ランナーに起こりやすいシンスプリント!整形理学療法士が自宅でもできるストレッチやトレーニングを解説
ランニングやジャンプなどで繰り返し脚に負担がかかることで起こる「シンスプリント」。
すね(脛骨:けいこつ)の内側の炎症から痛みが出るため、脛骨過労性骨膜炎(けいこつかろうせいこつまくえん)とも呼ばれます。
陸上やバスケットボール、サッカーなどのスポーツをするアスリートに発症しやすく、正しい治療をしなければ進行、再発のしやすいけがです。
そこで、整形外科で働く理学療法士が、シンスプリント発症後の注意点や予防法、自宅でもできるストレッチやトレーニングを紹介します。
目次
まずはアイシングや安静、インソールで痛みを和らげよう
シンスプリントはすねの内側に繰り返しストレスがかかることで炎症が起こり、痛みや腫れが生じます。
しかし、初期のころはランニングなどをして痛みを感じても、続けるうちに痛みが和らいだり、休むと痛みが消えたりするため、放置してしまいがちです。
まずは、シンスプリントの悪化を防ぐためにできる対応方法を紹介します。
●痛みのある部分にはアイシング
炎症による痛みを和らげるためにはアイシングが有効です。
アイシングは薬局などにある氷のうを使用して、15分間ほど痛みがある部分を冷やしましょう。
組織の冷やしすぎを防ぐために、アイシング後は40分以上間隔を空けるようにしましょう。
アイシングはシンスプリントが回復して競技に復帰した後もトレーニング後に実施しましょう。
激しい運動をして組織に負担がかかっても、炎症症状の悪化を防ぐことができます。
●強い痛みがある場合は安静が基本
シンスプリントが重度になり競技や日常生活に支障が出るような場合は、競技を休んで回復に努めましょう。
また、痛みが軽度でも走る距離や走る場所(坂道、左右への傾斜、硬い地面など)により痛みの増減がみられる場合があります。
距離を減らしたり、平地だけを選んだりと負担を少なくする工夫が必要です。
ただし、競技を休んでいる間、患部への負担をかけなければ運動は可能です。
患部以外のトレーニングをして、競技復帰に向けての準備を忘れないようにしましょう。
●インソールの利用やシューズの変更もおすすめ
ランニングやジャンプの着地のときにかかる衝撃を減らすことで、痛みを和らげることができます。
また、土踏まずが潰れて扁平足(へんぺいそく)になったり、すねが内に傾いたような姿勢がシンスプリント発生の危険性を高める要因とされており、姿勢の矯正が痛みの軽減やけがの予防につながります。
そのため、衝撃吸収や土踏まずの支えを補助するインソールの活用がおすすめです。
また、ランニングの癖により、靴底をチェックして内側のすり減りがみられることがあります。
すると、ランニングのフォームが余計に崩れて、脚への負担が大きくなります。
さらに、靴底がすり減ることで、地面から受ける衝撃を吸収することができず、脚への負担が大きくなり、シンスプリント発症のリスクを高めます。
靴のすり減りがある場合は、シューズを新しく変更して、正しいフォームかつ脚への負担を少なくして動けるようにしましょう。
自宅でもできる簡単ストレッチの方法を紹介
シンスプリントでは以下の3つの筋肉の負担が原因とされています。
- ・後脛骨筋(こうけいこつきん)
- ・ヒラメ筋
- ・長趾屈筋(ちょうしくっきん)
これらの筋肉はすべてランニングやジャンプの動作で働く筋肉で、柔軟性が低くなったり、筋力が低下することでシンスプリントを引き起こします。
そこで、これらの筋肉をストレッチする方法を紹介します。
●ストレッチの手順
- 1)痛みがある側の脚を前に出して、反対側の脚の膝をついて片膝立ちの姿勢をとります
- 2)ゆっくり膝を曲げて、スネを徐々に前に倒していきます
- 3)ふくらはぎが伸ばされるのを感じる状態でキープします
●注意点
- 1)膝とつま先が正面を向くようにします
- 2)膝を立てている側の足の踵が浮かないようにします
- 3)強い痛みを感じる場合は、炎症症状があるので無理なストレッチは控えます
このストレッチが痛くて難しい場合は、立ってする一般的な「アキレス腱伸ばし」を応用します。
注意点は、後ろに引いたストレッチするほうの脚の膝を曲げて、つま先を少し内に向けてすることです。
最初に紹介した方法と同じように、痛みを強く感じるまで行わず、「引っ張られた感じがするけど気持ちいい」くらいの強さでストレッチするようにしましょう。
シンスプリントにおすすめのトレーニング方法5つ
シンスプリントは一度発生すると、症状が改善しても再発をしやすいけがです。
ストレッチで紹介した後脛骨筋やヒラメ筋、長趾屈筋などの筋肉をうまく使えていなかったり、ランニングやジャンプのフォームが乱れていたりすることが原因として考えられます。
そのため、痛みが改善されたあとは、しっかり筋肉を鍛えてフォームの修正をしましょう。
また、シンスプリントが治っても、トレーニングを継続することでシンスプリントの再発予防につながります。
そこで、自宅でもできる簡単なトレーニング方法を紹介します。
●チューブトレーニング
チューブを使用することで、鍛えたい筋肉に負荷をかけたトレーニングができます。
今回は、シンスプリントと関連する後脛骨筋のトレーニングを紹介します。
- 1)椅子に座ってけがをしているほうの脚を組みます
- 2)下ろしている脚でチューブを踏んで、反対側を組んでいる足の先にかけます
- 3)組んだ足でチューブを引っ張ります
上記の方法でつま先を下に向ける運動と内側にひねる運動を同時にすることで、効果的に後脛骨筋を鍛えることができます。
●スクワット
スクワットをするときに最も重要なのはフォームです。
シンスプリントになりやすいフォームとして、「knee-in/toe-out」という膝が内に入って、つま先が外を向く姿勢があります。
「knee-in/toe-out」のくせがついていると、スクワットのときに無意識にそのような姿勢をとる場合が少なくありません。
そのため、スクワットで膝とつま先が正面を向くように意識することで、「knee-in/toe-out」の姿勢修正をすることができます。
●膝曲げ歩行
knee bent working(KBW)と呼ばれるトレーニングで、 筋力をつけるだけでなく、スクワットと同様に、けがをしやすい動きの癖を修正する練習です。
スクワットのように膝を曲げて胸を張った姿勢で、腕を振りながらゆっくり歩きます。
注意したいポイントは以下の通りです。
- ・歩くときに腰の高さを一定にする
- ・膝とつま先の向きをまっすぐにそろえる
●カーフレイズ
つま先立ちをすることで、ふくらはぎの筋肉を鍛えるトレーニングです。
通常、カーフレイズは膝を伸ばしてすることが多いですが、シンスプリントの原因となるヒラメ筋の筋力を鍛える場合は、膝を少し曲げた状態でつま先立ちをする、「ニーベントカーフレイズ」がおすすめです。
膝を曲げた状態から、ゆっくり踵を上げて、上げきったところから、ゆっくり踵を下ろしましょう。
親指のつけ根に体重がかかるように意識することがポイントです。
●タオルギャザー
広げたタオルの上に足を乗せて、指を曲げてタオルをたぐりよせる運動です。
簡単にできる場合は、雑誌などを重りがわりにタオルにのせて、負荷を高めることができます。
長趾屈筋の筋力を向上させることができることはもちろん、足指の動きをスムーズにすることができます。
以上のようなトレーニング以外に、体幹や股関節の筋肉が弱っていると、脚への負担が強くなり、シンスプリントのリスクが高まります。
シンスプリントに直接関係のある筋肉以外でも、体幹や股関節周辺の筋力トレーニングをしましょう。
自分でできるストレッチやトレーニングを習得して再発を防ごう
シンスプリントは一度治ったと思っても、同じようなストレスを繰り返してしまうと、再発することもあります。
そのため、ストレッチやトレーニングの方法をしっかりと理解して、継続することが重要です。
また、ご紹介したストレッチやトレーニングは、シンスプリントでなくても、ランニングやジャンプを繰り返す競技をする場合に、けがの予防につながります。
楽しく、けがのない競技生活を送るためにも、自分自身でしっかり体のメンテナンスをしましょう。
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執筆者
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整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級