自宅での酸素吸入が必要になったら?在宅酸素療法を用いた日常生活上の注意点、リハビリをご紹介します
慢性呼吸不全の治療法の一つとして酸素を吸って自宅での生活を行う在宅酸素療法があり、Home Oxygen Therapyの頭文字を取ってHOTと訳されます。
自宅での酸素吸引は患者さんや家族にとって有用な治療方法ですが、初めて導入する方にとっては不安も大きいものではないでしょうか。
今回は、在宅酸素療法を始めるに当たっての日常生活上の注意点、リハビリなどについてご紹介します。
目次
在宅酸素療法は自宅での持続的な酸素投与を行う治療法。寿命延長の効果も
呼吸機能に何らかの障害がある場合には自宅での日常生活でも酸素不足となるため、常に酸素の吸引が必要となることもあります。
在宅酸素療法は酸素濃縮機と呼ばれる空気中の酸素を濃縮する機械を設置するものと液体酸素のボンベを設置し、定期的に業者に供給してもらう方法の2つがあります。
●在宅酸素療法は自宅で酸素チューブから24時間酸素吸入を行う
在宅酸素療法は、呼吸機能が不十分で空気中の酸素濃度では血液中の酸素が不足してしまう方が、空気より高濃度の酸素を吸入する方法です。
酸素の吸入は一度すると外せなくなってしまうのではないかと心配する方もいますが、酸素を吸うことで血液中の酸素不足から起こるさまざまな症状が解消され、日常生活が快適に送れるようになります。
また日中の活動時間だけではなく、夜間も通して酸素の吸入を行うことで寝不足や脳への酸素不足も解消されます。
ただし、高濃度の酸素を多い流量で吸入すると逆に障害を起こすことがありますので、医師の指示に従いましょう。
●在宅酸素療法の効果は慢性呼吸不全の呼吸苦の軽減、寿命を伸ばすために必要
在宅酸素療法を行うことにより、
1)日常生活における諸動作の際の息苦しさの軽減
2)生命予後の延長
3)睡眠中の酸素不足が解消され、寝不足改善
4)頭痛の軽減、心臓への負担の軽減
5)記憶力や注意力の改善
6)生活の質が向上
などの効果があります。
息苦しいと動くのがおっくうになり体力も低下し、寝たきり状態に陥る恐れがあります。
また呼吸機能障害がある場合には仰向けの状態で寝るのも息苦しさを感じるため、寝たきりの状態でも苦痛を伴います。
在宅酸素療法にまつわる家族の不安を解消する在宅訪問看護とリハビリ
在宅酸素療法を始めるに当たって、本人や家族の方々には不安が生じることでしょう。
その際の在宅看護やリハビリなどの活用についても解説しましょう。
●酸素の設置場所はどうするべき?入浴などの際にも使用可能
在宅酸素療法では酸素ボンベから直接酸素チューブを接続して吸うのではなく、酸素濃縮装置などから酸素を吸入します。
酸素濃縮装置は電源が必要となりますが、酸素チューブは約15mまで延長することが可能ですので、自宅内のどこに設置するのか考慮しましょう。
設置場所は、日中よく時間を過ごす場所、リビングルームなどが良いでしょう。
トイレなどが近い場所にご本人の過ごしやすい場所を作るのも得策です。
外出や非常時の際には携帯用酸素ボンベが必要ですが、基本的には屋内のどこでも酸素吸引は可能です。
入浴の際にも鼻カヌラでの酸素吸引が可能で、洗髪や更衣動作は息切れを起こしやすい動作なので酸素を吸入したままでの入浴をおすすめします。
●在宅酸素療法導入時には訪問看護で日常生活のサポート方法を、日常生活動作は訪問リハビリで不安を解消しよう!
在宅酸素療法に関する物品や酸素を供給してくれる業者などにかかる費用は保険で負担できます。
また在宅酸素に関する物品は病院や診療所などの医療機関からの貸出しとなりますので、かかりつけの医師とよく話しましょう。
在宅酸素療法導入時には、訪問看護やリハビリなどにより日常生活上でのサポートなどを受けることで不安も解消されます。
ご本人ご家族の不安を解消する一助として活用しましょう。
在宅酸素療法下での日常生活上の注意点とリハビリの重要性
在宅酸素療法を行う上で日常生活上注意すべきこと、酸素投与した上でのリハビリの効果について解説しましょう。
●在宅酸素療法下では火気厳禁!そのほかの日常生活上の注意点をご紹介
在宅酸素療法を行なっている場合、日常生活で最も気をつけることの一つは火に近づかないということです。
酸素自体が燃えることはありませんが燃えやすくする性質があるため、ガスコンロや仏壇の火や線香、ストーブなどから2m程度の距離を取るようにしましょう。
ほかにも酸素を吸引した状態での喫煙はタバコの火に引火するため、絶対にやめましょう。
呼吸器疾患の原因となる喫煙は、健康のためにも良くありません。
禁煙が困難な場合は医師などに相談してください。
●在宅酸素療法をしていてもリハビリは可能、リハビリは寿命にも影響する
在宅酸素療法は慢性呼吸不全の方の呼吸苦や息切れなどの症状を軽減しますが、常に酸素チューブやボンベを持ち歩かなくてはなりません。
物理的な問題に加え運動すると息が苦しくなるのではと、運動がおっくうになり運動不足になりがちです。
しかし、息切れなどが起こらない範囲内でのリハビリを継続して行うことにより同様の運動での息切れが起こりにくくなり、さらには寿命の延長にも効果があることがさまざまな研究でも証明されています。
酸素ボンベを携帯しての外出もおっくうになりがちですが、担当リハビリスタッフと相談して運動も取り入れましょう。
在宅酸素療法は慢性呼吸不全には重要な治療。さまざまな医療サービスと組み合わせて日常生活を快適に
在宅酸素療法は慢性呼吸不全のある患者さんにとって、自宅や社会復帰には欠かせない治療法です。
自宅での酸素吸入は、息切れや呼吸苦から解放され日常生活をより良くし、寿命の延長にも効果があるといわれています。
また酸素吸入下でもリハビリをすることにより、運動に対する息切れの閾値が上がり今までできなかった運動や動作が可能となります。
在宅酸素療法に関する不安をお持ちの方は、さまざまな医療サービスの利用も検討することをおすすめします。
参考:
Teijin Medical Web 在宅酸素療法(HOT)とは .
https://medical.teijin-pharma.co.jp/zaitaku/remedy/hot/01/(2019年10月25日引用)
特定非営利活動法人 NPO J-BREATH 日本呼吸器障害者情報センター 在宅酸素療法(HOT).
https://www.j-breath.jp/copd/home_oxygen_therapy.html(2019年10月25日引用)
エア・ウォーターメディカル株式会社 HOT入門.
http://www.awmi.co.jp/images/upload/pdf/HOT%E5%85%A5%E9%96%80.pdf
(2019年10月25日引用)
独立行政法人 環境再生保全機構 在宅酸素療法とは.
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/oxygen/01.html(2019年10月25日引用)
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執筆者
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1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。
保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士
藤原利子 さん
2020年6月18日 8:26 AM
高濃度酸素が、記憶や、身体の不調にいいと、聞いたので金額やどんな?か、知りたいです。