軟性装具(ダーメンコルセット)を使うのはどんなとき?利点やリハビリの注意点を紹介
胸椎または腰椎になんらかの問題があり、固定や安静が必要な場合に用いられるのがコルセットですが、種類もいくつかあります。
そこで皆さんが疑問を持たれるのが、どのコルセットがどんな疾患に適応なのかということではないでしょうか。
今回は軟性装具(ダーメンコルセット)を中心に、それぞれのコルセットの利点やリハビリについて解説することにしましょう。
目次
硬性・軟性・半軟性コルセット、それぞれの適応と特徴
コルセットは素材の強度により大きく3つに分類されます。
それぞれどんな特徴があるのでしょうか。
●コルセットは素材により、大きく3種類に分けられる
コルセットはその素材の硬さと組み合わせにより、硬性、軟性、半軟性の3つのタイプのコルセットに分類されます。
硬性コルセット
プラスチック素材や金属などで体幹をぐるっと覆うようなタイプのコルセットです。
軟性コルセット
時折金属製の支柱が挿入されている場合もありますが、メッシュ素材の布地などで制作されたもの。
ダーメンコルセットとも呼ばれます。
半軟性コルセット
背面が硬性コルセットのようなプラスチック製で、前面が軟性コルセットのような布地で構成されたコルセットです。
硬性、半軟性コルセットは、ギプスで型を取るといったカスタムメイドが必要で、できあがるまでに時間がかかります。
軟性コルセットはヒモや面ファスナーなどで多少のサイズ調整が可能です。
コルセットの幅は受傷部位により異なります。
●それぞれのコルセットに適した疾患とは?
それぞれの素材に合った対象疾患がありますので、ご紹介します。
硬性コルセット
圧迫骨折、術後の固定など、強固な固定が必要な際に選択されます。
骨盤や体のシェイプに合わせて作られるため、少し窮屈な仕様ですが、安定性のある固定力が得られます。
肩ベルトがあるタイプは、胸や腰の上方部の回旋や横曲げを制限したい場合に用いられます。
軟性コルセット
腰痛、椎間板ヘルニア、腰椎すべり症・分離症、脊椎圧迫骨折、術後の固定など。
コルセットをつけることで腹圧を高め、体幹の安定性を得られます。
胸腰椎移行部などの側屈や回旋に対する抑制力にはやや欠けますが、着脱が簡単で清潔を保ちやすいのが特徴です。
体に合ったコルセットは医師の処方のもと義肢装具士により計測、作成されます。
ジュエットコルセットはリハビリ向き。ミルウォーキー、ボストンは側湾症に
先にご紹介した3種類のコルセット以外にも、機能性の異なるコルセットをご紹介することにしましょう。
●ジュエットコルセットは3点で体を支えるコルセット、金属フレームコルセットはしっかりした作り
金属フレームコルセットは、金属でできた支柱で体幹を支えるしっかりとした作りで、コルセット全体で腹圧を高める仕組みではないため、圧迫感は強くありません。
モールドタイプとは異なり、夏場の暑さやあせもなどは防ぐことができますが、重さがあります。
またモールド、金属製の2つのタイプがあるジュエットコルセットは、胸の上部前面と恥骨部分、後方からの3点固定タイプです。
脊椎疾患全般に用いられ、背中の丸くなった方にも用いられます。
●ミルウォーキー、ボストンブレースは側湾症に特化したコルセット
ここで少し特殊なコルセットについてご紹介しましょう。
コルセットは背骨の病気全般に使われますが、側弯症と呼ばれる背骨が曲がってしまう疾患に対して予防や矯正を目的にコルセットを用いることがあります。
ミルウォーキーブレース
首のリング、骨盤部分、胸ベルトの3点で支え、胸、腰部分すべての背骨の側弯に対して使用されるコルセットです。
ボストンブレース
胸の腰に近い部分の側弯に対して使用されます。
左右の骨盤部分と一方の脇腹部分、前方のパッドを支点としたもので、プラスチック素材でできており、採寸したデータをもとに成形されます。
ほかにも金属支柱とプラスチックを組み合わせた側弯矯正のコルセットもあります。
コルセット装着下でのリハビリと日常生活における注意点を解説
コルセットをつけたままリハビリや日常生活を行う上で、注意しておきたい点についてお話しすることにしましょう。
●コルセット装着下でのリハビリは体幹や股関節の動きが制限されるので、場合によっては歩行補助具の利用も有効
コルセット装着下では身体をかがめる、反らせる、振り返るという動きや骨盤の動きも抑えられるため、股関節の曲げ伸ばしにも影響があります。
入院中の場合は歩行器や杖といった歩行補助具を使いながら、身体を慣らすとよいでしょう。
オージー技研でも機能的に優れた歩行器を何種類か取り扱っています。
選び方や歩行器のメリットについては、こちらも参考にしてください。
自宅などでは手すりや壁に伝うものを利用すると安定し、Uラインウォーカーのような歩行器も有効です。
U ラインウォーカー(小)
特にコルセットの適応である脊椎圧迫骨折などは高齢者に多く、コルセットを装着した状態での運動が大きく制限されてしまいます。
運動量が少なくなると高齢であればあるほど、サルコペニアやフレイル、ロコモティブシンドロームなど、廃用症候群になる可能性も否めないので、コルセット装着下でも可能な限り運動をしましょう。
運動量や種類についてはコルセットが必要となる原因疾患を考慮し、担当医師やリハビリスタッフと相談して行うようにしましょう。
●軟性コルセットは腹圧を高めて体幹を安定させるため、食事の際は少し苦しく感じることも
コルセットは体幹の安定を得るために装着する装具ですが、腹部を締めて腹圧を高めるため、食事の際に息苦しくなるといったデメリットも生じます。
しかし、食事の際に苦しいからといって、大きく緩めて固定性を失わないように注意しましょう。
そのような場合には、分割食など少量にして回数を増やすということも有効です。
コルセット装着下でもできる限りのリハビリを続けることが大切
コルセットについていろいろ述べましたが、コルセットは背骨の疾患に対して医師から処方されるもので、その用途によりさまざまな種類があります。
コルセットはリハビリや日常生活での体幹の安定を得られる優れた装具ですが、装着下の注意点などをよく知り、高齢の方は特に体力を落とさないように運動も続けて行うようにしましょう。
参考:
株式会社松本義肢製作所 P.O.HANDY BOOK 体幹装具編(2021年1月16日引用)
厚生労働省 補装具費支給事務ガイドブック(2021年1月17日引用)
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執筆者
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1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。
保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士