹介します。

◯身体的フレイル

加齢によって筋肉の量が減っていくサルコペニアや、バランスが低下して転びやすくなるなど、体が弱った状態を身体的フレイルと呼びます。

◯精神的フレイル

認知症やうつ病といった精神的な虚弱も、要介護状態に至る大きな要因です。
精神面から生じた原因によって介護に至るリスクが高い状態を、精神的フレイルと呼びます。
とりわけ、MCI(健常と認知症の間の状態=軽度認知症)は、将来の要介護状態を招く要因とされています。
MCIは認知症とは異なり、回復が可能な段階であるため、早期発見、早期対策が重要です。

◯社会的フレイル

Makizakoら(2015)によると、独居、人との交流減少、友人との関わり合いの減少などの要因が、要支援・要介護状態の発生に関連しているとされています。
要介護状態に至る原因は、体や心の状態だけでなく、人との関わり合いといった環境も大きく関係してきます。
このように、社会的な交流が減った状態を社会的フレイルと呼びます。
筆者の患者さんでも、リハビリによって体は元気になったものの、病気をするまえのように外出することが少なくなり、自宅で閉じこもりがちになった結果、徐々に体力低下に至ってしまったという例があります。
逆に、閉じこもりがちだった方が、地域の手芸教室に定期的に通うようになり、以前とくらべて体が動かしやすくなったという方もいます。

以上のように、フレイルは多様な側面を持っており、要介護状態に陥るまでには、身体的な面だけでなく、精神的あるいは社会的な面も大きく影響してくるのです。

あなたもフレイルかも!?簡単にできるフレイルのチェック方法

フレイルは専門的な知識や技術がなくても、比較的、簡単にチェックできる方法が開発されています。
気軽に評価できるフレイルのチェック方法を紹介します。

◯身体的フレイルのチェック方法

身体的フレイルの状態をチェックする方法としては、フレイドら(Fried/2001)によるフレイドインデックス(Fried Index)が代表的です。
フレイドインデックスを日本に合わせた基準が、国立長寿医療研究センターにより開発されていますので、以下にご紹介します。

体重減少 6カ月間で2〜3kg以上の体重減少
疲れやすさ (ここ2週間)わけもなく疲れたような気がする
活動性の低下 「軽い運動・体操」および「定期的な運動・スポーツ」のいずれもしていない
歩く速さの低下 普通に歩く速さが毎秒1m以上かかる
(例:10mを歩くのに10秒以上かかる)
握力の低下 男性:26kgより低い、女性:18kgより低い

Makizakoら(2015)によると、この基準により身体的フレイルと判定された高齢者の要支援・要介護の発生確率は、健常高齢者の4.7倍になるとされています。
握力は握力計といった専用の器具がないと測定が難しいですが、それ以外の項目は簡単にチェックすることができます。
歩く速さも、公園などのある程度広い場所で10m以上の直線距離を確保できれば、すぐに測定できますのでぜひ実施してみてください。

◯包括的なフレイルのチェック方法

フレイルは、身体的・精神的・社会的の3つの側面から、総合的に評価する必要があります。
フレイルを包括的に評価する方法として、地域包括支援センターなどが実施している介護予防基本チェックリストがあります。
また、Makizakoら(2015)は、以下の項目のうち1項目に当てはまれば、社会的フレイル一歩手前の「社会的プレフレイル」としています。

  1. 1)独居である
  2. 2)外出の頻度が減っている
  3. 3)友人の家に訪問していない
  4. 4)役に立っていない
  5. 5)毎日誰とも会話をしていない

以上のように、フレイルは体の状態だけでなく、こころの状態や生活環境などさまざまな要因が絡み合って生じることに留意し、状態を確認することが重要です。
そして、自分のことはもちろん、近所に「閉じこもりがち」や「独居」の方がいるようなら、日ごろから気にかけるようにして、地域全体でフレイル予防をしていきましょう。

まとめ

健康な体を維持して、介護が必要な状態にならないようにするためには、まずは自分の現状を客観的に見る必要があります。
いつまでも元気でいたいと願う高齢者にとって「フレイルチェック」は、非常に有効なスケールとなります。
フレイルはあくまでも一時的な状態を示すものであり、チェックによって導き出された結果をみて、予防や改善を行わなければ意味がありません。
健康と要介護の間にあるフレイルを、いかにして食い止めるかが重要なポイントになってきます。
それぞれのチェック項目は、フレイルかどうかを知ると同時に、運動や人との交流といった「いまの生活のなかに足りないもの」を浮き彫りにしてくれます
ぜひ積極的にフレイルチェックを行い、ライフスタイルを見直すきっかけにしてください。
もちろん家族へのフレイルチェックも大変有効です。

参考:
牧迫 飛雄馬:老化とフレイルー早期発見と効果的介入データから考えるー.理学療法の歩み28(1):3-9,2017.
Clegg A, et al.:Frailty in elderly people.Lancet 381:752-762, 2013.
Fried LP, et al.:Frailty in older adults : Evidece for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 56: 146-156, 2001.
Makizako H,Shimada H,et al.:Social Frailty in Community-Dwelling Older Adults as a Risk Factor for Disability.J Am Med Dir Assocs 16:1003.e7-11.2015
Makizako H,Shimada H,et al.:Impact of physical frailty on disability in community-dwelling older adults: a prospective cohort study.BMJ open:e008462.2015

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