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肩関節脱臼のリハビリとは?トレーニングの流れや自宅での注意点を紹介

肩関節脱臼はラグビーなどのコンタクトスポーツや転倒で強い衝撃が肩に加わることで生じるけがです。
脱臼を繰り返す場合は手術の適応となりますが、手術の有無に関わらずリハビリを継続することが重要になります。
今回は、肩関節脱臼についてリハビリの方法や自宅での注意点を紹介します。

肩関節脱臼のリハビリとトレーニング

肩関節脱臼は再発しやすい!けがの特徴や手術の有無を紹介

肩関節は体の関節の中で、最も動く範囲が大きい関節です。
そのため、最も脱臼しやすく、すべての関節脱臼の中で肩関節脱臼が最も多くを占めています。
まずは、リハビリに対する理解を深めやすくするために、肩関節脱臼の特徴や種類、手術の有無について知りましょう。

●肩関節脱臼が発生する原因

肩関節脱臼のほとんどは肩に強い衝撃が加わって起こる外傷性(がいしょうせい)肩関節脱臼です。
ラグビーや柔道など強い衝撃が生じるスポーツやスキーやスノーボードといった転倒しやすいスポーツで多く発生します。
また、交通事故や日常生活で転倒することで、肩を強くぶつけた場合にも起こります。

●肩関節脱臼が再発しやすい理由

肩関節脱臼が再発しやすい理由

肩関節は構造上とても不安定な関節です。
腕の骨が肩甲骨にぶら下がっているような形で関節を作っています。
ぶら下がっていても、腕の骨がずれないのは、筋肉や靭帯などの組織が支えてくれていたり、肩甲骨の受け皿の部分をガードレールのように覆っている関節唇(かんせつしん)があったりするからです。
強い衝撃が加わって肩関節が脱臼した場合、これらの組織が損傷されます。
ただでさえほかの関節にくらべ大きく動く肩関節ですので、支えとなる組織に頼れなくなると、脱臼が再発するリスクが大きくなってしまうのです。
初回に脱臼が発生した年齢が低ければ低いほど再発する確率は高くなります。
特に若いスポーツ選手は活動性が高く、脱臼の原因となったスポーツを脱臼後も続けることが多いため、再脱臼するケースは少なくありません。

●手術の有無は脱臼の回数や状態で異なる

初めての脱臼であれば、手術せず整復後に三角巾で関節が動かないように3〜4週間固定する保存療法を選択されることが多いです。
しかし、脱臼の再発を繰り返す「反復性肩関節脱臼」の場合は、固定やリハビリで脱臼を予防することが難しくなるため、手術をする必要があります。

肩関節脱臼のリハビリの流れや具体的なトレーニング方法を解説

肩関節は手術の有無にかかわらず、固定により安静する期間を必要とし、段階的にリハビリを進めていく必要があります。
そこで、リハビリの流れを紹介しながら、具体的なトレーニング方法を解説します。

●術後の肩関節脱臼におけるリハビリの流れ

肩関節脱臼のリハビリは手術の有無にかかわらず、大きく3つの期間に分けられます。
それぞれの期間におけるリハビリの内容を紹介しますので、どのような流れで進んでいくのかを知りましょう。

1.固定している期間のリハビリ(術後直後~約3週間)

手術の有無にかかわらず、脱臼後には三角巾を使用して関節がしっかり安定するまで固定します。
この時期は肩関節が悪い姿勢になってしまうことで痛みが生じるのを防ぐことが重要になります。
そのため、理学療法士による指導のもと、正しい姿勢の習得やリラックスをするための運動(リラクセーション)がリハビリの中心となります。
また、関節を安定させるために必要な腱板筋のトレーニングを、関節の動きが生じないように注意しながら実施します。
受傷や手術により炎症がある時期ですのでアイシングも実施します。

※腱板筋については「腱板損傷の治療とリハビリの基本!治療期間や自分でできるトレーニング方法を解説」で詳しく解説しています。

2.固定が外れた後のリハビリ(術後約4週間〜約12週間)

固定が外れたら病院から退院するため、通院と自宅でのリハビリが重要になります。
ただし、腕を外側にひねるような動作(外旋)は術後8週間程度までは慎重に行う必要があります。
なぜなら、順調に治っていたとしても手術やけがにより生じた組織の修復は完全ではないためです。
そのため痛みが無いからといって無理に動かすようなことはせず、焦らず医師や理学療法士の指示を守りながら行うことが重要です。
自分では入院中に習った腱板のトレーニングや肩甲骨を動かす運動を行い、組織の修復後のトレーニングに備えることが大切になります。

3.スポーツ復帰のためのリハビリ(術後3カ月以降)

術後3カ月を経過するころから徐々にスポーツ復帰に向けたトレーニングを再開しますが、まだ選手同士で接触をするようなスポーツは禁止です。
術後6カ月程度になると、しっかりと損傷の具合を確認しながら、接触や肩を使うようなスポーツを開始していきます。

●具体的なトレーニング方法

具体的なトレーニングの方法として腱板トレーニングと肩甲骨安定化エクササイズを紹介します。
どちらも担当される医師や理学療法士から許可・指導を受けたタイミングで自宅で実施しましょう。

1.腱板トレーニング

腱板トレーニング

腱板と呼ばれる筋肉を鍛えるためには、肩の外転、外旋、内旋と呼ばれる3つの運動を実施します。
外転の場合は腕を体の横につけた状態から始めます。
そこから手のひら1つ分程度、腕を横に上げます。
それ以上横に上げてしまうと腱板以外の筋肉が働くので注意が必要です。
外旋や内旋は腕を体にくっつけた状態から肘を90°に曲げ、外にひねったり内にひねったりする運動です。
腕が体から離れてしまうと別の運動になってしまうので注意しましょう。
どの運動も負荷をかけすぎないようにするのが重要で、抵抗をかける場合は一番柔らかいセラバンド程度までにしましょう。
セラバンドが無い場合は、うちわや輪ゴムなどでも代用できます。

※セラバンドについては「高価な機器がなくても運動ができる!介護現場でセラバンドを活用する方法」で紹介しています。

2.肩甲骨安定化トレーニング

肩甲骨安定化トレーニング

肩甲骨を安定させる力をつけるために、肩に体重をかけたトレーニングをします。
無理な負担を避けるために、しっかり医師や理学療法士の指示を守り、段階的に運動の強さを上げていくことが大切です。
最初は壁に両手をついて腕立て伏せの要領で体重をかけながら肘を曲げ伸ばしします。
次の段階では座った状態で座面に手をつき下に押し付けます。
最終的には腕立て伏せのように床に手をついて体重を支えるような運動をしていきます。

脱臼後に自宅で注意したいポイント

肩関節脱臼後は固定時期を過ぎると自宅で生活する上で注意するポイントがあります。
しっかり把握して再脱臼を防ぎましょう。

●自己判断で肩を動かさない

これは脱臼の患者さんで非常に多いです。
筆者の経験でも「痛みが無いから大丈夫だろうと動かしました」という患者さんがいました。
しかし、前述の通り痛みが無くても、組織の修復が不十分である場合、無理に動かすと痛みの再発を招いたり、再脱臼のリスクを高めたりします。
そのため、自己判断で肩を動かさず、専門家の指示を仰ぐようにしましょう。

●脱臼しやすい姿勢を理解する

肩関節脱臼の90%以上は前下方向に脱臼します。
そのため、そのような方向に脱臼しやすい姿勢を取ることを避けることが大切です。
脱臼しやすい姿勢とは、肩の外転、外旋、水平伸展を組み合わせた姿勢とされています。
たとえば、後ろに手をついて起き上がったり、ブラジャーのホックを外したりといった動作です。
特に術後3カ月ほどまでは注意して肩を動かすようにしましょう。

肩関節脱臼を繰り返さないためにリハビリを継続していこう

肩関節脱臼は再発を繰り返しやすいため、一度治ったと思ってもリハビリを継続して、できるだけ脱臼のしにくい肩を維持することが大切です。
また、スポーツなどでけがをした場合は、スポーツの指導者とも連携を図り、技術の向上や動作の獲得で再発の防止をしていくことも重要になります。
高齢者の場合は転倒を予防することが、脱臼再発の予防になるので、転倒予防の運動も実施していきましょう。
転倒予防に関する記事は「つまずくことへの対策をして転倒予防!介護現場で実践できる対処法やトレーニングを理学療法士が紹介」で紹介していますので参考にしましょう。

参考:
相澤純也:整形外科リハビリテーション カラー写真でわかるリハの根拠と手技のコツ. 神野哲也(監修), 羊土社, 東京, 2012, pp.24-37.
尾﨑尚代:外傷性肩関節脱臼の機能解剖学的病態把握と理学療法.理学療法30(6):664-672,2013.

  • 執筆者

    蔵重雄基

  • 整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
    現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
    医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
    保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級

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