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運動器不安定症と診断された場合 どうすればいいの?診断の意味やリハビリの⽅法を整形外科理学療法⼠が解説します

整形外科で診断されることのある運動器不安定症(うんどうきふあんていしょう)
あまりなじみのない診断名に、どのような疾患なのか、対策はどうすればいいのか不安に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで、整形外科で日頃から運動器不安定症のリハビリをしている理学療法士が、診断の意味や具体的なリハビリ方法について詳しく解説します。

運動器不安定症のリハビリをしている理学療法士が、診断の意味や具体的なリハビリ方法について詳しく解説

運動器って?体を動かすために重要な運動器について知ろう

「運動器」と聞いてあまりピンとこない人も少なくないでしょう。
そこで、まずは「運動器」を知って、運動器不安定症の理解につなげましょう。

●運動器とは体を動かすために必要な骨や筋肉、神経のこと

運動器とは歩いたり、立ったりと体を動かすために必要な器官のことで、以下のような部位が含まれます。

  • ○骨
  • ○筋肉
  • ○神経
  • ○靭帯
  • ○関節
    など

どの器官が障害されたり、衰えたりしても体を動かすことに支障をきたします。
たとえば、太ももの筋肉が弱ってしまうと立つのが難しくなります。
指の神経が障害されると、うまく物を掴めなくなります。
膝の関節の動きが悪くなると、歩くのが難しくなります。
このように、人は運動器を正常に保つことで、体をスムーズに動かし、不自由なく日常生活に必要な動作をすることができます。

●運動器は加齢とともに衰える

運動器は加齢とともに衰えていきます。
代表的な例に「サルコペニア」と呼ばれる状態があります。
サルコペニアは加齢に伴う筋肉量の減少です。
ほかにも骨粗鬆症は骨が加齢などの原因により、脆くなってくる状態です。
長年、2本の足で体重を支えることからくる、変形性膝関節症などの関節の変形も加齢が原因の1つです。
以上のように加齢とともに運動器は徐々に衰えてくるため、少しでも衰えを予防して健康的に動けるように対策をする必要があります。

※サルコペニアについては「高齢者がサルコペニア状態になると、転倒リスクが上がる!?その定義や原因を知ろう!」を参考にしてみてください。

●運動器の衰えは転倒、けがはもちろん寝たきりを招く可能性も

運動器の衰えは転倒、けがはもちろん寝たきりを招く可能性も

運動器の衰えが原因で起こる不都合を以下に挙げてみます。

運動器の衰えによる不都合
・転倒しやすくなる
・歩く、立つなどの基本的な動きがしにくくなる
・トイレや風呂など日常生活の動作ができにくくなる
・買い物、洗濯などの家事ができにくくなる
・趣味、仕事、人付き合いなどの生きがいが続けなくなる
・生活に他人の助けが必要になる
・骨折しやすくなる
・関節の変形が起こりやすくなる(変形性関節症など)
・手足や腰などが痛みやすくなる
など

このように、転倒やけがにつながりやすくなることはもちろん、日常生活を送るために必要な動作ができない原因にもなります。
そうなると、生活に大きな支障をきたすこともあり、場合によっては寝たきりの状態につながることもあります。

運動器不安定症の意味や診断基準

運動器の理解ができたところで、運動器不安定症がどのような疾患なのかを知るために、疾患の意味やどのような場合に医師から診断されるのかを解説します。

●運動器不安定症は「運動器の病気で閉じこもりや転倒リスクが高くなった状態」

運動器不安定症は、運動器の障害を招くような病気や状態があり、歩行による移動ができるものの転倒の危険性が高く、閉じこもりがちになる危険性がある高齢者に対する疾患名です。
骨折や変形性関節症などと同じように、病院でリハビリを受けるために必要な診断名として認められています。
似たような概念「ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)」という言葉があります。
運動器不安定症と同じように、運動器の障害により介護が必要になる危険性が高い状態をいいます。
しかし、運動器不安定症は「疾患名」として認められるのに対して、ロコモは状態を表す呼び方で、病院でリハビリや治療を受けることができる「疾患名」ではありません。

※ロコモについては「ロコモティブシンドロームを予防しよう!自宅でできる対策とリハビリ」で詳しく解説しています。

●診断基準が明確に定められている

診断基準が明確に定められている

診断名だけ聞くと漠然としている気がしますが、診断基準が明確に以下のように決められています。

1.高齢化により運動機能低下の原因となる11つの運動器疾患になったことがある、または現在疾患にかかっている。

運動機能低下の原因となる11つの運動器疾患または状態
・脊椎圧迫骨折および各種脊柱変形型(亀背、高度腰椎後弯、側弯など)
・下肢骨折(大腿骨頚部骨折など)
・骨粗鬆症
・変形性関節症(股関節、膝関節など)
・腰部脊柱管狭窄症
・脊髄障害(頚部脊髄症、脊髄損傷など)
・神経・筋疾患
・関節リウマチおよび各種関節炎
・下肢切断後
・長期臥床後の運動器廃用
・高頻度転倒者

2.日常生活自立度判定基準ランクJまたはA
一人の力で外出できるまたは自宅内の生活はできるが介助なしには外出できないレベルに相当

3.運動機能の低下が以下のどちらかに該当
・開眼片脚立位(目を開いた状態で片脚で立つ):15秒未満
・Timed up & go(椅子に座った状態から3m先の目印を回り再び椅子に座る):11秒以上

このように、運動器不安定症はしっかりとした基準が設けられており、これに該当する場合は医療機関で適切なリハビリ(運動器リハビリテーション)を受けることができます。

誰でも簡単にできるリハビリ方法を紹介!継続するポイントも解説

運動器不安定症の治療には、低下した運動器の機能を高め、転倒を予防したり、日常生活に必要な動作を改善するための運動をすることが重要です。
そして、何より運動をコツコツ継続して、加齢により低下する運動器の機能を保つ必要があります。
そこで、自宅でもできる運動器不安定症に対するリハビリや運動を継続するコツを紹介します。

●運動は気軽にできるロコモーショントレーニングや座ってできる筋トレがオススメ

移動能力の低下している高齢者はまず屋内で簡単にできる運動から始めることがオススメです。
今回は整形外科理学療法士がクリニックで指導している、運動器不安定症の高齢者でもできるオススメの運動を紹介します。

1.ロコモーショントレーニングはレベルに合わせて屋内で気軽にできる

ロコモーショントレーニングはレベルに合わせて屋内で気軽にできる

まずは屋内でできる運動としてロコモーショントレーニング(以下ロコトレ)がオススメです。
ロコトレは「開眼片脚立位」と「スクワット」の2つあります。
それぞれ、立って行う運動ですが、支えがないと立てない高齢者でも、椅子や机などを支えにして実施できるため、安全かつ簡単に行えます。
運動器不安定症の場合、立って足腰に体重をかける機会が少なくなっており、結果として運動器の機能がますます低下していくという悪循環に陥っていることが少なくありません。
その点でもロコトレは有効な運動です。
詳しい方法は以下の記事で解説しています。

※ロコトレの方法は「骨粗鬆症が原因の脊椎圧迫骨折。急性期と離床後のリハビリポイントを解説」で詳しく紹介しています。

2.座ってでもできる運動を知れば継続的に運動がしやすい

ロコトレのように立って行う運動に加えて、座ってでもできる運動を知れば、自宅で継続して運動をしやすくなります。
座ってできる運動は主に筋力を鍛えたり、関節の動きをよくしたりする効果が期待できます。
余裕があれば、重錘で負荷をかけて運動を実施することで、効率よく鍛えることができるのでオススメです。

※詳しい運動の方法は「地域のみんなで重錘バンドを使った体操をしよう!リハビリに役立つ実践方法や効果を紹介」を参考にしてください。

●運動の継続は「実践したことを目に見えるようにすること」と「賞賛してくれる相手を作ること」

運動の方法がわかっても、継続しなければ運動器不安定症を改善することができなかったり、再発したりします。
そのためには、以下の2点に注意して継続できるようにしましょう。

1.チェックリストで運動の継続をしましょう

チェックリストで運動の継続をしましょう

カレンダーなどで運動のチェックをしていくことで、頑張って継続していることが目に見えてわかります。
Birdらの行った研究ではウォーキング継続において効果的だった手法として、「実施状況を自分でモニタリングする方法」を挙げています。
そのため、自分自身で運動を実施したことをチェックして、継続的に観察することで、運動習慣の定着が期待できます。

2.一人で頑張らず褒めてくれる相手を作ろう

一人で頑張らず褒めてくれる相手を作ろう

運動に限らず、誰かに褒めてもらうことは物事を継続するためには強い動機付けになります。
チェックリストを家族や近所の友人、病院の先生、リハビリ担当の理学療法士などに確認してもらい、継続していることを賞賛してもらいましょう。
さらに、定期的に他人にチェックしてもらうことで、自分では気づかない小さな変化に気づくことがあります。
筆者の経験でも、「近所の人に最近姿勢がよくなったと言われた」、「孫に元気になったと褒められた」と嬉しそうに報告してくれる高齢者は、その後も運動をしっかり継続されています。

運動器不安定症は早めの対応とリハビリの継続で改善できる

運動器不安定症は運動によって改善できる疾患の1つです。
診断された場合は不安にならずに、理学療法士などの専門家による指導やご紹介した運動を実践しましょう。
また、運動の効果はすぐには見られないことを理解して、継続するための工夫も実践しましょう。
さらに、運動の効果を高めるためには、十分な栄養や睡眠が欠かせません。
運動、栄養、休息のバランスを考えて、いつまでも元気に生き生きと生活を送れるようにしましょう。

※運動と栄養の関係については「高齢者のサルコペニアを予防するには、なにより食事と運動が重要!ぜひ試したい、その対策方法とは?」で詳しく解説しています。

参考:
EL Bird et al:Behavior change techniques used to promote walking and cycling : a systematic review.Health Psychol32(8): 829-838, 2013.

石橋英明:運動器リハビリテーションシラバス(改定第4版),セラピストのための実践マニュアル. 岩谷力(編), 南江堂, 東京, 2018, pp.124-125.

  • 執筆者

    蔵本雄二

  • 整形外科クリニックや介護保険施設などで理学療法として従事してきました。
    現在は県下でも有名な地域包括ケアシステムを実践している法人で理学療法士として勤務しています。
    そのため、施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
    医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
    保有資格:理学療法士、介護支援専門員、呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級

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