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現役理学療法士が語る、医療機関でのクラスター感染予防対策とリハビリの現場

新型コロナウイルスのクラスター感染予防は医療機関においても重要課題であり、さまざまな対策がとられています。
しかし、クラスターや医療崩壊などのワードが世間を騒がせる反面、リハビリに関しての影響はあまり知られていません。
クラスター感染予防対策がリハビリに与える影響について、現役理学療法士の立場から述べたいと思います。

病院での制限理由を解説

医療機関でクラスター感染予防のためにとられた対策とは?

医療機関でクラスター感染予防のためにとられた対策とは?

医療機関では、持病があるため感染リスクの高い患者さんが多く、クラスター(集団)感染の予防が徹底されています。
実際に医療機関で行われた予防対策を見てみましょう。

●家族もシャットアウト?面会制限で外部との接触を無くす

高齢の入院患者さんは糖尿病や腎臓病などを持病のほかに併発している方が多く、肺炎を発症すると命に関わります。
また、免疫力が低下していると細菌やウイルスに感染しやすくなるため、医療機関のスタッフの感染予防(自身も含め)は非常に重要です。
スタッフが外から持ち込まないことはもちろんですが、入院患者さんへの面会も感染拡大のリスクが高いため、面会を制限することはクラスター感染予防につながります。
ただし、入退院時の送迎や医師からの病状説明など、治療に最低限必要な面会は許可している場合が多いです。
「家族の面会もダメなの?」と思うかもしれませんが、筆者の周りでは家族も制限対象になっている病院も多いと耳にします。
この場合、洗濯物や日用品などは病棟スタッフを介して受け渡しが行われ、入院患者さんと直に接することがないように対応されています。

●一部の検査が中止、予定されていた手術が延期になることも

肺の機能を調べるための呼吸機能検査や、体力を調べるための心肺運動負荷試験などは、マスクや呼気回路を使用するため感染リスクが高くなります。
そのため、これらの検査は全般的に中止として、採血や画像検査のみ継続するという対策がとられています。
また手術に関しても、予定手術の場合は現在の症状を確認して、緊急性がなければ延期にするという対策もとられています。
これは手術自体の感染リスクを考えた対策であるとともに、新型コロナウイルスに感染した方を受け入れる準備(ベッドを空けておく)という意味合いもあります。
特に、救急医療を担う病院や、感染症の指定病院になっている施設では、感染者が急増した場合に備えておく必要があります。

●リハビリはクラスター感染リスクが高い?患者さん同士の接触を制限

コロナウイルス感染も含め、院内感染は医療従事者と患者さんとの間だけに起こるわけではありません。
医療従事者は、自分たちが院内感染の媒体とならないだけでなく、患者さん同士の濃厚接触も避けるような対策が必要です。
診療放射線技師や管理栄養士などは、多くの場合複数の病棟で患者さんと接触することになりますが、一番リスクが高いのはリハビリ専門職かもしれません。
なぜなら、リハビリ室では色々な病棟の患者さんが運動をしているため、感染が起こると複数の病棟に拡散してしまいます。
そのため、リハビリ室を一時的に閉鎖する、使用できる時間を制限するなどのクラスター感染予防対策がとられています。

面会制限によって家族と医療従事者の情報共有が困難に

前述したクラスター感染予防によって、医療現場にどのような弊害が生じているか、またどのような対策がとられているかをご説明します。

●家族に会えない!患者さんと家族の精神的ストレスが増加

家族に会えない!患者さんと家族の精神的ストレスが増加

面会が制限されることで、入院している患者さんは不安や寂しさが大きくなり、治療の進行自体に支障をきたす可能性があります。
たとえば、普段からテレビや新聞を見ない方の場合、面会禁止によって外部の情報が全くシャットアウトされることになります。
日時や見当識(どこにいるか)がわからなくなると、昼夜逆転や認知機能低下などにつながることもあります。
食欲の低下、睡眠障害、活動意欲の低下などが原因でADL(日常生活活動)が低下した結果、自宅での生活が困難になる方もいます。
家族側の心境としては、たとえ治療経過を主治医や看護師さんから聞いていたとしても、本人の声が聞けない、顔を見れないことで不安になるでしょう。
これらの問題を少しでも解決するため、筆者の病院では、写真入りの日記帳をつけてご家族に見てもらうなどの取り組みをしています。
患者さんには「家族に見てもらうために頑張りましょう」と励まし、ご家族からは「笑顔を見て安心した」と、双方にとってプラスになっていると実感しています。

●情報共有ができないと、リハビリの方針も決定できない

情報共有ができないと、リハビリの方針も決定できない

リハビリを開始または進めるに当たって、ご本人やご家族にリハビリ計画書を説明しなければいけません。
この際、リハビリのニーズや目標について、医療従事者と患者さん(家族)との間で相談し、今後の方針やリハビリ内容を決定します。
どこまで歩けるようになるのか、ご家族の介護は可能なのか、介護保険サービスを利用するのかなど、多くの協議が必要になります。
しかし、意識障害や鎮静中などで患者さんの状態が良くない場合、ご家族に説明して同意をいただく必要があります。
リハビリ専門職は日勤帯の勤務であるため、平日は夜しか来院できない、さらに面会が制限されるとなると、今後の治療方針や目標を共有できなくなります。
そのため、筆者の病院では、入院計画書や同意書などの提出に来院された際、病棟からリハビリ担当者に連絡をいただき、すぐに説明できるような準備をしています。

リハビリ室が使えない?病棟でのリハビリ強化と多職種連携がカギ

ハビリ室が使えない?病棟でのリハビリ強化と多職種連携がカギ

リハビリ室の閉鎖や使用制限の結果、リハビリは病棟(病室)での実施になります。
具体的にどんなリハビリが行われるか、どのようなかたちで進められるかについてご紹介します。

●病棟では基本的な動作練習が中心

リハビリ室では、平行棒の中で歩行練習をしたり、広いベッドの上で動作練習をしたりと、さまざまなバリエーションがあります。
また、患者さんの状態に応じたメニューを取り入れやすく、効率よくリハビリを進めることができます。
その一方で、ベッド上やベッド周りのリハビリでは使える資源も限られているので、寝起きの練習や車椅子に乗る練習などが中心になります。
そのため、ある程度基本動作が習得できた場合、次の練習にステップアップすることが難しくなる場合があります。
筆者の病院では、この状況を打開するため、病棟でできる練習メニューを工夫したり、リハビリ器具を病棟に運んだりすることで対応しています。
基本動作が自立した患者さんでは、自転車型トレーニング器具で体力をアップしたり、セラピストが売店まで同伴して、荷物を持ったまま歩く練習をするなども効果的です。

●ピンチはチャンス!多職種連携でADLアップへ

リハビリ室が使えない状況では、いつも以上にセラピストが病棟へ足を運ぶ機会が増えます。
ベッド周囲で移乗動作練習や歩行練習をしている際、担当看護師さんにも見てもらえる機会が増えるため、情報共有がしやすくなります。
例を挙げると、「軽く支えてあげればトイレまで歩けますよ」「見守りの状態で車椅子に乗ることができますよ」など、具体的に日常動作での介助量を伝えやすくなります。
正確な情報共有ができると、リハビリの時間以外でも患者さんが活動できる機会が増え、結果的に早くADLがアップすることになります。
また、セラピストがご家族に会えない場合でも、看護師さんからリハビリの状況を伝えてもらうことができます。
現在のリハビリ状況を理解していただくことで、退院に向けた準備を進めることができるため、早期退院につなげられるかもしれません。
リハビリ室が使えない不利な状況においては、このように多職種が連携して患者さんのリハビリをサポートすることが重要になります。

感染予防が第一!でも医療現場では柔軟な対応が必要

医療現場では感染予防を徹底することが求められますが、それと同時に医療サービスの質が低下しないような対策も必要になります。
どうすれば患者さん同士の濃厚接触を避けられるか、質を落とさないようにどう工夫すればいいかなど、そのときの状況に応じた柔軟な対応が求められます。
リハビリの有無は直接的に命に関わるものではありませんが、患者さんの生活やこれからの人生を左右する治療です。
われわれリハビリ専門職も、患者さんが1日でも早くもとの生活に戻れるよう、ご家族や他職種と協力して治療をサポートしていきたいと思います。

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。

    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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