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知っておきたい肺高血圧症、リハビリの目的と内容について解説します

心臓や肺に関する病気は多くありますが、肺高血圧症という病名を聞いたことがない方は多いのではないでしょうか。
一般的に知られている高血圧症とは、その原因や治療法も大きく異なり、重症化すると入院治療も必要となる病気です。
本記事では、肺高血圧症とはどういう病気なのか、また日常生活における注意点などについて解説します。

治療法やリハビリの内容を解説

高血圧症とはどこが違うの?

ここではまず、高血圧症との違いについて解説したいと思います。

●肺高血圧症は肺動脈の血圧が上がる病気

肺高血圧症は肺動脈の血圧が上がる病気

高血圧症とは、心臓から出た先の血管の血圧が高くなる状態ですが、肺高血圧症とは心臓と肺の間にある肺動脈の病態を指します。
心臓の右心室からは肺動脈、肺毛細血管、肺静脈、左心房へと血液が流れますが、この肺動脈において血圧が上がる状態を肺高血圧症と呼びます
肺動脈圧は血圧計で測定することができないため、心臓の超音波検査やカテーテル検査が行われます。
カテーテル検査で平均肺動脈圧が25mmHg以上の場合、肺高血圧症と診断されます

●肺高血圧症では呼吸苦などの自覚症状が現れる

肺高血圧症では呼吸苦などの自覚症状が現れる

高血圧症では、自覚症状を感じないケースがほとんどですが、肺高血圧症では動いたときの呼吸苦(労作時呼吸苦)が主な症状になります
肺動脈は、体内から集めた血液を肺に送り、二酸化炭素を排出して酸素を取り込むために重要な役割を担っています。
しかし、なんらかの原因で肺動脈の血圧が上昇して流れが停滞してしまうと、肺との間で十分な酸素の受け渡しが行われなくなります。
特に、運動時は心臓に戻ってくる血液が多くなるため、肺動脈に血液の渋滞が起こりやすくなります。
そのため、運動時に息が上がりやすくなったり、重度の場合は酸素不足で苦しくなることが特徴です。

●肺高血圧症は診断されるまでに時間がかかる?

前述した通り、肺高血圧症は医療機関での専門的な検査で確定診断となるため、診断にいたるまでの時間が長い傾向にあります。
特に、肺気腫や気管支炎、心不全など息切れが症状となる病気は多く、また単に加齢による体力低下であると思い込むこともあります。
また、胸部レントゲンや採血などの検査で判断することは難しいため、大きな病院での検査が必要になります。
定期的な診察で異常がないのにもかかわらず息苦しさが続く場合は、かかりつけの先生から大きな病院を紹介してもらうとよいでしょう

肺高血圧症の原因と治療法

肺高血圧症は、その原因からいくつかの種類に分類されており、また治療方法もさまざまです。

●肺高血圧症の分類

肺高血圧症は、その原因によっていくつかの型に分類されており、それぞれ治療対象が異なってきます。
欧米では、肺高血圧症に関する会議が5年に1度開催されており、治療方針の見直しなどが行われます。
現在、肺高血圧症に用いられている分類はニース分類(2013年 ニース)と呼ばれていますが、これはダナポイント分類(2008年 ダナポイント)が原型となっています。
ダナポイント分類では、肺高血圧症は以下の5パターンに分類されます。

第1群 肺動脈自体に原因があるもの
第2群 心臓の機能不全によるもの
第3群 肺疾患や低酸素血症によるもの
第4群 肺動脈が血栓で閉塞しているもの
第5群 原因が明らかでないもの

この分類からもわかる通り、肺高血圧症は肺だけでなく心臓の病気によっても起こります。

●治療は薬による治療と手術治療に分かれる

肺高血圧症は、その原因によって治療方針が異なりますが、心不全や肺の病気が原因の場合、それぞれの病気に対しての薬物療法が行われます
ここでは、肺動脈自体に原因があるダナポイント分類の1群と4群の治療について解説します。

◯薬物療法

肺動脈が原因の場合、まずは血管を拡張させる効果のある薬が処方されます。
肺動脈の渋滞を解消することで血液の流れをスムーズにし、酸素の受け渡しを良くすることによって、呼吸苦を改善します

◯酸素療法

呼吸苦を改善するため、酸素吸入が必要になります。
酸素療法は入院中だけでなく、機器をレンタルして自宅で吸入する方法(在宅酸素療法)もあります。
低酸素状態におかれると、肺動脈の攣縮(れんしゅく)が起こり、さらに血流が悪くなるため、病気の進行を防ぐためにも酸素吸入は重要です。

◯カテーテル治療

第4群に分類されるCTEPHは、血管内に血栓が詰まっていることが原因であり、その血栓を除去するためのカテーテル治療が適応となります
肺動脈にカテーテルを挿入してバルーンで膨らませる治療や、肺動脈の血栓や内膜を摘出する治療などが挙げられます。

肺高血圧症にもリハビリが有効?その目的と内容とは

肺高血圧症では運動時の呼吸苦が主症状になりますので、呼吸苦を軽減するためにもリハビリが効果的です。
呼吸や循環器疾患のリハビリを専門とする筆者の立場から、その目的や実施内容をご紹介します。

●まずは労作時呼吸苦の程度を評価する

労作時の息切れを考える場合、どんな運動をどのくらいしたときに苦しくなるかを把握することが重要です。
医療機関で呼吸苦の評価を目的に実施される検査の中から、2つの代表的な検査についてご紹介します。

◯6分間歩行試験

6分間歩行試験

この検査は、6分間でどのくらい歩くことができるか、どの程度の呼吸苦が出現するかを評価します。
片道20〜30m程度のコースを往復して歩行距離を測定するのが一般的ですが、肺高血圧症の場合は体内の酸素飽和度を計測します
パルスオキシメーターと呼ばれる機器を装着して計測することもあれば、運動終了時に採血を行い、血液中の酸素濃度を計測する場合もあります。
急いで歩いた場合と自分のペースで歩いた場合では症状が異なるため、その方の生活範囲に合わせた歩行速度を見つけて指導します
また、内科治療の効果判定のため、治療前後でこの検査を実施することも多いです。

◯心肺運動負荷試験(CPX)

この検査では、マスクを装着してエアロバイク(またはランニングマシン)の運動を行い、口から出入りする酸素と二酸化炭素の量を計測します。
その結果、どの程度の運動強度で呼吸が荒くなるのか、肺と血管の間の酸素受け渡しに障害がないかなどが評価できます
自分の最大限度まで運動をするため、6分間歩行とくらべてつらい検査になりますが、得られる情報も多いです。
また、息が苦しくなる強度を判断できるため、生活での注意点なども指導しやすくなります

●筋力や体力アップで呼吸苦が改善する

筋力や体力アップで呼吸苦が改善する

肺高血圧症のリハビリと聞くと、「肺や心臓が悪いのに運動しても大丈夫?」、「肺がよくなるの?」と思う方もいるでしょう。
しかし、肺を直接良くするのではなく、呼吸苦や低酸素で弱ってしまった筋肉を改善することが目標です。
主には、下肢の筋力トレーニングやエアロバイクなど有酸素運動が中心になります。
下肢の筋力がアップすると、同じ動作でも息が上がらなくなったり、疲れにくくなったりします。
また、肺が悪い方の場合では、呼吸法の指導などを行うことにより、労作時の息切れや低酸素を改善させることも目標となります。
これらのリハビリは、呼吸リハビリや心臓リハビリと呼ばれており、内服治療やカテーテル治療などと並び、肺高血圧症の治療や予防に効果的です。
しかし、肺高血圧症のリハビリに関するガイドライン(実験や報告に基づいて、治療効果やその根拠を記述したもの)はまだ作成されておらず、効果の検証が今後の課題となっています。

早期治療とリハビリで快適な生活を送ろう

肺高血圧症は、定期検診などでは診断が難しく、「歳のせい」や「運動不足」などと誤解されがちです。
しかし、労作時呼吸苦や低酸素状態が続くと、下肢の筋力低下や体力低下につながるため、QOL(生活の質)も低下します
肺高血圧症は原因別に治療法も異なり、早期発見と早期治療が重要になります。
また、リハビリでは労作時呼吸苦の評価を基に、適切な運動強度や生活範囲を指導することができます。
息切れなどの症状が気になる場合は、かかりつけの先生にご相談してみてはいかがでしょうか。

参考:
肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版).(2019年12月6日引用)

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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