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人工股関節置換術をした後のリハビリは何をするの?手術直後から自宅でのリハビリを解説

「人工股関節にするけど手術の後どのようなリハビリをするのか不安…」
ご自分はもちろんご家族や友人が人工股関節の手術をするとなると、その後のリハビリの内容が気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで手術直後から自宅に帰った後まで、どのようなリハビリをするのかを解説します。

いつから始めるの?どんなことをするの?人工股関節置換術後のリハビリを解説

リハビリは手術直後から開始!ベッド上でのリハビリも重要

リハビリは手術直後から開始!ベッド上でのリハビリも重要

人工股関節の手術では手術直後から体重をかけることができるため、ベッドから離れて生活することができます。
そのため、手術してすぐ翌日〜2日目にはベッド上での運動や動作の練習が始まります。

●脱臼しやすい動きを確認して基本的な動作を練習

人工股関節は手術の方法によって脱臼しやすい動きが異なります。
そのためベッドから離れるときの起き上がりや立ち座り、車椅子への乗り移りなどといった基本的な動作を安全に行うための練習が必要です。

また、トイレなど病院内での生活に必要な動作についても、すぐに確認して必要に応じて練習することになります。
手術直後で手術した部分などに痛みがあるため、ベッド上で痛みの少ない姿勢を理学療法士などの指導のもとで調整します。

※人工股関節の脱臼については「人工股関節での脱臼予防のために脱臼肢位や日常生活での注意点を再確認しよう」で詳しく解説しています。

●ベッド上での運動を学び自主的に継続

手術直後からベッド周辺での動作とともにベッドの上でできる運動の方法も学んでいきます。
早い段階でリハビリ室でのリハビリが始まるため、学んだ運動はリハビリ以外の時間に自主的に行い、低下した筋力を退院までに向上させていくことが重要です。
リハビリ室でのリハビリ時間は長くても1〜2時間ですので、残りの20時間以上の院内生活において自主的な運動は非常に重要になります。
また手術によりふくらはぎの血流が悪くなり血管が詰まりやすくなります(深部静脈血栓症:しんぶじょうみゃくけっせんしょう)。
この血栓が肺に移動すると命の危険につながりますので、手術直後からの対策が必要です。
そこで手術直後から足首をしっかり上下させる運動をするような指導も受けます。

●病院によっては術後1〜2日で歩く練習も開始

病院によってクリニカルパスと呼ばれる治療計画が決められており、それに沿ってリハビリは進められるため、歩く練習をする時期などは病院によりばらつきがあります。
しかし、最近は入院期間が短くなっている傾向にあり、また術後早くにできるだけ歩く練習を行ったほうがその後の動作の回復が早いといった報告もあるため、術後1〜2日で歩く練習をする場合もあります。
最初は体重がしっかり支えられる平行棒や歩行器といった道具を使いながら歩く練習をして、徐々に杖や杖なしといった練習に段階が上がっていきます。
いずれにせよ、この時期は手術直後で力も十分ではないため、転倒の危険性も大きく、医師やリハビリの専門家にしっかり話を聞いて焦らずにリハビリをすることが大切です。

入院中は運動だけではなく自宅での日常生活で必要な動きを徹底練習

入院中は運動だけではなく自宅での日常生活で必要な動きを徹底練習

人工股関節の手術はすぐに体重がかけられるため、多くの病院では1カ月以内には退院をすることになります。
そのため入院中に自宅での生活を想定した練習をする必要があります。
自宅での生活を想定することで、自宅で必要な道具や環境の調整(手すりの設置や段差の解消など)をすることにつながります。
具体的にどのような動作の練習をするのかを紹介します。

●浴槽の出入り

浴槽をまたぐ動作は股関節を曲げすぎないように注意しながら練習をします。
自宅の浴槽を考慮しながら、手すりを持ったり、座ったまま入浴できるような椅子を利用したりして練習をする場合もあります。

●床からの立ち座り

基本的にベッドでの生活をするほうが股関節への負担は少なくなりますが、床での生活が必要な場合もあるので、床からの立ち座りの練習も行います。
ここでも股関節が深く曲がらないように注意しながら練習をします。
脱臼、転倒の危険性や楽に立ち座りすることも考慮して、体を支える台や椅子、手すりなどを活用した練習をする場合もあります。

●階段の上り下り

階段の上り下りは股関節にかかる負担が大きい動作です。
無理な上り下りは転倒や痛みの原因となるため、まずは1段上るたびに両足を一度そろえるようにして階段の上り下りを練習をします。
徐々に安定してくれば、1段1段片足ずつで上り下りするように練習します。
また脚を上げたり下ろしたりする順番も練習します。
階段を上る場合は良いほうの脚から上げて、下る場合は手術したほうの脚から下ろします。

●靴や靴下の着脱

靴や靴下の着脱はどうしても股関節が深く曲がりやすいため、もっとも手術後に難しくなる動作の1つです。
特に靴下の着脱は難しく、自力で可能な場合もありますが、難しい場合はソックスエイドと呼ばれる道具を使って靴下の着脱の練習を行います。

リハビリは退院して終わりじゃない!自宅でするリハビリ内容を解説

リハビリは退院して終わりじゃない!自宅でするリハビリ内容を解説

人工股関節の術後は外来でリハビリを受けることがありますが、ある程度日常生活を送ることができれば専門家によるリハビリは終了となります。
外来でのリハビリは入院中のように毎日あるわけではないため、自宅でリハビリを継続していくことが大切です。
そこで自宅でできるリハビリについて解説します。

●隙間時間を見つけて筋力トレーニングをしよう

手術した股関節を中心に脚の付け根にある筋肉を鍛えることで、安定して歩く力を保つことができます。
代表的な方法をいくつかご紹介します。

1)お尻あげ運動

ベッドで仰向けになり両膝を立てた状態でお尻を持ち上げる運動です。
お尻の後ろの筋肉に力が入るのを意識しながら行います。

2)脚の横あげ運動

手術した側の脚が上になるように横向きに寝ます。
膝を曲げた状態で、両足をくっつけたまま、両膝が離れるように上になってる脚を持ち上げます。
お尻の横の筋肉が働くのを意識しながら行いましょう。

3)太ももあげ運動

座った状態で足踏みをするように太ももを持ち上げる運動です。
椅子に浅めに腰をかけて椅子の座面に両手を置いて体を支えます。
上げる高さは少し足が浮く程度にして、あまり深く曲げないようにしましょう。

●股関節の負担軽減にもノルディック・ウォーキングがおすすめ

筋力だけでなく体力を保ち健康的な生活を送るためにはウォーキングがおすすめです。
股関節の負担を減らすためにとして、プールなどを利用して水中ウォーキングがよく勧められます。
しかし、プールなどになかなかいけない方も多いのが現状です。
そこで手軽に行うウォーキングの方法としてノルディック・ウォーキングがおすすめです。
ノルディック・ウォーキングはノルディック・ポールと呼ばれる杖を両手で持って体を支えながら歩きます。
通常の杖にくらべて上半身の力を使うため、全身の運動をすることができます。
また、杖を使うことで安定した状態で歩くことができるので、高齢者にもおすすめです。

股関節の手術後は継続したリハビリで元気な生活を取り戻そう

人工股関節は変形性股関節などで痛みが生じて生活に支障をきたす場合に行われます。
しかし手術をしたから痛みが取れて、何もしなくても元の生活に戻れるというわけではありません。
リハビリしないとせっかく手術をしても筋力の不足で歩きにくかったり、痛みが残りやすかったりします。
そのため、手術の後も継続してリハビリを行い、元気で健康的な生活が続けられるようにしましょう。

  • 執筆者

    蔵重雄基

  • 整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
    現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
    医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。

    保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級

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