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  • 桑原

    公開日: 2020年12月23日
  • リハビリについて

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歩くことで呼吸機能を測定できる、6分間歩行テストとシャトルウォーキングテストをリハビリの評価手段として比較

呼吸リハビリを行う上で呼吸機能や運動耐容能の評価として、大掛かりな検査装置を使用せずに行える2つのテスト6分間歩行テストとシャトルウォーキングテストをご存じでしょうか。
この2つのテストの方法と利点、違いと注意点などについてお話しすることにしましょう。

歩くことで呼吸機能を測定できる 2つのテストの方法と利点

ストップウォッチと30mの直線平地を使い運動耐容能を測る6分間歩行テスト。方法とリハビリへの利点

ストップウォッチと30mの直線平地を使い運動耐容能を測る6分間歩行テスト。方法とリハビリへの利点

呼吸器疾患を持つ患者さんにとって、運動耐容能の測定はリハビリの負荷量決定や効果判定の意味でも重要であり、簡易にできる6分間歩行テストは臨床で利用しやすい指標となります。
その方法についてご紹介しましょう。

●6分間歩行テストでどんなことがわかるのか

6分間歩行テストでは、以下の評価に用いることが可能です。

  • ○どの程度の運動が現在可能であるのか
  • ○呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)の重症度が判定可能
  • ○リハビリや治療による運動耐容能などの効果判定
  • ○特発性間質性肺炎:難病指定が可能かどうか(評価項目の一つとなっている)
  • 酸素療法開始の目安

このように呼吸機能や呼吸リハビリにおける呼吸や運動機能の評価についてテスト結果から推測することが可能です。

●6分間歩行テストは6分間で歩ける距離を測定。方法、注意点

6分間歩行テストは30mの平地に5mごとに印をつけ(25mの直線にカーブをつけて全長30mとする)、6分間可能な限り往復し何メートル歩けたかを測定するものです。
巻き尺などを使用すれば、簡単に測ることができます。

オージー技研の巻き尺:https://www.og-wellness.jp/product/rehabilitation/gs11-004

テストでは可能な限り速く歩くように促し、休憩も最小限にしてもらうように(しかし体調に合わせて我慢せず、休憩が必要なら行う)声かけします。
杖や装具が必要な場合は、それらを使用した上でテストを行うと良いでしょう。
声かけは一分ごとに決まった声かけをするように心がけましょう。
併走して歩行すると患者さんの歩行ペースを乱してしまうため、患者さんの観察は少し離れたところから行うことが必要です。
また測定中は酸素飽和度、息切れ、脈拍数もあわせて測定し、テストを行う上でのリスク管理の指標として使用しましょう。

シャトルウォーキングテストも同様に特別な装置は不要!テスト法と有用性

シャトルウォーキングテストも同様に特別な装置は不要!テスト法と有用性

6分間歩行テストと同じように、平地とテスト教材があれば可能な運動耐容能のテストがシャトルウォーキングテストです。

●シャトルウォーキングテストに必要なものは10mの平地と音声を再生できるプレーヤー

シャトルウォーキングテストは日本語訳されたテストキットがあり、CDを再生すると声かけやテストの説明などを行ってくれます。
研究や学会発表、論文執筆の際には、オフィシャルサイトからの購入が必須となっています。
https://yumejuku.org/sp/shuttlewalkingtest.html

CDプレーヤーとテストキット、10mの滑りにくい平地、歩きやすい靴、椅子や酸素、血圧計などはリスクを管理する上で用意しておくとさらに良いでしょう。
10m歩行に用いるキットを使用すればスムーズに行うことができます。
https://www.og-wellness.jp/product/rehabilitation/tkk5807

●シャトルウォーキングテストは呼吸困難などの原因により終了される、モニターの重要性とリスク管理

シャトルウォーキングテストは漸増的に歩行スピードが上がり、そのスピードについていけない場合に終了となります。
シャトル中の50cmの遅れは次の10mで取り戻せれば構いませんが遅れが出た場合は注意深く観察しましょう。
また、脈拍や酸素飽和度をテスト中にモニターし、呼吸困難感の予測に役立てることが可能です。
患者さんにSpO2値や脈拍数を知らせることは推奨されていないため、遠隔からモニターできるとなお良いでしょう。
またボルグスケールなどをあらかじめ用意しておき、疲労感を指さしなどで確認できるようにしておくのも良いでしょう。

6分間歩行テストとシャトルウォーキングテストの比較とリハビリへの応用法

6分間歩行テストとシャトルウォーキングテストの比較とリハビリへの応用法

ここで類似した6分間歩行テスト、シャトルウォーキングテストについて比較し、その違い、リハビリへどう応用すればいいのかについて解説します。

●6分間歩行テストとシャトルウォーキングテストはテストフィールドと終了点が異なる

6分間歩行テストは通常30mの平地を使用するとしていますが、シャトルウォーキングテストは全長が10mとしています。
30mの直線を確保するのが難しい場合には、シャトルウォーキングの使用を検討するほうがよいでしょう。
シャトルウォーキングテストに関しては、レベル1〜12までの異なるスピードのレベルがあり、呼吸困難やそのスピードについていけなかった場合に終了となります。
つまり、6分間テストは6分間休んでも構わないができるだけ速く歩き、歩いた距離で評価するのに対して、シャトルウォーキングテストは各レベルの歩行スピードについていけなくなった時点で終了する点が異なっています。

●6分間歩行テストとシャトルウォーキングテストの結果により運動処方が可能

シャトルウォーキングテストに関しては終了時のレベルにより、peak VO2などを知ることができます。
また、6分間歩行テストは開始前後の脈拍数、酸素飽和度(SpO2)、呼吸困難感も測定することで、6分間歩行テストでの運動強度は嫌気性代謝閾値であることが証明されているため、6分間歩行距離の40%もしくは60%という形での運動処方も可能です。
また計算式を用いておおよそのpeak VO2も産出することが可能です。

peak VO2=0.014×6分間歩行テストの歩行距離-0.127×年齢+0.049×%一秒量+12.477(R2=0.700)
(引用:有薗信一, 他: 6 分間歩行テストと漸増シャトルウォーキングテストによるCOPD患者の最高酸素摂取量の予測式. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌18巻2号, 2008.)

最近では呼吸器疾患を患った高齢の方も多く、高齢者や整形外科疾患がある患者さんの場合には、呼吸機能だけではなくほかの要素も関連するといわれています。

6分間歩行テストとシャトルウォーキングテストはリハビリの運動処方もしくは効果判定の指標となる

6分間歩行テストとシャトルウォーキングテストは方法は違いますが、どちらも大きな装置を使用せず手軽に行えることが特徴です。
2つには異なる点もありますが、運動処方が可能となりリハビリの効果を評価できる有用な手段です。
呼吸リハビリの評価法を検討されている方は試してみてはいかがでしょうか。

参考:
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 時間内歩行試験 The Shuttle Walking test(2020年12月19日引用)
有薗信一, 他: 6 分間歩行テストと漸増シャトルウォーキングテストによるCOPD患者の最高酸素摂取量の予測式. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌18巻2号, 2008.(2020年12月19日引用)
佐竹將宏, 他: 6分間歩行試験について. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌28巻2号, 2018.(2020年12月19日引用)

  • 執筆者

    桑原

  • 1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
    その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。

    保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士

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